(完結)私のことが嫌いなら、さっさと婚約解消してください。私は、花の種さえもらえれば満足です!

水無月あん

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王都の屋敷

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翌朝、馬車で王都の屋敷に向かった。
そして、午後には、屋敷に到着した。出迎えてくれたのは、執事のライアンだ。

ライアンは、私が小さい頃、家庭教師をしてくれていたが、お父様に見込まれ、いつの間にか、王都の屋敷で執事になっていた。

「ひさしぶり、ライアン!」

「ライラお嬢様! 大きくなられて!」
ライアンが、くしゃっと笑った。

ちっとも変わらない笑顔にほっとする。
久しぶりだから、色々話したかったけれど、ライアンはすぐに、お父様と仕事の話をはじめた。

そして、私ものんびりさせてはもらえない。パーティーが明日だから。
お母さまから、注意事項を沢山言われ、明日の段取りを説明されて、やーっと解放された。

庭のテーブルで、ぼんやりしていると、ライアンがやってきた。
トレイに、二人分の飲み物をのせている。

「ライラお嬢様、少しご一緒してもよろしいでしょうか?」
と、丁寧に言うライアン。

その口調に思わず笑ってしまった。

「もー、そんな丁寧な話し方じゃなくて、前みたいに話してよ。ライアン先生」

私の言葉に、ライアンは、にんまりと微笑んだ。

「じゃあ、ライラお嬢様のお言葉に甘えて今だけ戻りましょうか? いいか、お嬢?」

「もちろん!」

「じゃあ、直球で聞くが、ここへきてから、お嬢は気が重そうだな。どうかしたか?」
そう言って、ライアンは私の目をじっと見てきた。

「はああー、ほんと、ライアンって変わってない。私の気持ちがよくわかるね?」

「いや、お嬢がわかりやすいだけだろ。それで、どうしたんだ? なんか、悩みがあるのか?」

「うーん…、まあ、明日のパーティに行きたくないなあって」

「なんで、行きたくないんだ?」

「だって、ほら。公爵家のパーティーだよ。失礼なことしたらどうしよう、とかね」

「他には?」
と、更に聞いてくるライアン。静かだけど、有無を言わせない押しの強さ。

「…ないよ」

「嘘だな。お嬢は嘘をつく時、目をそらすからな」

「え?! そうなの?! 知らなかった!」

「ほんと、かわってないな、お嬢は」
そう言って、ライアンは優しく微笑んだ。

「ほら、気になってることがあるなら、なんでも言ってみろ。俺が聞くぞ。ほら、ライライ仲間なんだろ?」

「プッ…、なつかしい! 私が小さい頃、言ったんだよね? ライラのライと、ライアンのライで、ライライ仲間だねって」

「そうだ! ライライ仲間が相談にのるから言ってみろ」

「…そうだね。じゃあ、ひとつ聞くけど、仮にだよ、私の婚約が解消になったら、みんな困るかな?」

ライアンの目が一瞬ふっと細くなった。

「みんなとは誰のことだ?」

「お父様とお母様、それに、働いているみんな、…それと領民の人たち」

「全く困らない。お嬢がこの婚約が嫌なら、やめたっていい」

「でも、私が言いだすと、お金を沢山払わないといけないんでしょ?」
私がそう言うと、ライアンが驚いたように目を見開いた。

「誰からそんなことを聞いた?」

パトリックからだけど、言えないよね。

「うーん、ちょっとそんなことを聞いたから…」
と、にごす。

「また、目をそらしたな。…まあ、いいか。まず、お嬢の婚約は、利害関係で結ばれたものではない。だから、金を払わないといけないのは、一方的に失礼なことをしたり、約束をやぶった場合だ。きちんと理由を伝えれば、なんとでもなる。もしや、お嬢は婚約をやめたいのか?」
ライアンが真剣な顔で聞いてきた。

…ライアンに言ってしまいたい。けど、迷惑をかけるのは嫌だ。

「ん-、ちょっと不安なだけ。…まあ、大丈夫だと思う」
私はあいまいに答えた。

ライアンは私の目をしっかり見て言った。

「お嬢は、婚約解消になったら、みんなが困るか聞いたが、もし、嫌々、結婚して一番困るのはお嬢だ。誰でもない、お嬢が結婚するんだからな。そこをしっかり考えろ。それと、ライライ仲間はいつでも、どんな相談にものるので、そのことをお忘れなく」
そう言うと、ライアンがくしゃっと笑った。

「ありがと、ライアン先生」
思わず、涙がでそうになった。


























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