13 / 23
王都の屋敷
しおりを挟む
翌朝、馬車で王都の屋敷に向かった。
そして、午後には、屋敷に到着した。出迎えてくれたのは、執事のライアンだ。
ライアンは、私が小さい頃、家庭教師をしてくれていたが、お父様に見込まれ、いつの間にか、王都の屋敷で執事になっていた。
「ひさしぶり、ライアン!」
「ライラお嬢様! 大きくなられて!」
ライアンが、くしゃっと笑った。
ちっとも変わらない笑顔にほっとする。
久しぶりだから、色々話したかったけれど、ライアンはすぐに、お父様と仕事の話をはじめた。
そして、私ものんびりさせてはもらえない。パーティーが明日だから。
お母さまから、注意事項を沢山言われ、明日の段取りを説明されて、やーっと解放された。
庭のテーブルで、ぼんやりしていると、ライアンがやってきた。
トレイに、二人分の飲み物をのせている。
「ライラお嬢様、少しご一緒してもよろしいでしょうか?」
と、丁寧に言うライアン。
その口調に思わず笑ってしまった。
「もー、そんな丁寧な話し方じゃなくて、前みたいに話してよ。ライアン先生」
私の言葉に、ライアンは、にんまりと微笑んだ。
「じゃあ、ライラお嬢様のお言葉に甘えて今だけ戻りましょうか? いいか、お嬢?」
「もちろん!」
「じゃあ、直球で聞くが、ここへきてから、お嬢は気が重そうだな。どうかしたか?」
そう言って、ライアンは私の目をじっと見てきた。
「はああー、ほんと、ライアンって変わってない。私の気持ちがよくわかるね?」
「いや、お嬢がわかりやすいだけだろ。それで、どうしたんだ? なんか、悩みがあるのか?」
「うーん…、まあ、明日のパーティに行きたくないなあって」
「なんで、行きたくないんだ?」
「だって、ほら。公爵家のパーティーだよ。失礼なことしたらどうしよう、とかね」
「他には?」
と、更に聞いてくるライアン。静かだけど、有無を言わせない押しの強さ。
「…ないよ」
「嘘だな。お嬢は嘘をつく時、目をそらすからな」
「え?! そうなの?! 知らなかった!」
「ほんと、かわってないな、お嬢は」
そう言って、ライアンは優しく微笑んだ。
「ほら、気になってることがあるなら、なんでも言ってみろ。俺が聞くぞ。ほら、ライライ仲間なんだろ?」
「プッ…、なつかしい! 私が小さい頃、言ったんだよね? ライラのライと、ライアンのライで、ライライ仲間だねって」
「そうだ! ライライ仲間が相談にのるから言ってみろ」
「…そうだね。じゃあ、ひとつ聞くけど、仮にだよ、私の婚約が解消になったら、みんな困るかな?」
ライアンの目が一瞬ふっと細くなった。
「みんなとは誰のことだ?」
「お父様とお母様、それに、働いているみんな、…それと領民の人たち」
「全く困らない。お嬢がこの婚約が嫌なら、やめたっていい」
「でも、私が言いだすと、お金を沢山払わないといけないんでしょ?」
私がそう言うと、ライアンが驚いたように目を見開いた。
「誰からそんなことを聞いた?」
パトリックからだけど、言えないよね。
「うーん、ちょっとそんなことを聞いたから…」
と、にごす。
「また、目をそらしたな。…まあ、いいか。まず、お嬢の婚約は、利害関係で結ばれたものではない。だから、金を払わないといけないのは、一方的に失礼なことをしたり、約束をやぶった場合だ。きちんと理由を伝えれば、なんとでもなる。もしや、お嬢は婚約をやめたいのか?」
ライアンが真剣な顔で聞いてきた。
…ライアンに言ってしまいたい。けど、迷惑をかけるのは嫌だ。
「ん-、ちょっと不安なだけ。…まあ、大丈夫だと思う」
私はあいまいに答えた。
ライアンは私の目をしっかり見て言った。
「お嬢は、婚約解消になったら、みんなが困るか聞いたが、もし、嫌々、結婚して一番困るのはお嬢だ。誰でもない、お嬢が結婚するんだからな。そこをしっかり考えろ。それと、ライライ仲間はいつでも、どんな相談にものるので、そのことをお忘れなく」
そう言うと、ライアンがくしゃっと笑った。
「ありがと、ライアン先生」
思わず、涙がでそうになった。
そして、午後には、屋敷に到着した。出迎えてくれたのは、執事のライアンだ。
ライアンは、私が小さい頃、家庭教師をしてくれていたが、お父様に見込まれ、いつの間にか、王都の屋敷で執事になっていた。
「ひさしぶり、ライアン!」
「ライラお嬢様! 大きくなられて!」
ライアンが、くしゃっと笑った。
ちっとも変わらない笑顔にほっとする。
久しぶりだから、色々話したかったけれど、ライアンはすぐに、お父様と仕事の話をはじめた。
そして、私ものんびりさせてはもらえない。パーティーが明日だから。
お母さまから、注意事項を沢山言われ、明日の段取りを説明されて、やーっと解放された。
庭のテーブルで、ぼんやりしていると、ライアンがやってきた。
トレイに、二人分の飲み物をのせている。
「ライラお嬢様、少しご一緒してもよろしいでしょうか?」
と、丁寧に言うライアン。
その口調に思わず笑ってしまった。
「もー、そんな丁寧な話し方じゃなくて、前みたいに話してよ。ライアン先生」
私の言葉に、ライアンは、にんまりと微笑んだ。
「じゃあ、ライラお嬢様のお言葉に甘えて今だけ戻りましょうか? いいか、お嬢?」
「もちろん!」
「じゃあ、直球で聞くが、ここへきてから、お嬢は気が重そうだな。どうかしたか?」
そう言って、ライアンは私の目をじっと見てきた。
「はああー、ほんと、ライアンって変わってない。私の気持ちがよくわかるね?」
「いや、お嬢がわかりやすいだけだろ。それで、どうしたんだ? なんか、悩みがあるのか?」
「うーん…、まあ、明日のパーティに行きたくないなあって」
「なんで、行きたくないんだ?」
「だって、ほら。公爵家のパーティーだよ。失礼なことしたらどうしよう、とかね」
「他には?」
と、更に聞いてくるライアン。静かだけど、有無を言わせない押しの強さ。
「…ないよ」
「嘘だな。お嬢は嘘をつく時、目をそらすからな」
「え?! そうなの?! 知らなかった!」
「ほんと、かわってないな、お嬢は」
そう言って、ライアンは優しく微笑んだ。
「ほら、気になってることがあるなら、なんでも言ってみろ。俺が聞くぞ。ほら、ライライ仲間なんだろ?」
「プッ…、なつかしい! 私が小さい頃、言ったんだよね? ライラのライと、ライアンのライで、ライライ仲間だねって」
「そうだ! ライライ仲間が相談にのるから言ってみろ」
「…そうだね。じゃあ、ひとつ聞くけど、仮にだよ、私の婚約が解消になったら、みんな困るかな?」
ライアンの目が一瞬ふっと細くなった。
「みんなとは誰のことだ?」
「お父様とお母様、それに、働いているみんな、…それと領民の人たち」
「全く困らない。お嬢がこの婚約が嫌なら、やめたっていい」
「でも、私が言いだすと、お金を沢山払わないといけないんでしょ?」
私がそう言うと、ライアンが驚いたように目を見開いた。
「誰からそんなことを聞いた?」
パトリックからだけど、言えないよね。
「うーん、ちょっとそんなことを聞いたから…」
と、にごす。
「また、目をそらしたな。…まあ、いいか。まず、お嬢の婚約は、利害関係で結ばれたものではない。だから、金を払わないといけないのは、一方的に失礼なことをしたり、約束をやぶった場合だ。きちんと理由を伝えれば、なんとでもなる。もしや、お嬢は婚約をやめたいのか?」
ライアンが真剣な顔で聞いてきた。
…ライアンに言ってしまいたい。けど、迷惑をかけるのは嫌だ。
「ん-、ちょっと不安なだけ。…まあ、大丈夫だと思う」
私はあいまいに答えた。
ライアンは私の目をしっかり見て言った。
「お嬢は、婚約解消になったら、みんなが困るか聞いたが、もし、嫌々、結婚して一番困るのはお嬢だ。誰でもない、お嬢が結婚するんだからな。そこをしっかり考えろ。それと、ライライ仲間はいつでも、どんな相談にものるので、そのことをお忘れなく」
そう言うと、ライアンがくしゃっと笑った。
「ありがと、ライアン先生」
思わず、涙がでそうになった。
100
お気に入りに追加
1,015
あなたにおすすめの小説

【完結】破滅フラグを回避したら、冷酷な公爵閣下が離してくれません
21時完結
恋愛
気がつけば、乙女ゲームの悪役令嬢エリシア・フォン・ローゼンベルクに転生していた私。
このままだと、婚約者である王太子の心をヒロインに奪われ、婚約破棄&国外追放……破滅エンド一直線!
(そんな未来はごめんです!!)
そこで私は、王太子に恋をしない! ヒロインに絡まない! を徹底し、地道に好感度を下げる作戦を決行。
結果、見事に婚約破棄! 破滅フラグは回避成功!!
これで静かに暮らせる……と思っていたのに――
「……やっと自由になったな。今度こそ、君を手に入れよう」
冷酷無慈悲と名高い公爵閣下・クラウス・フォン・アイゼンハルトが、なぜか私に求婚してきた!?
「前から君を望んでいたが、王太子の婚約者では手が出せなかった……これで何の障害もない」
「えっ、ちょっと待ってください!? そんな話聞いてません!」
「もう逃がすつもりはない。覚悟してもらおう」
どうしてこうなった!? 破滅回避したら、冷酷公爵に執着されてしまったんですが!?
冷たく見えるけれど、私には甘すぎる公爵閣下。
「君を手に入れるためなら、何でもするよ?」 と微笑む彼から、私は逃げられるの――!?

痛みは教えてくれない
河原巽
恋愛
王立警護団に勤めるエレノアは四ヶ月前に異動してきたマグラに冷たく当たられている。顔を合わせれば舌打ちされたり、「邪魔」だと罵られたり。嫌われていることを自覚しているが、好きな職場での仲間とは仲良くしたかった。そんなある日の出来事。
マグラ視点の「触れても伝わらない」というお話も公開中です。
別サイトにも掲載しております。

【完結】それはダメなやつと笑われましたが、どうやら最高級だったみたいです。
まりぃべる
ファンタジー
「あなたの石、屑石じゃないの!?魔力、入ってらっしゃるの?」
ええよく言われますわ…。
でもこんな見た目でも、よく働いてくれるのですわよ。
この国では、13歳になると学校へ入学する。
そして1年生は聖なる山へ登り、石場で自分にだけ煌めいたように見える石を一つ選ぶ。その石に魔力を使ってもらって生活に役立てるのだ。
☆この国での世界観です。

【完結】私との結婚は不本意だと結婚式の日に言ってきた夫ですが…人が変わりましたか?
まりぃべる
ファンタジー
「お前とは家の為に仕方なく結婚するが、俺にとったら不本意だ。俺には好きな人がいる。」と結婚式で言われた。そして公の場以外では好きにしていいと言われたはずなのだけれど、いつの間にか、大切にされるお話。
☆現実でも似たような名前、言葉、単語、意味合いなどがありますが、作者の世界観ですので全く関係ありません。
☆緩い世界観です。そのように見ていただけると幸いです。
☆まだなかなか上手く表現が出来ず、成長出来なくて稚拙な文章ではあるとは思いますが、広い心で読んでいただけると幸いです。
☆ざまぁ(?)は無いです。作者の世界観です。暇つぶしにでも読んでもらえると嬉しいです。
☆全23話です。出来上がってますので、随時更新していきます。
☆感想ありがとうございます。ゆっくりですが、返信させていただきます。

もう、愛はいりませんから
さくたろう
恋愛
ローザリア王国公爵令嬢ルクレティア・フォルセティに、ある日突然、未来の記憶が蘇った。
王子リーヴァイの愛する人を殺害しようとした罪により投獄され、兄に差し出された毒を煽り死んだ記憶だ。それが未来の出来事だと確信したルクレティアは、そんな未来に怯えるが、その記憶のおかしさに気がつき、謎を探ることにする。そうしてやがて、ある人のひたむきな愛を知ることになる。

【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない
朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。

【完結】元婚約者が偉そうに復縁を望んできましたけど、私の婚約者はもう決まっていますよ?
白草まる
恋愛
自分よりも成績が優秀だからという理由で侯爵令息アッバスから婚約破棄を告げられた伯爵令嬢カティ。
元から関係が良くなく、欲に目がくらんだ父親によって結ばれた婚約だったためカティは反対するはずもなかった。
学園での静かな日々を取り戻したカティは自分と同じように真面目な公爵令息ヘルムートと一緒に勉強するようになる。
そのような二人の関係を邪魔するようにアッバスが余計なことを言い出した。

人は変わらないものですね。夫を信じていた私が間違っていました。
Mayoi
恋愛
最初から興味関心を抱かれておらず、愛以前の問題だった縁談。
それでも政略結婚なのだから婚約しないわけにはいかず、結婚しないわけにはいかなかった。
期待するから裏切られるのであり、諦めてしまえば楽だった。
その考えが正しいことは結婚後のお互いにあまり干渉しない日々で証明された。
ところがある日、夫の態度が変わったのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる