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婚約者?!

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コリーヌ様が、
「ねえ、ライラちゃん。今度、ライラちゃんの植えている花を見に行ってもいいかしら?」
と、聞いてきた。

「もちろんです! いつでも見に来てください!」

「すごい不気味な花ばかりだけどな」
と、アルが眉間にしわをよせた。

「そう言いながら、毎日、見に行ってるのは誰かしらね? 
あ、じゃあ、ライラちゃん。明日、アルと一緒に見に行ってもいい?」
と、コリーヌ様が聞いてきた。

「はい、どうぞ! …あ、明日…そう言えば、あの日か…。すみません、3時から1時間ぐらいはダメなんですが、それ以外なら、いつでもどうぞ」

「どこかへ行くのか? いっつも庭にいるのに珍しいな」
アルが不思議そうに聞いてきた。

「いや、いるんだけど、婚約者の面会の日なんだよね」

「はああー?!」
アルが叫んだ。

「ライラ、婚約者がいるのか? こんな子どもなのに?!」
納得のいかない顔でアルが言った。

「子ども? 立派な14歳だけど?! まあ、婚約者は小さい時に決められただけなんだけど…。
3か月に1回しか会わないしね」

「3か月に1回だけって、決まってるのか?」
と、やたらと聞いてくるアル。

この話、おもしろいかなあ? 
私は興味ないんだけど…と思いつつ、隠すことでもないから、聞かれたことに答える。

「うん、そうだね。交流のため、三か月に一回、会うことになってる。
相手は王都の人だから遠いしね。だから、別に、会いに来なくてもいいって言ってるんだけど…」

「まあ、ライラちゃんに会いたいのね。その婚約者さん」
コリーヌ様が言った瞬間、思わず、変な顔になった。

「いえ、まったく。そうではないと思います。義務かな…、うーん…」

私が言いにくそうにしているのを見て、コリーヌ様は、
「じゃあ、お花を見に行くのは、別の日にするわね」
と、言った。

そして、すっかり元気になり、顔色も良くなったコリーヌ様に見送られ、花束をお土産にいただき、アルに玄関先まで送られて、歩いて数十秒しかかからない、隣の屋敷に戻った。

玄関まで着くと、
「じゃあ、ライラ、ゆっくり休め。今日は、本当にありがとうな」
そう言って、アルは私の頭をなでた。

優しいしぐさに、ドキッとする。

倒れてから、更に心配になったのかな? 
アルの過保護が加速したみたいなんだけど…。


翌日。
朝から憂鬱だ…。三か月に一回の憂鬱な日。

はあ、仮病を使うにも、元気なのは家族皆にばれてるしね。
無になって1時間を過ごすか…。

午後、メイドたちに着替えさせられ、しっかりと髪も整えられた。

そして、3時になったので、両親と私は、玄関で婚約者を出迎える。

時間ぴったりに、豪華な馬車が着いた。

馬車から、すらりと背が高い、やわらかそうな茶色の髪の少年が降りてくる。
少し甘い顔立ちの少年が、私の婚約者パトリックだ。

私の両親の前に来ると、
「ご無沙汰しております。お変わりありませんか?」
と、にこやかに挨拶をした。

「ああ、元気だ。ありがとう。パトリック君は、ますます立派になったな」
お父様は、にこやかに返す。

そして、私のお母様に向かって、
「これ、今、王都で人気の菓子なのですが、よろしかったらどうぞ」
と、素敵な包みを渡す。

お母様は、
「まあ、お心遣いありがとう。どうぞ、ごゆっくりなさってくださいね」
と、微笑みかけた。

ここで、やっと、私の方を向く婚約者様。
ちょっと、目を見開いたような気がした。

が、いつもどおり、爽やかな笑顔で、
「ライラ、久しぶり。元気そうでなにより。会いたかったよ」
と、声をかけてきた。

「パトリックもお元気そうで良かったです。お会いできるのを楽しみにしてました」

若干、棒読みになったのは仕方ない。社交辞令は苦手だから。

パトリックはにっこり微笑んだが、目が笑ってない。怖いね…。


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