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出会い
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挨拶も終わったし、怖くて面倒そうな王子様から、さっさと逃げようとしたら、
「ところでライラ嬢は、おいくつですか?」
と、王子様がお父様に聞いている。
「ライラは14歳になるのですが、いつまでたっても、幼い子どもみたいに外で走り回っておりましてね…」
まあ、いつものお小言だ。
「じゃあ、ライラ嬢は、ぼくの2歳年下だね」
私にむかって、意味ありげに微笑みかけてきた。
なんだろう、悪寒がした…。
そう思ったら、王子様はお父様にむかって、
「知りあいもいないので、年の近いライラ嬢に、この近くを案内してもらってもいいでしょうか? もちろん、護衛もつけますので」
と、お父様に言った。
え?! なんで、私?
ちょっと、お父様、断ってー! この王子様、怖いから!
私の心の叫びもむなしく、
「もちろんですよ、アルフォンス王子殿下。ライラ、ご案内してさしあげなさい」
と、お父様。
うっ…、うらめしい目で王子様を見ると、
「ライラ嬢、よろしくね」
と、さわやかに微笑んだ。が、やっぱり、目が笑ってない…。
結局、私と王子様、二人で応接室からでた。
「じゃあ、とりあえず、この近所だけ案内しますね」
私が言うと、
「案内なんてどうでもいい。そんなの嘘にきまってんだろ。それより、さっきは逃げられたが、話を聞かせろ。俺は、以前毒を盛られたせいで、たまに、あんな風に動けなくなるんだ。長年治らなかったのに、なんで、あの一瞬できれいになおったんだ? おまえ、何をした?!」
と、鋭い目つきで、上から私を見おろしてくる。
やっぱり、怖い…。さっきと全然違うんだけど…?
結局、近所を案内しているふりをして、歩きながら、私の能力を洗いざらい吐かされた。
人から受けた邪気をつけていると、黒い煙のように見えること。
その黒い煙を、なぜか、私の手がすいとれること。そして、すいとると、その人の不調が良くなること。
そして、すいとった邪気が、なぜか、私の手のひらで花の種に変わること。
「あのう。一応、家族と執事のジュードと信用のおける使用人しか知らないことなんですよ? 秘密にしといてくださいね…」
私がおそるおそる言う。
「まあな。でも、おまえ、本当に馬鹿だな。俺みたいに知らない奴を、あんなに簡単に治したら、すぐさま、ばれるだろ。隠せてないじゃないか。しかも、そんな大事な秘密、ぺらぺらしゃべるもんじゃないぞ。利用されるからな」
王子が、あきれたように私に言った。
「あのー、無理やり聞き出したのは、王子様ですよね?」
「ああ?!」
紫色の瞳が、ぎらっと光る。
本当に、この人、王子様なの?!
見た目はすごい美形で、まさに王子様だけど、中身が怖すぎるよ…。
って、考えていたら、
「それと王子様じゃない。アルフォンスだ」
と、これまた、えらそうに言ってきた。
「アルフォンス…王子様」
私が復唱すると、
「じゃなくて、アルフォンスだ」
と、顔を近づけて、命令する。
真顔の美形って迫力があって、これまた怖い…。
「アルフォン…ニュ…様」
怖すぎて、思わず、かんでしまった。
あっと、口に手をやると、王子様はふわっと笑った。
さっき、お父様の前で見せてたような、うさんくさい完璧な笑みではなく、素で笑ってる。
そっちのほうが、ずっといいのに!
「じゃあ、特別にアルでいい。アルと呼べ。わかったな、ライラ」
と、にやりと笑った。
こうして、私とアルは出会った。
「ところでライラ嬢は、おいくつですか?」
と、王子様がお父様に聞いている。
「ライラは14歳になるのですが、いつまでたっても、幼い子どもみたいに外で走り回っておりましてね…」
まあ、いつものお小言だ。
「じゃあ、ライラ嬢は、ぼくの2歳年下だね」
私にむかって、意味ありげに微笑みかけてきた。
なんだろう、悪寒がした…。
そう思ったら、王子様はお父様にむかって、
「知りあいもいないので、年の近いライラ嬢に、この近くを案内してもらってもいいでしょうか? もちろん、護衛もつけますので」
と、お父様に言った。
え?! なんで、私?
ちょっと、お父様、断ってー! この王子様、怖いから!
私の心の叫びもむなしく、
「もちろんですよ、アルフォンス王子殿下。ライラ、ご案内してさしあげなさい」
と、お父様。
うっ…、うらめしい目で王子様を見ると、
「ライラ嬢、よろしくね」
と、さわやかに微笑んだ。が、やっぱり、目が笑ってない…。
結局、私と王子様、二人で応接室からでた。
「じゃあ、とりあえず、この近所だけ案内しますね」
私が言うと、
「案内なんてどうでもいい。そんなの嘘にきまってんだろ。それより、さっきは逃げられたが、話を聞かせろ。俺は、以前毒を盛られたせいで、たまに、あんな風に動けなくなるんだ。長年治らなかったのに、なんで、あの一瞬できれいになおったんだ? おまえ、何をした?!」
と、鋭い目つきで、上から私を見おろしてくる。
やっぱり、怖い…。さっきと全然違うんだけど…?
結局、近所を案内しているふりをして、歩きながら、私の能力を洗いざらい吐かされた。
人から受けた邪気をつけていると、黒い煙のように見えること。
その黒い煙を、なぜか、私の手がすいとれること。そして、すいとると、その人の不調が良くなること。
そして、すいとった邪気が、なぜか、私の手のひらで花の種に変わること。
「あのう。一応、家族と執事のジュードと信用のおける使用人しか知らないことなんですよ? 秘密にしといてくださいね…」
私がおそるおそる言う。
「まあな。でも、おまえ、本当に馬鹿だな。俺みたいに知らない奴を、あんなに簡単に治したら、すぐさま、ばれるだろ。隠せてないじゃないか。しかも、そんな大事な秘密、ぺらぺらしゃべるもんじゃないぞ。利用されるからな」
王子が、あきれたように私に言った。
「あのー、無理やり聞き出したのは、王子様ですよね?」
「ああ?!」
紫色の瞳が、ぎらっと光る。
本当に、この人、王子様なの?!
見た目はすごい美形で、まさに王子様だけど、中身が怖すぎるよ…。
って、考えていたら、
「それと王子様じゃない。アルフォンスだ」
と、これまた、えらそうに言ってきた。
「アルフォンス…王子様」
私が復唱すると、
「じゃなくて、アルフォンスだ」
と、顔を近づけて、命令する。
真顔の美形って迫力があって、これまた怖い…。
「アルフォン…ニュ…様」
怖すぎて、思わず、かんでしまった。
あっと、口に手をやると、王子様はふわっと笑った。
さっき、お父様の前で見せてたような、うさんくさい完璧な笑みではなく、素で笑ってる。
そっちのほうが、ずっといいのに!
「じゃあ、特別にアルでいい。アルと呼べ。わかったな、ライラ」
と、にやりと笑った。
こうして、私とアルは出会った。
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