【本編完結】いらない存在だった私を必要と言ってくれるのは誰ですか?

水無月あん

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あと一ヶ月

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 ……全部、こいつが手配したのか?

 二人は政略結婚である。

 アルバートがなぜブラッドを結婚相手に指名したいのか、ブラッドは知らない。実家である伯爵家が背負うことになった借金を肩代わりし、伯爵家の地に落ちそうだった名誉を挽回する手助けをする見返りとして、ブラッドを指名してきたことは知っている。

 しかし、その経緯は知らない。

 両親によって侯爵家に売り飛ばされたようなものだった。

 どのような経緯で行われたのか。アルバートに聞けば応えてくれるだろう。

 それをわかっていながらも、ブラッドは頑なに興味のないふりをし続けていた。

 ……最初から仕組まれてたわけじゃねえよな。

 そのようなことはありえないのだと自分自身に言い聞かせる。

 これは伯爵家の為に奔走していた二週間の間に用意されたものであるはずだ。そうでなければ、アルバートがいつからブラッドと結婚をする計画を練っていたのか考えなくてはいけなくなってしまう。

「合ってるんじゃねえの。てっきり、実家から送られてきたものだと思ってたくらいだしな」

 ブラッドは素っ気なく言いながら、脱衣場の扉に手を伸ばす。

「伯爵家から?」

 アルバートはなぜそう思ったのか、理解ができないと言いたげな顔をしていた。

「当然だろうが。強引に結婚させておいて、なにも持たせねえような親じゃねえからな」

 ブラッドの両親は貴族らしい貴族だ。

 カザニア伯爵家そのものを誇りに思い、伯爵家の為に命を捧げてもおかしくはないほどに家門と領地を大切にしている。その為ならば、自分の子どもたちを駒のように扱うのは当然だと思っている人たちである。

 伯爵家の名誉を大切にしている両親が、嫁に出した息子に花嫁道具を持たせないはずがない。伯爵家の人間として相応しいものを取り揃えたことだろう。

「そういえば送られてきていたな」

 アルバートはようやく思い出したようだ。

 ……嫌な予感がする。

 ブラッドは伯爵家から送られてきた荷物を確認していない。侯爵家で与えられるのはアルバートが厳選したものばかりであり、それを当然のように受け入れていた。
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