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番外編

挿話 あの後のこと 7 (ダグラス視点)

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術が上手くまわったようで、ルリのしゃべるスピードがあがった。

とはいえ、術によって、ルリ本人の知能があがるわけではないのだから、要領よく要点だけしゃべるという訳にはいかない。

つまり、こちらにとったら、どうでもいい内容も多々混ざるだろう。が、どれが核心につながるかわからないので、とりあえずはルリの好きにしゃべらせる。

この術の改良すべき点といえば、聞く方の忍耐力が問われることか……。

「いつだったかな……? 授業が終わった時、教室まで、ルリを迎えに林田君が来たの。あ、林田君っていうのはねー、その時、ちょっと付きあってた彼氏なんだあ。林田君って、もともと、遊び仲間のリンカの彼氏だったんだけどね。リンカが彼氏の自慢ばっかりするから、なんか、いいなあーって思って? ちょっと林田君に気のあるそぶりをしたの。そうしたら、即、リンカを捨てて、ころっとルリになびいたんだ。前からルリの方が好きだったんだって! まあ、ルリのほうが、ずーっとかわいいから、当たり前なんだけどねー。
それを知ったリンカには絶交するって激怒されたけど、すぐに、また、すりよってきたんだよー。だって、絶交して困るのはリンカだから。町で遊んだりする時、私が全部おごってたんだもんねー。おかしいよねー?」
そう言って、ケラケラと笑うルリ。

おかしいのは、おまえだろう……。 
まあ、階段から突き落すほどルリを恨んでいたのは、一人じゃないということが、よくわかった。

私は、嘘くさい笑みを張り付けて言った。

「なるほど、ルリ嬢はあちらの世界でも人気があったのですね。……それで、今の話と、その階段から突き落した『奈良林あいな』という女性と、どうつながるのですか?」

「あ、うん。ええと、その時の彼氏、林田君がルリを迎えに教室に来た時の話に戻るんだけど……」

つまり、リンカ云々は聞かなくて良かった話なのか……。
この女と話していると、いらだちと疲労が、どんどんたまってくる。

ある意味、ムルダーの相手をするより疲れる。
思わず貼り付けた笑みを忘れ、眉間にしわがよった。

が、ルリが、そんな私の顔を見て、何故かうつろな目で、はーっとため息をついた。

「ダグラスさん……、ほんとかっこいいよね。何、その大人の色気。向こうにはいないわ……」

どろどろと澱んだ気がルリのまわりをうずまいているのが見える。 

私はルリに気づかれないように口の中で詠唱して、自分のまわりにルリの気が混ざらないように結界をはった。

話していて気付いたが、ルリは魔力はないものの、放つ気が強い。

この澱んだ気を相手の気に混ぜることで、影響を及ぼしているような気がする。
例えば、相手が無防備な人間だった場合は特に影響がでやすいのだろう。
軽い魅了だったり、軽い支配のような影響がでやすいと思う。

つまり、ルリの思考を、この澱んだ気が後押ししているようなものだ。

おそらく、精神が幼いムルダーの場合、クリスティーヌ嬢にあれほど執着していながら、ルリにひかれた要因は、ルリの気の影響を多分に受けていると思う。ルリが王太子としてのムルダーを欲したから、気が後押しをした。

が、ムルダーにとって、クリスティーヌ嬢が一番という事実を覆せるほどの力はルリの気にはない。
結果として、ムルダーの歪んだ思考を暴走させることになったわけだ。




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