上 下
47 / 121
番外編

円徳寺 ラナ 1

しおりを挟む
※ 今回からルリの姉、ラナ視点となります。よろしくお願いいたします!


私には、妹がいた。


名前はルリ。初めてルリと会ったのは、私が5歳。ルリが1歳の時。

孤児院にいた私を見て、ルリの両親が私を養子にした。

「今日から、あなたの名前はラナよ」
大きなお屋敷に着いたとたん、私は、ルリの母親にそう言われた。

ラナ? 私の名前は花だから聞き間違えたのかな? 
そう思って、私はきちんと名乗った。

「いえ、私の名前は花といいます。古池 花です」

「あなたは私たちの家族になるの。だから、今までの名前は捨ててね。今日から、あなたの名前は、ラナ。ルリの姉でラナよ」

ラナ…? 花から、ラナ…?
音は似ているけれど、まるで違う感じ…。

それから、私がラナになるための沢山の注意事項を聞かされた。

ルリは病弱だから、常にルリを守ること。
ルリは病弱だから、常にルリを気にかけること。
ルリは病弱だから、常にルリを優先すること。
ルリは病弱だから、常にルリを大事にすること。

ルリは病弱だから、負担はかけられない。
だから、ルリのかわりに、私が会社を継ぎ、会社を守る。そのために必死で勉強をすること。

そして、ルリの母親は最後に言った。

「つまり、あなたは、ルリのためにもらわれてきたのよ。この家でのあなたの役目は、ルリのために生きること。それができないのなら、孤児院に戻ってもらう。どうかしら? あなたにできる?」

私は、コクンとうなずいた。

だって、孤児院には戻りたくない。

私は事故で両親をなくした後、親戚の家に預けられた。でも、結局は孤児院に入れられた。
親戚の家でも孤児院でも、私に居場所なんてなかった。

だから、ここで、私の役目があり、私がここにいていいのなら、「花」という名前は捨てる。

ルリの母親は、そんな私を見て、にっこりと微笑んだ。

「いい子ね、ラナ。さっき、私が言ったことを守って、ルリのために生きてくれるのなら、何不自由ない暮らしを約束するわ。いい家族になりましょう。私のことは、お母様と呼んでね」

「はい…」

こうして、私は、円徳寺ラナとなり、ルリの姉となった。



あれから8年。私は13歳になり、ルリは9歳になった。

私が養女に選ばれたのは、お母様に似ていたからだそう。
ルリと本物の姉妹に見えるということが大事な要素だったらしい。

そのことが功を奏したのか、いまだに、ルリは私が養女だとは知らない。
ルリがショックを受けないよう、両親は細心の注意を払っている。

この8年の間、私はラナでいるために、必死でがんばってきた。
勉強もだけれど、一番にはルリのこと。

いつでも、何をおいてもルリを優先した。

幼い頃は入退院を繰り返していたルリも、今では大分元気になった。
それでも、熱をだすことはしょっちゅうだ。

そのたびに、家じゅうが大騒ぎになる。
そんな時は、私がルリにつきそう。

年々、わがままになってきて、気に入らないと大泣きをするルリ。

でも、「ラナおねえちゃん!」そう言って、甘えてくる様子はかわいらしいし、嬉しくもある。
だから、全力でルリの面倒を見ている。

それが、私、ラナの役目だから。





※ムルダー視点、沢山の方に読んでいただき、ご感想、エールもいただき、本当にありがとうございました!
今回から、ルリの姉のラナ視点となります。どうぞ、よろしくお願いします!

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

おてんば末っ子令嬢、実は前世若頭だった!? 〜皆で領地を守ります!〜

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:832pt お気に入り:2,924

浮気をした婚約者をスパッと諦めた結果

恋愛 / 完結 24h.ポイント:610pt お気に入り:83

婚約破棄できるとでもお思いですの

恋愛 / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:81

貴方といると、お茶が不味い

恋愛 / 完結 24h.ポイント:2,108pt お気に入り:6,800

フランチェスカ王女の婿取り

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,746pt お気に入り:5,430

三年分の記憶を失ったけど、この子誰?

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:2,698pt お気に入り:1,206

処理中です...