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ジュリアン 完結
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ピーッ!
部屋中に、甲高い笛の音が鳴り響く。
あわててあたりを見回すと、扉が開いて、警護の者たちが飛び込んできた。
そして、あっという間に、ジュリアンは取り押さえられた。
「一体、何をするのですか…!」
体を押さえられながら、目の前の大柄の男、警護長のブンに問う。
ブンは真面目な人柄で、ジュリアンの偽りの姿であるサクにも親切だった。
ブンは、悲しい目をして言った。
「サクよ…。鳥様に危害を与えた件で、おまえを取り調べる」
「…取り調べ?! 私は何もしておりません!」
あわてて、鳥のほうを見ると、倒れていた鳥は、すでに金色の小枝にとまり、顔をそむけている。
「ほら、俺は何もしてない! 鳥様もお元気ではないですかっ?!」
「サクよ。それで、よく、鳥様の食事係になれたものだな…」
「は…?」
ブンは、あわれんだ目を、ジュリアンに向けてきた。
「さきほど、鳥様が倒れられただろう? おまえの気が移ったのだ。鳥様への良からぬ気がな…」
「良からぬ気など、滅相もありません…」
頭で考えただけのことが、鳥に伝わるはずはない…!
「鳥様のお食事である雲は、青い実を割った瞬間から、どんどんまわりの気をすいとっていく。だから、鳥様が食べられる寸前に割るのだ。あのように、鳥様が倒れられたのは、雲がすいとった邪の気にあたったためだ」
「邪の気…?」
「おまえが何を考えていたのかは、これから取り調べる。この国で、鳥様の気を乱すのは許されないことだ。サク、残念だが、ついてこい…」
ここで、捕まったら、今までの苦労が水のあわだ。どうするか…。
その時だ。
キーン
聞きなれない音が、部屋を満たした。
「なんだ? なんの音だ?!」
ブンが叫んだ。警護の者たちも、ざわめいている。
というのも、だれもが動けなくなったからだ。
ジュリアンを取り押さえている警護の者たちも、そのままの姿で固まった。
ただ、声はでるので、騒ぎを聞きつけた者たちが、次々と、飛び込んできた。そして、動けなくなっていく。
その中には掃除係のヨリもいた。
とりおさえられている食事係の青年を驚いた顔で見た。
そして、みんなが口々に言う言葉をかき集め、状況を察した瞬間、固まったまま、大きな金色の目から涙を流しはじめた。
ついに、国王ゲイルもやってきた。
が、部屋に足をふみいれた瞬間、ゲイルも動けなくなった。視線と声以外はぴくりとも動かない。
そんななか、体を押さえていた警護の者たちをはねのけて、一人だけふらりと立ちあがったのは、食事係の青年だ。
瞬間、ゲイルに怖気がはしった。
(ことが起こる。今までになかったことが…)
そんな気がした。
食事係の青年の目がやけに光っている。
(あの青い目は、鳥と同じではないか…)
そう思った時、青年を見た鳥の目がくわっと見開かれた。
そして、鳥の全身の毛が、赤から金色にかわった。
青年の髪の色も、茶色から金色にかわった。
鳥は、青年の肩に優雅に舞い降りた。
金色の羽を頭の上まで広げ、口を開いた。
「コレ ワガ アルジ」
つきぬけるような鳥の声が、あたりに響き渡った。
鳥の声を聞き、皆も動けるようになった。その中で、魂がぬけたように、固まっている国王ゲイル。
そんな無抵抗の人間を、ジュリアンはどうしても殺すことはできなかった。
そして、血を一滴も流さず、ジュリアンが王となった。
その後、ジュリアンは、大陸中をとびまわった。
戦いにつかれていた国々と話し合い、一国ずつ同盟を結んでいく。
輝くような金色の髪のジュリアンが、肩に金色の鳥をのせ、金色の瞳をしたヨリ王妃をともなって動き回る姿は、光がさしてきたようだと民衆の間でひろまっていった。
そして、すべての国が手を結んだ時、新たに、大きなひとつの国となった。
その初代の王がジュリアン。
戦いを終わらせた光の王として、語り継がれていくこととなる。
(完)
短いお話が書きたかったので、さくっと完結です。
読みづらいところも多かったと思いますが、読んでくださった方、ありがとうございました!
部屋中に、甲高い笛の音が鳴り響く。
あわててあたりを見回すと、扉が開いて、警護の者たちが飛び込んできた。
そして、あっという間に、ジュリアンは取り押さえられた。
「一体、何をするのですか…!」
体を押さえられながら、目の前の大柄の男、警護長のブンに問う。
ブンは真面目な人柄で、ジュリアンの偽りの姿であるサクにも親切だった。
ブンは、悲しい目をして言った。
「サクよ…。鳥様に危害を与えた件で、おまえを取り調べる」
「…取り調べ?! 私は何もしておりません!」
あわてて、鳥のほうを見ると、倒れていた鳥は、すでに金色の小枝にとまり、顔をそむけている。
「ほら、俺は何もしてない! 鳥様もお元気ではないですかっ?!」
「サクよ。それで、よく、鳥様の食事係になれたものだな…」
「は…?」
ブンは、あわれんだ目を、ジュリアンに向けてきた。
「さきほど、鳥様が倒れられただろう? おまえの気が移ったのだ。鳥様への良からぬ気がな…」
「良からぬ気など、滅相もありません…」
頭で考えただけのことが、鳥に伝わるはずはない…!
「鳥様のお食事である雲は、青い実を割った瞬間から、どんどんまわりの気をすいとっていく。だから、鳥様が食べられる寸前に割るのだ。あのように、鳥様が倒れられたのは、雲がすいとった邪の気にあたったためだ」
「邪の気…?」
「おまえが何を考えていたのかは、これから取り調べる。この国で、鳥様の気を乱すのは許されないことだ。サク、残念だが、ついてこい…」
ここで、捕まったら、今までの苦労が水のあわだ。どうするか…。
その時だ。
キーン
聞きなれない音が、部屋を満たした。
「なんだ? なんの音だ?!」
ブンが叫んだ。警護の者たちも、ざわめいている。
というのも、だれもが動けなくなったからだ。
ジュリアンを取り押さえている警護の者たちも、そのままの姿で固まった。
ただ、声はでるので、騒ぎを聞きつけた者たちが、次々と、飛び込んできた。そして、動けなくなっていく。
その中には掃除係のヨリもいた。
とりおさえられている食事係の青年を驚いた顔で見た。
そして、みんなが口々に言う言葉をかき集め、状況を察した瞬間、固まったまま、大きな金色の目から涙を流しはじめた。
ついに、国王ゲイルもやってきた。
が、部屋に足をふみいれた瞬間、ゲイルも動けなくなった。視線と声以外はぴくりとも動かない。
そんななか、体を押さえていた警護の者たちをはねのけて、一人だけふらりと立ちあがったのは、食事係の青年だ。
瞬間、ゲイルに怖気がはしった。
(ことが起こる。今までになかったことが…)
そんな気がした。
食事係の青年の目がやけに光っている。
(あの青い目は、鳥と同じではないか…)
そう思った時、青年を見た鳥の目がくわっと見開かれた。
そして、鳥の全身の毛が、赤から金色にかわった。
青年の髪の色も、茶色から金色にかわった。
鳥は、青年の肩に優雅に舞い降りた。
金色の羽を頭の上まで広げ、口を開いた。
「コレ ワガ アルジ」
つきぬけるような鳥の声が、あたりに響き渡った。
鳥の声を聞き、皆も動けるようになった。その中で、魂がぬけたように、固まっている国王ゲイル。
そんな無抵抗の人間を、ジュリアンはどうしても殺すことはできなかった。
そして、血を一滴も流さず、ジュリアンが王となった。
その後、ジュリアンは、大陸中をとびまわった。
戦いにつかれていた国々と話し合い、一国ずつ同盟を結んでいく。
輝くような金色の髪のジュリアンが、肩に金色の鳥をのせ、金色の瞳をしたヨリ王妃をともなって動き回る姿は、光がさしてきたようだと民衆の間でひろまっていった。
そして、すべての国が手を結んだ時、新たに、大きなひとつの国となった。
その初代の王がジュリアン。
戦いを終わらせた光の王として、語り継がれていくこととなる。
(完)
短いお話が書きたかったので、さくっと完結です。
読みづらいところも多かったと思いますが、読んでくださった方、ありがとうございました!
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