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フラン 王都へ

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王都にある叔母様のところは、うちよりずっと豪華なお屋敷だった。

伯爵様は私に興味がなさそうだったけれど、叔母様は大歓迎
お母様の小さい頃に私がそっくりらしくて、喜んでいる。

扱いやすそう……。

伯爵家には二人の子どもがいるが、兄は留学しているため、妹のローザだけが屋敷にいた。

私の従姉妹になる、同じ年のローザ。
きれいな子。でも、おとなしそうで地味な感じ。
私のほうがずっとかわいい!

ただ、田舎では見たことがないような、素敵なドレスを着ている。
お母様の嫁ぎ先の違いで、こんなにも違う。なんだか、もやっとした。

そうだ! あの子の大事なものを奪っちゃおう!
だって、私には神様がついてるから、なんだってできるもん。

早速、男の子の声に聞いてみた。

「ローザの大事なものを奪いたい。どうしたらいい?」

「あの子とは違うことをすればいいんじゃない? 悲しんだり、笑ったり、いっぱい顔にだすの」
と、男の子の声。

それなら得意だわ。

私は、思いっきり、子どもっぽい無邪気な笑顔をふりまいた。
そして、時々、両親と離れて寂しいって、悲しんでみせる。
すると、みんなびっくりするほど、心配する。
特に、お人好しの叔母様なんて、簡単だったわ。

ローザのドレスよりかわいいドレスをいくつも買ってもらった。

そんな時、ローザの婚約者に会った。
きらきらして、童話の王子様みたい!

名前はダリル様。しかも、侯爵家のご子息。
決めた! 私、この人をもらう!

私は、早速、男の子の声にたずねた。

「ダリル様が欲しい! どうしたら、ローザから奪える?」

「あんなのもらって、いいことになるの? だって、いいことを沢山おこさないと、ぼく、あそんでもらえないんだよね?」
と、不思議そうな男の子の声。

「私にとったら、一番いいことよ! だから、どうしたらいいか教えて!」

「ふーん。ま、いいか。……じゃあ、泣いたらいいよ」

「え?」

「おもいっきり、あれのまえで、泣いたらいいよ」

泣く? ダリル様の前で?

よくわからないけれど、男の子の声が言うのだから、やってみよう。


私はダリル様が来るのを待った。が、あれ以来、屋敷にこない。
それとなく叔母様に聞いてみた。

すると、もうすぐ、ローザのお誕生日のパーティーをひらくから、ダリル様も招待しているそう。
私の誕生日も近いから一緒に祝ってくれるという。

じゃあ、その時がチャンスね!
絶対に泣いてみせるわ!


そして、パーティー当日になった。

ダリル様は、私とローザに二つの箱を差し出した。
大きな箱と、小さな箱。好きな方を選ぶように言った。プレゼントみたい。

私は絶対に大きな箱がいい。
そう思って、手を伸ばそうとしたら、男の子の声がした。

「ちいさい箱をえらんで」

ローザがまさに小さい箱をとろうとしていたから、あわてて、小さい箱を私が取った。

まずは、大きな箱からあけるように、ダリル様が言った。

なーんだ。ただの、うさぎのぬいぐるみか……。

ローザがほんのりと嬉しそうに顔をゆるめたから、欲しくはないけれど、奪おうと思った。

私はおおげさにぬいぐるみをほめて、ローザの手からぬいぐるみを奪い取る。
私のかわいい見た目なら、ぬいぐるみをだっこして喜べば、みんなも奪ったとは思わないはず。

少しだけ、ローザが悲しそうにしたから、胸がすーっとした。

さあ、次は私の番。

私は、小さな箱を開けた。
転がりでてきた、小さなカエル。
田舎でカエルなんて見慣れてるから、すぐにおもちゃだとわかった。

「今だよ。泣いて」
と、男の子の声。

私はおおげさに悲鳴をあげて、ダリル様に抱きついた。
そして、怖がっているふりをして、大きな声をあげて泣いてみせる。

そっと、ダリル様を見上げると目があった。
熱のこもった目で私を見ている。

うまくいったわ!


それからも、私は男の子の声に従って動いた。

まずは、叔母様を味方につけた。

「ダリル様とローザと一緒にいると楽しい。寂しいのを忘れられる」
と訴えた。

すぐに、叔母様は、ダリル様が来た時は、私も一緒に会えるように指示をだした。
おかげで、誰にとがめられることもなく、ローザとダリル様の邪魔ができた。
そんな時、ローザが悲しそうにするのも、気持ちがよかった。

ダリル様は驚かそうと、突然やってくるが、男の子の声が前もって教えてくれる。
だから、花を見ているふりをしながら、庭で待つ。
絶対、ローザより先に会って、ローザとふたりっきりにはさせない。

他にも、男の子の声は、ダリル様が喜ぶことを教えてくれた。
そのとおりにしていたら、ダリル様は、どんどん私にのめりこんでいった。

そして、ついに、
「私、ダリル様とずっと一緒にいたい」
そう言って、ダリル様を泣き落した。

同時に、叔母様も泣き落す。

ローザの婚約者なのに、ダリル様と思いあってしまい、苦しんでいること。
ローザとダリル様は政略だから、お互いなんとも思っていないこと。
泣きながら、叔母様にふきこんだ。

私のお母様の婚約時の騒動で力になれなかったと後悔していた叔母様。

「このままでは誰も幸せになれないわね」
と、すぐに動いてくれた。

こうして、ダリル様の婚約者は私に変わった。
私はローザから一番大事なダリル様を奪ったわ!



※ 読みづらいところも多いと思いますが、読んでくださった方、ありがとうございます!
お気に入り登録、エールもいただき、ありがとうございます! 大変励みになります。
明日、2回更新して完結となります。どうぞよろしくお願いします。

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