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ここに犯人がいます!
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レーナおばさまに向かって、お願いがあると言いだした王女様。
王女様のお願いなんて嫌な予感しかしないけれど、レーナおばさまは美しい微笑みをたたえたまま聞いた。
「なんでございましょう、王女様。私でご希望に添えることであればいいのですが……」
さすが、レーナおばさまだ。
何か企んでいそうな王女様を前にしても、いつもどおり優雅で落ち着いている。
私なんて、警戒心マックスで、とてもそんな落ち着いた態度ではいられない。
自分が竜なら、おそらく今頃、火を吐いている!
「ささやかなお願いよ、ロイド公爵夫人。こちらの素敵なお庭を見せていただきたいの。ロイド公爵夫人は、この国にしか咲かないお花を育てているのですって? ガイガー王子から聞いたものだから、一度見てみたいと思ったの。そうよね、ガイガー王子?」
第二王子に向かって、そう問いかけた王女様。
「花……? ああ……、そういえばそんなことが書いていた……いや、確かに、俺が、ラジュ王女にそう言ったんだったな。ロイド公爵夫人は、この国にしか咲かない花を育てていると」
焦ったように、そう答えた第二王子。
なんたる挙動不審!
だって、途中、「そんなことが書いていた」とか、言いかけたよね?
どう考えても、単なる言い間違いじゃないような気がする。
だとしたら、何に書いていたのか。
一体、どういうことだろう……?
そもそも、レーナおばさまの育てている、この国にしか咲かない花というのはマラミのことだと思うけど、広い公爵家のお庭の中では、マラミが咲いている場所は、とっても狭い。
しかも、他の花や植物の影に隠れるように、目立たず、ひっそりと咲いている。
もともと、マラミ自体が小さなお花だから、その様子が野生の状態に近いし、とても可憐で、かわいらしいんだけど。
でも、レーナおばさまがマラミを育てていることって、そんなに知られていることじゃないような気がするんだよね……。
ルーファスとかも全く興味がないみたいで、今まで一度も話題にでたことがないし。
それを第二王子が知っていたってこと……?
うーん、腑に落ちないな。
そんな怪しすぎる第二王子に対しても、レーナおばさまは優雅な微笑みをくずさない。
「まあ、ガイガー様。私がマラミを育てていることを、よくご存じでしたわね?」
「あ、ああ……。以前、叔父上に聞いて、記憶に残っていたんだろう。だから、ラジュ王女と会話しているとき、話のながれで、つい口からでたんだな」
「あら、主人からお聞きになったの……? 確かに、マラミは私が好きで、ほんの少しだけ自分で育てているんですが、全く植物に興味のない、うちの主人は、庭にどんなお花が咲いていようが気づいていないと思っていましたわ」
不思議そうに答えるレーナおばさま。
見るからに動揺した様子の第二王子。
「それなら、叔父上から聞いたんじゃなかったのかもしれん。公爵家をたずねた貴族の誰かから聞いたかのかもしれない。とにかく、誰から聞いたかは忘れたが」
と、あわてて言いなおした。
ここ公爵家のお庭は、凄腕の庭師コリンさんがいて、季節折々のお花が華やかに咲いている。
そんなお花たちの影に隠れるようにして、ひっそりと咲いているマラミを、訪ねてきたお客様がそうそう簡単には見つけられないと思うんだよね。
余程、お花が好きで、この広いお庭を、じっくり見て回る人じゃないと。
やっぱり、怪しい!
何を企んでいるのかはわからないけれど、犯人がここにいます!
もう、今の段階で、つかまえといたほうがいいんじゃない!?
そう思って、ルーファスを見る。
私の気持ちが伝わったのか、ルーファスが私に軽くうなずくと、
「なんか、うちの庭にでたがってるね。庭で何をするつもりなのか知らないけど、せっかくだから、誘いにのってみないとね」
と、ささやいた。
あ、なるほど……。
王女様はマラミを見たいんじゃなくて、庭にでたがっているってことなのか……。
そこで何か、よからぬことをしようとしている。
「なら、私も行く!」
「ダメだよ。ララは危ないから、母上と一緒に、ここにいて。あっちが何を言おうが、庭にでないでね。あ、そうだ、全部おわったあと、僕とふたりだけで庭を見よう? コリンに頼んで、ララが好きなお花だけを集めて植えた『ララの庭』を作ってもらったんだ。早く、ララに見せたくて。大丈夫、すぐ終わらせるから」
そうささやくと、とろけるように甘く微笑んだルーファス。
ララの庭……?
ええと、ロイド公爵家のお庭に、勝手にそんな場所を作っていいの……?
でも、コリンさんが作ってくれたのなら、とても素敵なんだろうな。
見てみたいよね……なーんてのんきに喜んでいる場合じゃない!
ルーファスだけが庭にでるなんて危ないよ!
だって、むこうが狙っているのはルーファスなんだから。
こうなったら、ルーファスに止められても、なにがなんでも、ルーファスのあとをつけないと。
ルーファスから目を離したらダメだ!
そう、絶対にルーファスは私が守る!
王女様のお願いなんて嫌な予感しかしないけれど、レーナおばさまは美しい微笑みをたたえたまま聞いた。
「なんでございましょう、王女様。私でご希望に添えることであればいいのですが……」
さすが、レーナおばさまだ。
何か企んでいそうな王女様を前にしても、いつもどおり優雅で落ち着いている。
私なんて、警戒心マックスで、とてもそんな落ち着いた態度ではいられない。
自分が竜なら、おそらく今頃、火を吐いている!
「ささやかなお願いよ、ロイド公爵夫人。こちらの素敵なお庭を見せていただきたいの。ロイド公爵夫人は、この国にしか咲かないお花を育てているのですって? ガイガー王子から聞いたものだから、一度見てみたいと思ったの。そうよね、ガイガー王子?」
第二王子に向かって、そう問いかけた王女様。
「花……? ああ……、そういえばそんなことが書いていた……いや、確かに、俺が、ラジュ王女にそう言ったんだったな。ロイド公爵夫人は、この国にしか咲かない花を育てていると」
焦ったように、そう答えた第二王子。
なんたる挙動不審!
だって、途中、「そんなことが書いていた」とか、言いかけたよね?
どう考えても、単なる言い間違いじゃないような気がする。
だとしたら、何に書いていたのか。
一体、どういうことだろう……?
そもそも、レーナおばさまの育てている、この国にしか咲かない花というのはマラミのことだと思うけど、広い公爵家のお庭の中では、マラミが咲いている場所は、とっても狭い。
しかも、他の花や植物の影に隠れるように、目立たず、ひっそりと咲いている。
もともと、マラミ自体が小さなお花だから、その様子が野生の状態に近いし、とても可憐で、かわいらしいんだけど。
でも、レーナおばさまがマラミを育てていることって、そんなに知られていることじゃないような気がするんだよね……。
ルーファスとかも全く興味がないみたいで、今まで一度も話題にでたことがないし。
それを第二王子が知っていたってこと……?
うーん、腑に落ちないな。
そんな怪しすぎる第二王子に対しても、レーナおばさまは優雅な微笑みをくずさない。
「まあ、ガイガー様。私がマラミを育てていることを、よくご存じでしたわね?」
「あ、ああ……。以前、叔父上に聞いて、記憶に残っていたんだろう。だから、ラジュ王女と会話しているとき、話のながれで、つい口からでたんだな」
「あら、主人からお聞きになったの……? 確かに、マラミは私が好きで、ほんの少しだけ自分で育てているんですが、全く植物に興味のない、うちの主人は、庭にどんなお花が咲いていようが気づいていないと思っていましたわ」
不思議そうに答えるレーナおばさま。
見るからに動揺した様子の第二王子。
「それなら、叔父上から聞いたんじゃなかったのかもしれん。公爵家をたずねた貴族の誰かから聞いたかのかもしれない。とにかく、誰から聞いたかは忘れたが」
と、あわてて言いなおした。
ここ公爵家のお庭は、凄腕の庭師コリンさんがいて、季節折々のお花が華やかに咲いている。
そんなお花たちの影に隠れるようにして、ひっそりと咲いているマラミを、訪ねてきたお客様がそうそう簡単には見つけられないと思うんだよね。
余程、お花が好きで、この広いお庭を、じっくり見て回る人じゃないと。
やっぱり、怪しい!
何を企んでいるのかはわからないけれど、犯人がここにいます!
もう、今の段階で、つかまえといたほうがいいんじゃない!?
そう思って、ルーファスを見る。
私の気持ちが伝わったのか、ルーファスが私に軽くうなずくと、
「なんか、うちの庭にでたがってるね。庭で何をするつもりなのか知らないけど、せっかくだから、誘いにのってみないとね」
と、ささやいた。
あ、なるほど……。
王女様はマラミを見たいんじゃなくて、庭にでたがっているってことなのか……。
そこで何か、よからぬことをしようとしている。
「なら、私も行く!」
「ダメだよ。ララは危ないから、母上と一緒に、ここにいて。あっちが何を言おうが、庭にでないでね。あ、そうだ、全部おわったあと、僕とふたりだけで庭を見よう? コリンに頼んで、ララが好きなお花だけを集めて植えた『ララの庭』を作ってもらったんだ。早く、ララに見せたくて。大丈夫、すぐ終わらせるから」
そうささやくと、とろけるように甘く微笑んだルーファス。
ララの庭……?
ええと、ロイド公爵家のお庭に、勝手にそんな場所を作っていいの……?
でも、コリンさんが作ってくれたのなら、とても素敵なんだろうな。
見てみたいよね……なーんてのんきに喜んでいる場合じゃない!
ルーファスだけが庭にでるなんて危ないよ!
だって、むこうが狙っているのはルーファスなんだから。
こうなったら、ルーファスに止められても、なにがなんでも、ルーファスのあとをつけないと。
ルーファスから目を離したらダメだ!
そう、絶対にルーファスは私が守る!
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