私が一番嫌いな言葉。それは、番です!

水無月あん

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認めた?

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あ、しまった……。叫んじゃった……。

王子妃はだまりこんだまま、私をにらんでいる。
王子妃に言った言葉に後悔はないけれど(というか、全然言い足りない)、お茶会で叫ぶのはまずかったよね?

「大声をだして、申し訳ありませんでした……」

とりあえず、テーブルの向かい側に向かって、さっと頭をさげて、椅子に座った私。

「さすがララ。かっこよくて、見入っちゃった。僕の助けなんていらなかったね」
と、何故かほめてくるルーファス。

本当に幼馴染の欲目で、何をしても、ルーファスは褒める。

ルーファスの奥に坐るレーナおばさまと目があったので、「すみません」と、口パクで伝える。

レーナおばさまは首を横にふって、微笑み返してくれた。
はああ。優しすぎて、やっぱり女神だ……。

と、癒されたのもつかの間、

「マイリ侯爵令嬢、気にするな。アンヌが無礼なことを言ったのが悪い。アンヌ、謝れ」
と、第二王子の他人事のようなセリフにむかっときた。

王子妃のミナリアねえさまへの暴言は絶対に許せない。

が、冷静に考えてみみれば、ミナリアねえさまと王子妃は直接の交流は皆無だったはず。
それなのに、これだけ悪しざまに言うのは、今の状況が不幸せなんだろうと思う。

そもそも、11年前のあの時、番に出会ったとしても、第二王子がミナリアねえさまに誠実に対応して、婚約を解消していれば、良かっただけのこと。

そう、全ての元凶はやつにある!

「ほら、早く謝れ、アンヌ!」

顔をしかめて命令する第二王子。
が、王子妃は第二王子をにらみながら、言い返した。

「なんで私が謝らないといけないのよ! 私は帰るわ」

「ダメだ、アンヌ! 勝手なことをするな。この茶会の目的は終わってない……」

今、茶会の目的って言った……?
それって、何かよからぬことを企んでるってことを、自分で暴露したんじゃないの!?

思わず、ルーファスを見る。
すぐにルーファスは私の言いたいことを察したようにうなずいた。

そして、第二王子に向かって問いかけた。

「ガイガー王子。主催者である王子妃がそのような状態であれば、茶会など続行できないと考えるのが普通。だが、ガイガー王子は、この茶会の目的は終わっていないと言われた。このまま茶会を終わらせてはまずいというふうに聞こえましたが、この茶会の間に何かをしようと企んでいるのですか?」

おっと、ルーファス、いきなり直球で聞いたね?

ルーファスの問いに、第二王子が怒ったように答えた。

「ルーファス! 企むとは人聞きの悪い……。そんなことあるわけないだろう!?」

「じゃあ、茶会はここで中止にしましょう。王子妃は具合が悪そうですし、早く帰られたほうがよろしいかと。王子妃、それでいいですね?」
と、ルーファスが王子妃のほうを向いて聞いた。

「ええ、いいわ! もう、こんなところにいたくない! 帰るわ!」

「おい、アンヌ! 勝手なことを言うな! 今、茶会をとりやめたら意味がない!」

慌てた様子で、王子妃に向かって声をあげる第二王子。
今、とりやめたら意味がない……なんて、もう、何か企んでいると認めたようなもんじゃない!?

と、思った時だった。

王女様がパンと手をうった。
第二王子がはっとしたように、王女様の顔を見る。

「アンヌさんもガイガー王子も、少し落ち着いて」

「ああ、すまない……」
と、第二王子。

王女様は艶やかな笑みを浮かべて、ルーファスのほうを見た。

「ルーファス。ガイガー王子の言ったことは、アンヌさんを思ってのことよ? このお茶会の目的は、もちろん、お茶会を無事、開催して終わらせること。そのことで、ひきこもっていたアンヌさんが自信をつけることが目的。国王様がおっしゃっていたとおりよ。企みだなんて物騒だわ。ねえ、ガイガー王子」

「あ……ああ、そうだ。企みとは、酷い言いようだな、ルーファス。この茶会をする目的は、アンヌのために決まってるだろう! この茶会がうまくいけば、アンヌの自信になるからな!」

王女様の言葉に、すごい勢いでのってきた第二王子。
怪しさしかないけれど、今のところ、王女様の言うことを覆す証拠はない……。

次の瞬間、アンヌさんがヒステリックに叫んだ。

「何が私のためよ!? 嘘ばっかり! ガイガー様は、私のことなんて何も考えてないじゃない! 私は茶会なんてどうでもいい。帰るわ!」

「待て、アンヌ!」

第二王子が歩き出そうとした王子妃の腕をつかんだ。

「離しなさいよ、この嘘つき!」

叫ぶ、王子妃。
すると、王女様が席をたち、王子妃のほうに近づいていった。

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