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そう願いたい
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なんともいえない静けさの中、口を開いたのは王女様。
「あら、そんな風にルーファスに思われるなんて、うらやましいわ、ララベルさん。まあ、でも、ルーファスの気持ちもわかるわね。竜の獣人からしたら、獣人の血がまるで入っていない人なんて、か弱い、ひな鳥のようなものだもの。優しいルーファスにとったら、ララベルさんが幼い子どものようにしか見えないんでしょう。幼い子どもは、誰だって、かわいいものね。特別なことじゃないわ。そう思わない、モリナさん?」
と、何故だか、そこで、モリナさんに笑顔で問いかけた王女様。
もう、嫌な予感しかない……。
モリナさんは、王女様に向かって大きくうなずいた。
「そのとおりですわ、ラジュ王女様! ルーファス様はお優しいから、学園でも、まさに、幼い子どもの面倒をみるように、ララベルさんに接していらっしゃいます。ララベルさんは、そんなルーファス様のお優しさに、厚かましく、つけこんでいるんですわ! ただ、運がよくて、幼馴染という状況にあっただけですのに! そうじゃなくって、ララベルさん!?」
え!? ここで私……!?
というか、最後に誰かに投げかけるバトルとかなの、この会話?
興奮した状態で私を鋭くにらむモリナさんは、完全に戦闘態勢に入っている……。
「本当にルーファスはどこでも人気者だな。うらやましいことだ」
と、あざけるように口をはさんだ第二王子。
嫌味な笑みを浮かべて、澱んだ目でルーファスを見ている第二王子。
その隣の王子妃は、こちらを見ることもなく、ひたすらお菓子を食べていた。
せっかく、レーナおばさまが、悪い気を払うような飾りつけやお茶を用意してくださっているのに、なんというカオス……。
でも、モリナさんから名指しで呼びかけられた以上、何か答えないとね。
「ララ、あんなバカげた言いがかりに返事なんてしなくていいよ。僕がきっちり返しとくから」
と、ルーファスが怒りがこもった声をだした。
まずい……。
ルーファスが、このバトルを受けてたとうとしている。
そんなことをしたら、ますます状況が悪化しそう。
私は、小声でルーファスに言った。
「私が答えるから大丈夫」
「いや、でも……」
「これくらい大丈夫だから。ね、ルーファス」
安心させるように、にこっと微笑む。
ルーファスは切れ長の目がふっとゆるめて、しぶしぶといった様子でうなずいた。
とりあえず、戦闘態勢のモリナさんに少しでも落ち着いてもらわないと……。
私は深刻にならないよう、できるだけ、おだやかに、ゆるい感じに、モリナさんの言ったことに答え始めた。
「確かに、モリナさんの言ったように、ルーファスは、私を幼い子どものように思っていると思います。すぐに心配して、なにかと細やかに世話をやいてくれるから……。
それと、ルーファスが優しいのは、本当にその通りです! とってもとっても優しくて、天使みたいな人ですから……。ええと、あとは、私がその優しさにつけこんでいる、でしたっけ? うーん、つけこむという感じがわからないけれど、ルーファスに甘えっぱなしかもしれません。もっと、私がしっかりしないといけませんね。反省反省。
ええと、あとは、なんでしたっけ……? あっ、そうか、運よく幼馴染でしたね……。それもその通りです。ルーファスと幼馴染でよかったなと思ってます。だって、幼い頃から、ルーファスとずっと一緒に過ごしてきて、とても楽しかったですから。モリナさんの言うように、ルーファスに小さい頃から出会えた私は運がいいですね。幸運です!」
よし、これで、聞かれたことには全部答えたよね?
結局、モリナさんの言ったとおりだったから、何も反論もしていないし、受け答えとしては大丈夫じゃない!?
きっと荒れた気持ちも落ち着いたよね……と思って、モリナさんを見たら、怒りのあまり顔が真っ赤になっていた。え、まさか悪化した……!?
その時、隣からフッと笑い声がもれた。
見ると、とろけるように微笑むルーファス。
「ララの言葉が嬉しすぎて、今すぐ、だきしめたい。ダメなら、せめて、頭をなでたいな……」
と、つぶやいている。
は……? いやいや、ちょっと、ルーファス!?
何を言っているの?
というか、なんでそうなるの? ほら、前を見て!?
幸い、ルーファスは、私のほうをむいてつぶやいたので、隣に座る私にしか聞こえていないと思う。
そう願いたい……。
「あら、そんな風にルーファスに思われるなんて、うらやましいわ、ララベルさん。まあ、でも、ルーファスの気持ちもわかるわね。竜の獣人からしたら、獣人の血がまるで入っていない人なんて、か弱い、ひな鳥のようなものだもの。優しいルーファスにとったら、ララベルさんが幼い子どものようにしか見えないんでしょう。幼い子どもは、誰だって、かわいいものね。特別なことじゃないわ。そう思わない、モリナさん?」
と、何故だか、そこで、モリナさんに笑顔で問いかけた王女様。
もう、嫌な予感しかない……。
モリナさんは、王女様に向かって大きくうなずいた。
「そのとおりですわ、ラジュ王女様! ルーファス様はお優しいから、学園でも、まさに、幼い子どもの面倒をみるように、ララベルさんに接していらっしゃいます。ララベルさんは、そんなルーファス様のお優しさに、厚かましく、つけこんでいるんですわ! ただ、運がよくて、幼馴染という状況にあっただけですのに! そうじゃなくって、ララベルさん!?」
え!? ここで私……!?
というか、最後に誰かに投げかけるバトルとかなの、この会話?
興奮した状態で私を鋭くにらむモリナさんは、完全に戦闘態勢に入っている……。
「本当にルーファスはどこでも人気者だな。うらやましいことだ」
と、あざけるように口をはさんだ第二王子。
嫌味な笑みを浮かべて、澱んだ目でルーファスを見ている第二王子。
その隣の王子妃は、こちらを見ることもなく、ひたすらお菓子を食べていた。
せっかく、レーナおばさまが、悪い気を払うような飾りつけやお茶を用意してくださっているのに、なんというカオス……。
でも、モリナさんから名指しで呼びかけられた以上、何か答えないとね。
「ララ、あんなバカげた言いがかりに返事なんてしなくていいよ。僕がきっちり返しとくから」
と、ルーファスが怒りがこもった声をだした。
まずい……。
ルーファスが、このバトルを受けてたとうとしている。
そんなことをしたら、ますます状況が悪化しそう。
私は、小声でルーファスに言った。
「私が答えるから大丈夫」
「いや、でも……」
「これくらい大丈夫だから。ね、ルーファス」
安心させるように、にこっと微笑む。
ルーファスは切れ長の目がふっとゆるめて、しぶしぶといった様子でうなずいた。
とりあえず、戦闘態勢のモリナさんに少しでも落ち着いてもらわないと……。
私は深刻にならないよう、できるだけ、おだやかに、ゆるい感じに、モリナさんの言ったことに答え始めた。
「確かに、モリナさんの言ったように、ルーファスは、私を幼い子どものように思っていると思います。すぐに心配して、なにかと細やかに世話をやいてくれるから……。
それと、ルーファスが優しいのは、本当にその通りです! とってもとっても優しくて、天使みたいな人ですから……。ええと、あとは、私がその優しさにつけこんでいる、でしたっけ? うーん、つけこむという感じがわからないけれど、ルーファスに甘えっぱなしかもしれません。もっと、私がしっかりしないといけませんね。反省反省。
ええと、あとは、なんでしたっけ……? あっ、そうか、運よく幼馴染でしたね……。それもその通りです。ルーファスと幼馴染でよかったなと思ってます。だって、幼い頃から、ルーファスとずっと一緒に過ごしてきて、とても楽しかったですから。モリナさんの言うように、ルーファスに小さい頃から出会えた私は運がいいですね。幸運です!」
よし、これで、聞かれたことには全部答えたよね?
結局、モリナさんの言ったとおりだったから、何も反論もしていないし、受け答えとしては大丈夫じゃない!?
きっと荒れた気持ちも落ち着いたよね……と思って、モリナさんを見たら、怒りのあまり顔が真っ赤になっていた。え、まさか悪化した……!?
その時、隣からフッと笑い声がもれた。
見ると、とろけるように微笑むルーファス。
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と、つぶやいている。
は……? いやいや、ちょっと、ルーファス!?
何を言っているの?
というか、なんでそうなるの? ほら、前を見て!?
幸い、ルーファスは、私のほうをむいてつぶやいたので、隣に座る私にしか聞こえていないと思う。
そう願いたい……。
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