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気になる
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「ラジュ王女様に直々にお誘いいただき、お茶会に参加させていただくことになりました。ロイド公爵家のお屋敷に来られるなんて、とても光栄ですわ、ルーファス様のお母様」
レーナおばさまに意気揚々と話しかけたモリナさん。
妙に「お母様」のところが声が大きくなった気がしたけれど、そんな風に呼びかけたりする……?
モリナさんから、ジャリス侯爵家はロイド公爵家と遠い親戚と聞いているから、ずっと、そんな風に呼んできたのかな?
でも、レーナおばさまから、モリナさんの名前もジャリス侯爵家の話ですら聞いたことはなかったから、交流はないと思っていたんだけど、違ってたのかも……。
レーナおばさまが美しい笑みを浮かべて言った。
「確か、ジャリス侯爵家のご令嬢でしたわよね。夜会でお見かけしたことはありますが、きちんとご挨拶をした覚えがないので、失礼ですが、お名前を教えていただいても?」
え、そうだったの?
モリナさんの頬がさっと赤くなった。
そして、何故だか、私をにらんだモリナさん。
「ジャリス侯爵家の娘、モリナと申します……」
「モリナさんね。王女様のお連れさまですから、歓迎しますわ。では、王女様とモリナさん、お席に案内します」
そう言うと、優雅なしぐさで、レーナおばさまがふたりをテーブルのほうへと連れて行く。
「ララ、へんなのが増えてごめんね」
と、ルーファスがささやいてきた。
「なんでルーファスが謝るの? 王女様が連れてきたんだから、ルーファスは関係ないのに」
私の言葉に、ルーファスは軽く首を横に振った。
「いや、この前、学園のカフェで、侯爵令嬢を僕があおった結果がこれだから。今後、ララにとって、さらなる害をなす存在になるかどうか、見極めようと思ったからだけど、まさか、こんなに早く動き出すとはね。しかも、王女とひっつくとは想定外だった。友達どころか、どう考えても王女の駒にされて終わりだろうに、考えが足りなくてびっくりだよ……。まあ、向こうの出方次第で、今日で一掃できるから手間も省けるか……」
と、鋭い視線でテーブルの方を見ながら、つぶやいたルーファス。
ルーファスの言葉に、なんだか、毒々しさがまじってる……。
ルーファスの本質は天使なのに、変なことで、その優しい心を悩ませたくはない。
私はあわてて言った。
「あのね、ルーファス。モリナさんが来たのは驚いたけど、別に何を言われようが慣れてるから大丈夫。嘘偽りなく、全く気にならないんだよね。だから、モリナさんのことは、ルーファスは気にしないで。よくわからないけれど、一掃? みたいなことは考えなくてもいいからね」
「ララ、僕のことを思ってくれて、ありがとう。でも、ララこそ、テーブルの向かい側の不快な存在は気にせず、ゆったりお茶を飲んでてね。あとは、全部、僕にまかせて」
そう言って、にっこり笑ったルーファス。
なんだか、私の言っていることが伝わっていないような気がするんだけど……?
そして、ついに全員が席に着いた。
ひだまりのような素敵なテーブルに集まった強烈な個性の人たち。
大きなテーブルをはさんだ向こうには、端から、王子妃、第二王子、王女様、そして、モリナさんが坐っている。
そして、こちら側は、レーナおばさま、ルーファス、私がすわった。
当初の予定では、お茶会に王女様のお付きとして参加する予定だったのは従者のロイスさんだったみたい。
でも、その席にモリナさんがすわったため、ロイスさんは、王女様の背後に立った。
レーナおばさまが、もうひとつ席を追加しようとしたけれど、王女様が「ロイスのことは気にせずとも結構ですわ。護衛として立たせますから」と、にべもなく断った。
その口調は、まさに、そんなことはどうでもいいというような冷たい感じ。
幼馴染って言ってたけれど、ロイスさんへの情とか親しみとか気遣うような雰囲気は全く感じられない。
まあ、パーティーの時も、王女様はロイスさんのことを、尽くしてくれてなんでも言うことを聞いてくれる幼馴染、みたいなことを言っていたもんね。
ふたりの関係性はいつもこうなのかもしれないけれど、当のロイスさんはどう思っているんだろう?
王女様の背後にたつロイスさんを、目立たないように、さりげなく観察してみる。
お付きの人らしく、王女様のまわりに気を配るように視線をめぐらせているロイスさん。
私はその顔から目が離せなくなった。
というのも、整った顔立ちに表情はなく、目が、からっぽのような気がしたから。
よくわからないけれど、まるで大事な何かが失われているような、そんな感じ……。
見れば見るほど、気になってくる。
「ララ、どうかした?」
隣からルーファスが小声で聞いてきた。
あわてて、ロイスさんから目をそらし、「ううん、なんでもない」と答えた私。
その時、レーナおばさまが穏やかな口調で話し出した。
「それでは、皆さま揃われましたので、アンヌ妃殿下主催のお茶会を始めさせていただきます。では、アンヌ様。お言葉をお願いいたします」
レーナおばさまに意気揚々と話しかけたモリナさん。
妙に「お母様」のところが声が大きくなった気がしたけれど、そんな風に呼びかけたりする……?
モリナさんから、ジャリス侯爵家はロイド公爵家と遠い親戚と聞いているから、ずっと、そんな風に呼んできたのかな?
でも、レーナおばさまから、モリナさんの名前もジャリス侯爵家の話ですら聞いたことはなかったから、交流はないと思っていたんだけど、違ってたのかも……。
レーナおばさまが美しい笑みを浮かべて言った。
「確か、ジャリス侯爵家のご令嬢でしたわよね。夜会でお見かけしたことはありますが、きちんとご挨拶をした覚えがないので、失礼ですが、お名前を教えていただいても?」
え、そうだったの?
モリナさんの頬がさっと赤くなった。
そして、何故だか、私をにらんだモリナさん。
「ジャリス侯爵家の娘、モリナと申します……」
「モリナさんね。王女様のお連れさまですから、歓迎しますわ。では、王女様とモリナさん、お席に案内します」
そう言うと、優雅なしぐさで、レーナおばさまがふたりをテーブルのほうへと連れて行く。
「ララ、へんなのが増えてごめんね」
と、ルーファスがささやいてきた。
「なんでルーファスが謝るの? 王女様が連れてきたんだから、ルーファスは関係ないのに」
私の言葉に、ルーファスは軽く首を横に振った。
「いや、この前、学園のカフェで、侯爵令嬢を僕があおった結果がこれだから。今後、ララにとって、さらなる害をなす存在になるかどうか、見極めようと思ったからだけど、まさか、こんなに早く動き出すとはね。しかも、王女とひっつくとは想定外だった。友達どころか、どう考えても王女の駒にされて終わりだろうに、考えが足りなくてびっくりだよ……。まあ、向こうの出方次第で、今日で一掃できるから手間も省けるか……」
と、鋭い視線でテーブルの方を見ながら、つぶやいたルーファス。
ルーファスの言葉に、なんだか、毒々しさがまじってる……。
ルーファスの本質は天使なのに、変なことで、その優しい心を悩ませたくはない。
私はあわてて言った。
「あのね、ルーファス。モリナさんが来たのは驚いたけど、別に何を言われようが慣れてるから大丈夫。嘘偽りなく、全く気にならないんだよね。だから、モリナさんのことは、ルーファスは気にしないで。よくわからないけれど、一掃? みたいなことは考えなくてもいいからね」
「ララ、僕のことを思ってくれて、ありがとう。でも、ララこそ、テーブルの向かい側の不快な存在は気にせず、ゆったりお茶を飲んでてね。あとは、全部、僕にまかせて」
そう言って、にっこり笑ったルーファス。
なんだか、私の言っていることが伝わっていないような気がするんだけど……?
そして、ついに全員が席に着いた。
ひだまりのような素敵なテーブルに集まった強烈な個性の人たち。
大きなテーブルをはさんだ向こうには、端から、王子妃、第二王子、王女様、そして、モリナさんが坐っている。
そして、こちら側は、レーナおばさま、ルーファス、私がすわった。
当初の予定では、お茶会に王女様のお付きとして参加する予定だったのは従者のロイスさんだったみたい。
でも、その席にモリナさんがすわったため、ロイスさんは、王女様の背後に立った。
レーナおばさまが、もうひとつ席を追加しようとしたけれど、王女様が「ロイスのことは気にせずとも結構ですわ。護衛として立たせますから」と、にべもなく断った。
その口調は、まさに、そんなことはどうでもいいというような冷たい感じ。
幼馴染って言ってたけれど、ロイスさんへの情とか親しみとか気遣うような雰囲気は全く感じられない。
まあ、パーティーの時も、王女様はロイスさんのことを、尽くしてくれてなんでも言うことを聞いてくれる幼馴染、みたいなことを言っていたもんね。
ふたりの関係性はいつもこうなのかもしれないけれど、当のロイスさんはどう思っているんだろう?
王女様の背後にたつロイスさんを、目立たないように、さりげなく観察してみる。
お付きの人らしく、王女様のまわりに気を配るように視線をめぐらせているロイスさん。
私はその顔から目が離せなくなった。
というのも、整った顔立ちに表情はなく、目が、からっぽのような気がしたから。
よくわからないけれど、まるで大事な何かが失われているような、そんな感じ……。
見れば見るほど、気になってくる。
「ララ、どうかした?」
隣からルーファスが小声で聞いてきた。
あわてて、ロイスさんから目をそらし、「ううん、なんでもない」と答えた私。
その時、レーナおばさまが穏やかな口調で話し出した。
「それでは、皆さま揃われましたので、アンヌ妃殿下主催のお茶会を始めさせていただきます。では、アンヌ様。お言葉をお願いいたします」
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