上 下
28 / 63

どうしたの?

しおりを挟む
その後、パーティーは途中だったけれど、両親に連れられて、すぐに帰った私。
さすがに色々あって疲れたけれど、ぐっすり眠ったら、翌朝はしゃっきり回復。

お茶会に向けて、闘志がみなぎってきた!

ということで、元気に学園に行こうとしたら、いつもうちの馬車が止まっているところに、なぜか、立派な馬車がとまっていた。

「おはよう、ララ」
と、馬車からおりてきたのはルーファスだ。

「え、ルーファス? おはよう! ……どうしたの?」

「ララをむかえにきたんだ」

そう言って、甘やかに微笑んできたルーファス。

驚く私の手をとり、ぴったり寄り添うようにして、「そのバッグ、僕が持つから」「ほら、足、気をつけて」とか、過保護モード全開で私の世話をやく。

なすがまま、ふっかふかの座席にすわったとたん、馬車がなめらかに動き出した。
真向かいに坐って、微笑みながら私を見つめるルーファスは、窓から差し込む朝日で輝いていて、いつも以上に、天使感が増している。
私はまぶしさに目を細めながら、聞いてみた。

「ええと、ルーファス……。今朝は、なんで、わざわざ迎えにきてくれたの……?」

「あの王女が、この国にいる間は、ララの学園への送り迎えは僕がするよ。ララのご両親にも承諾してもらってるから」

「え……? でも、ルーファスのところからだと、遠回りになるのに。私は大丈夫だよ」

「いや、僕が心配で、全然大丈夫じゃないから。だから、そうさせて。それと、ララ、昨日はパーティーで嫌な思いをさせてごめん」

「ちょっと、なんで、ルーファスがあやまるの? っていうか、私のほうが、ルーファスにお礼を言わなきゃだよ。ルーファスとルーファスのご両親のおかげで、本当に助かったから。ルーファス、あの時、そばにいてくれてありがとう」

私の言葉にルーファスが首を横にふった。

「いや、僕の判断ミスだ。あの王女を甘く見すぎてた。ララに王女を接触させないですむよう、この1週間、ララと会うのを我慢してたんだ。それでパーティーもやりすごせると思ってた。でも、昨日の王女の様子を見たら、どうやら、あの第二王子と一緒に……というか、第二王子を従えて何か企んでいるようにしか思えない。しかも、やけにララに絡んでいくのも気になる」

「あ、ルーファスもそう思ったんだ。私も何か企んでそうに思ったんだよね。それに、ひきこもっていた王子妃が、いきなりお茶会を開きたいと思うのかってことも気になるし……」

「王子妃のほうは、とりあえず、母に任せてみようと思う」

「レーナおばさまに?」

「ほら、国王の命で母が茶会を手伝うことになっただろう? 打ち合わせをしないといけないから、茶会の前に話す機会を作るって言ってた。少し話せば、なにかわかると思うよ」

「でも、レーナおばさまは大丈夫なの? 今の王子妃が、一体、どんな考えを持ってるかわからないから、すごく心配なんだけど……」

「ああ、それなら、心配しないで。打ち合わせっていっても、母が第二王子の屋敷に行くことはないから。それに、王子妃とふたりだけで会うこともない。母にとって安全な場所でしか会わないから」

「それなら、良かった……! まあ、でも、王女様が何を企んでようが、お茶会の場所がルーファスのお屋敷に変わったから、変なことはできないよね。守りはばっちりだし。第二王子の屋敷なんて絶対に足を踏み入れたくないから、ロイド公爵様が提案してくれて、本当に良かった」

私の言葉に、ルーファスの紫色の瞳がゆれた。
なんだか、悔しそう……。

「本当はララをこんなことに巻き込みたくなかったんだ……。でも、親ばかの国王があんなことを言いだした以上、あの状況下では父の案でのりきるしかない。あとで、父に怒られたんだ。ララを隠すだけでは守れないって。敵をおびきよせて、つぶすくらいの気概を見せろ。臆病になるなって」

「え……? ロイド公爵様って、そんなこと言いそうにないから、びっくりした……。いつ会っても、にこにこしていて、優しいから」

「優しい? ララには好かれようとして本性隠してるからね」

「本性って、頼りがいあるってことでしょう。親しみやすいし、素敵な方だと思う」

「へえ。ララにはああいう感じが素敵に見えるんだ……ふーん、そうなんだ……」

そう言うと、美しい笑みを浮かべて、私をじっと見つめてきたルーファス。
顔は微笑んでるのに、なんだか、馬車の中がひんやりしてきた感じがするんだけど……。

なんて考えている間に、馬車は学園に到着した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

王命で泣く泣く番と決められ、婚姻後すぐに捨てられました。

ゆうぎり
恋愛
獣人の女の子は夢に見るのです。 自分を見つけ探し出してくれる番が現れるのを。 獣人王国の27歳の王太子が番探しを諦めました。 15歳の私は、まだ番に見つけてもらえる段階ではありませんでした。 しかし、王命で輿入れが決まりました。 泣く泣く運命の番を諦めたのです。 それなのに、それなのに……あんまりです。 ※ゆるゆる設定です。

【完結】私の番には飼い主がいる

堀 和三盆
恋愛
 獣人には番と呼ばれる、生まれながらに決められた伴侶がどこかにいる。番が番に持つ愛情は深く、出会ったが最後その相手しか愛せない。  私――猫獣人のフルールも幼馴染で同じ猫獣人であるヴァイスが番であることになんとなく気が付いていた。精神と体の成長と共に、少しずつお互いの番としての自覚が芽生え、信頼関係と愛情を同時に育てていくことが出来る幼馴染の番は理想的だと言われている。お互いがお互いだけを愛しながら、選択を間違えることなく人生の多くを共に過ごせるのだから。  だから、わたしもツイていると、幸せになれると思っていた。しかし――全てにおいて『番』が優先される獣人社会。その中で唯一その序列を崩す例外がある。 『飼い主』の存在だ。  獣の本性か、人間としての理性か。獣人は受けた恩を忘れない。特に命を助けられたりすると、恩を返そうと相手に忠誠を尽くす。まるで、騎士が主に剣を捧げるように。命を助けられた獣人は飼い主に忠誠を尽くすのだ。  この世界においての飼い主は番の存在を脅かすことはない。ただし――。ごく稀に前世の記憶を持って産まれてくる獣人がいる。そして、アチラでは飼い主が庇護下にある獣の『番』を選ぶ権限があるのだそうだ。  例え生まれ変わっても。飼い主に忠誠を誓った獣人は飼い主に許可をされないと番えない。  そう。私の番は前世持ち。  そして。 ―――『私の番には飼い主がいる』

この度めでたく番が現れまして離婚しました。

あかね
恋愛
番の習性がある獣人と契約婚をしていた鈴音(すずね)は、ある日離婚を申し渡される。番が現れたから離婚。予定通りである。しかし、そのまま叩き出されるには問題がある。旦那様、ちゃんと払うもん払ってください! そういったら現れたのは旦那様ではなく、離婚弁護士で。よし、搾れるだけ絞ってやる!と闘志に燃える鈴音と猫の話。

竜人の王である夫に運命の番が見つかったので離婚されました。結局再婚いたしますが。

重田いの
恋愛
竜人族は少子化に焦っていた。彼らは卵で産まれるのだが、その卵はなかなか孵化しないのだ。 少子化を食い止める鍵はたったひとつ! 運命の番様である! 番様と番うと、竜人族であっても卵ではなく子供が産まれる。悲劇を回避できるのだ……。 そして今日、王妃ファニアミリアの夫、王レヴニールに運命の番が見つかった。 離婚された王妃が、結局元サヤ再婚するまでのすったもんだのお話。 翼と角としっぽが生えてるタイプの竜人なので苦手な方はお気をつけて~。

【完結】そう、番だったら別れなさい

堀 和三盆
恋愛
 ラシーヌは狼獣人でライフェ侯爵家の一人娘。番である両親に憧れていて、番との婚姻を完全に諦めるまでは異性との交際は控えようと思っていた。  しかし、ある日を境に母親から異性との交際をしつこく勧められるようになり、仕方なく幼馴染で猫獣人のファンゲンに恋人のふりを頼むことに。彼の方にも事情があり、お互いの利害が一致したことから二人の嘘の交際が始まった。  そして二人が成長すると、なんと偽の恋人役を頼んだ幼馴染のファンゲンから番の気配を感じるようになり、幼馴染が大好きだったラシーヌは大喜び。早速母親に、 『お付き合いしている幼馴染のファンゲンが私の番かもしれない』――と報告するのだが。 「そう、番だったら別れなさい」  母親からの返答はラシーヌには受け入れ難いものだった。  お母様どうして!?  何で運命の番と別れなくてはいけないの!?

君は僕の番じゃないから

椎名さえら
恋愛
男女に番がいる、番同士は否応なしに惹かれ合う世界。 「君は僕の番じゃないから」 エリーゼは隣人のアーヴィンが子供の頃から好きだったが エリーゼは彼の番ではなかったため、フラれてしまった。 すると 「君こそ俺の番だ!」と突然接近してくる イケメンが登場してーーー!? ___________________________ 動機。 暗い話を書くと反動で明るい話が書きたくなります なので明るい話になります← 深く考えて読む話ではありません ※マーク編:3話+エピローグ ※超絶短編です ※さくっと読めるはず ※番の設定はゆるゆるです ※世界観としては割と近代チック ※ルーカス編思ったより明るくなかったごめんなさい ※マーク編は明るいです

番は君なんだと言われ王宮で溺愛されています

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私ミーシャ・ラクリマ男爵令嬢は、家の借金の為コッソリと王宮でメイドとして働いています。基本は王宮内のお掃除ですが、人手が必要な時には色々な所へ行きお手伝いします。そんな中私を番だと言う人が現れた。えっ、あなたって!? 貧乏令嬢が番と幸せになるまでのすれ違いを書いていきます。 愛の花第2弾です。前の話を読んでいなくても、単体のお話として読んで頂けます。

【完結】愛されないと知った時、私は

yanako
恋愛
私は聞いてしまった。 彼の本心を。 私は小さな、けれど豊かな領地を持つ、男爵家の娘。 父が私の結婚相手を見つけてきた。 隣の領地の次男の彼。 幼馴染というほど親しくは無いけれど、素敵な人だと思っていた。 そう、思っていたのだ。

処理中です...