21 / 62
2度目
しおりを挟む
第二王子がいるかと思うと、あの広間に戻りたくない。
でも、ずっと廊下にいるわけにもいかない。まあ、王女様のあたりに、王族の方々もいるから、そこらへんに近づかなければ大丈夫だろうけど……。
とりあえず、ルーファスに付き添われ、重い足取りで歩き始めると、ルーファスが真剣な声で私に言った。
「ごめんね、ララ。今日は、ララの近くにいられないんだ。本当はこのままふたりで一緒に帰りたいところだけど、そういうわけにはいかなくて……。ララ、広間に戻ったら、念のため、ご両親か、アイリスとグレンと一緒にいて。ひとりにはならないで。それと、ジャナ国の王女には絶対に近寄らないで」
「お父様にもアイリスにも同じこと言われた」
「さすが、勘のいいふたりだね。あの王女、純血の竜の獣人だから、特種な力をもってるのは間違いない。どんな能力があるのか、正直、僕もまだ把握しきれていないんだ。ララにとって危険かどうかわからないから、用心のためにも、ララには近づいてほしくない」
「うん、わかった。心配してくれてありがとう。気をつける。それと、ルーファス。無理しないでね」
「はあ、ララと話せたら、この一週間の疲れが一瞬で癒された……。でも、この面倒な仕事も今日で終わりだから、ご褒美に、ララとどっか遊びに行きたい。一緒に行ってくれる?」
ルーファスが私の顔をのぞきこんできた。
私に頼みごとをするときの、小さい頃のルーファスを思い出して、思わず、顔がゆるむ。
こんな天使みたいな顔でお願いされたら断れないもんね!
「うん、もちろん! じゃあ、ピクニックは? ルーファスの好きな食べ物をいっぱいつめたお弁当を持って一緒に行こうよ」
と言ったら、ルーファスがとろけそうな笑顔で、うなずいた。
「楽しみにしてる、ララ」
「私も!」
あ、そうだ! ピスタチオのマカロンもいっぱい持っていこう!
ルーファス、好きだもんね。
アイリスとグレンも誘って、湖もいいなあ。なんて考え出すと、わくわくしてきた。
第二王子のせいで重苦しかった気分が、一気に楽になってきた。
廊下を話しながら歩いていたら、あっというまにパーティーが行われている広間の扉が見えてきた。
ルーファスの指示で、私たちは別々に広間に戻ることになった。
まず先に私がひとりで広間に入り、少し間をあけて、ルーファスが別の離れた扉から戻るみたい。
「さすがに用心しすぎじゃない?」と聞いたら、「ララに関係することなら、用心しすぎることなんてないよ。だから、僕がさっき言ったこと、絶対守ってね、ララ」と、真顔で言われた。
いつも以上に、過保護なルーファスになっているから、これ以上心配させないよう、おとなしく言われた通りにする。
ということで、廊下でルーファスと別れ、他の人に紛れるようにして、先に私だけが広間に戻った。
が、広間に入った瞬間、ぎょっとして、思わず足がとまった。
というのも、何故か、王女様と第二王子が扉のすぐ近くに立ち、ふたりで話していたから。
王女様は広間でも奥のほうにいたはず。
王族である第二王子も。
近寄ってはいけないとされている王女様と、絶対に近寄りたくない第二王子。
私にとったら、最悪のふたりが至近距離にいる……。
なんで!?
とりあえず、目立たないように、私はさっと頭をさげて、他の人の後ろに隠れるようにして、さーっと通りすぎていこうとしたら、「そこのあなた、ちょっと待って」と声をかけられた。
すごい威厳のある声。
王女様だ……。
が、さすがに私じゃないよね?
うん、そう思いたい……。
ということで、前の人たちにまぎれるようにして、頭を下げたまま歩き続けようとしたら、「マイリ侯爵令嬢。そなたのことだ」と、名指しで呼ばれた。
しかも、この声って……また、第二王子!?
私になんの恨みがあるの? っていうか、恨みがあるのは、私のほうなんだけど!
本当に最悪の日だわ……。
仮にも王族に名指しされた以上、立ち止まらざるを得ない。
「一体、なにごと?」という感じで、まわりの人たちの視線が一気に私に集中する。
そして、近づいてくるふたりの足音。
なんで、こっちへくるの?
王女様に近づかないよう、みんなに注意されていたけれど、近づいてくるのは避けられないよね?
なんて考えていたら、王女様と思われる足がもう目の前にあった。
「顔をあげて」
と、言われたら、これまた、あげないわけにはいかない。
しかも、このパターン、今日、2度目だけど……。
しぶしぶ顔をあげる。
ちびっこの私を見下ろすように立っている背の高い王女様。
あまりの眼光の鋭さに、ぞくりとした。
なんだか、穴があくほど見られてるよね、私……。
でも、ずっと廊下にいるわけにもいかない。まあ、王女様のあたりに、王族の方々もいるから、そこらへんに近づかなければ大丈夫だろうけど……。
とりあえず、ルーファスに付き添われ、重い足取りで歩き始めると、ルーファスが真剣な声で私に言った。
「ごめんね、ララ。今日は、ララの近くにいられないんだ。本当はこのままふたりで一緒に帰りたいところだけど、そういうわけにはいかなくて……。ララ、広間に戻ったら、念のため、ご両親か、アイリスとグレンと一緒にいて。ひとりにはならないで。それと、ジャナ国の王女には絶対に近寄らないで」
「お父様にもアイリスにも同じこと言われた」
「さすが、勘のいいふたりだね。あの王女、純血の竜の獣人だから、特種な力をもってるのは間違いない。どんな能力があるのか、正直、僕もまだ把握しきれていないんだ。ララにとって危険かどうかわからないから、用心のためにも、ララには近づいてほしくない」
「うん、わかった。心配してくれてありがとう。気をつける。それと、ルーファス。無理しないでね」
「はあ、ララと話せたら、この一週間の疲れが一瞬で癒された……。でも、この面倒な仕事も今日で終わりだから、ご褒美に、ララとどっか遊びに行きたい。一緒に行ってくれる?」
ルーファスが私の顔をのぞきこんできた。
私に頼みごとをするときの、小さい頃のルーファスを思い出して、思わず、顔がゆるむ。
こんな天使みたいな顔でお願いされたら断れないもんね!
「うん、もちろん! じゃあ、ピクニックは? ルーファスの好きな食べ物をいっぱいつめたお弁当を持って一緒に行こうよ」
と言ったら、ルーファスがとろけそうな笑顔で、うなずいた。
「楽しみにしてる、ララ」
「私も!」
あ、そうだ! ピスタチオのマカロンもいっぱい持っていこう!
ルーファス、好きだもんね。
アイリスとグレンも誘って、湖もいいなあ。なんて考え出すと、わくわくしてきた。
第二王子のせいで重苦しかった気分が、一気に楽になってきた。
廊下を話しながら歩いていたら、あっというまにパーティーが行われている広間の扉が見えてきた。
ルーファスの指示で、私たちは別々に広間に戻ることになった。
まず先に私がひとりで広間に入り、少し間をあけて、ルーファスが別の離れた扉から戻るみたい。
「さすがに用心しすぎじゃない?」と聞いたら、「ララに関係することなら、用心しすぎることなんてないよ。だから、僕がさっき言ったこと、絶対守ってね、ララ」と、真顔で言われた。
いつも以上に、過保護なルーファスになっているから、これ以上心配させないよう、おとなしく言われた通りにする。
ということで、廊下でルーファスと別れ、他の人に紛れるようにして、先に私だけが広間に戻った。
が、広間に入った瞬間、ぎょっとして、思わず足がとまった。
というのも、何故か、王女様と第二王子が扉のすぐ近くに立ち、ふたりで話していたから。
王女様は広間でも奥のほうにいたはず。
王族である第二王子も。
近寄ってはいけないとされている王女様と、絶対に近寄りたくない第二王子。
私にとったら、最悪のふたりが至近距離にいる……。
なんで!?
とりあえず、目立たないように、私はさっと頭をさげて、他の人の後ろに隠れるようにして、さーっと通りすぎていこうとしたら、「そこのあなた、ちょっと待って」と声をかけられた。
すごい威厳のある声。
王女様だ……。
が、さすがに私じゃないよね?
うん、そう思いたい……。
ということで、前の人たちにまぎれるようにして、頭を下げたまま歩き続けようとしたら、「マイリ侯爵令嬢。そなたのことだ」と、名指しで呼ばれた。
しかも、この声って……また、第二王子!?
私になんの恨みがあるの? っていうか、恨みがあるのは、私のほうなんだけど!
本当に最悪の日だわ……。
仮にも王族に名指しされた以上、立ち止まらざるを得ない。
「一体、なにごと?」という感じで、まわりの人たちの視線が一気に私に集中する。
そして、近づいてくるふたりの足音。
なんで、こっちへくるの?
王女様に近づかないよう、みんなに注意されていたけれど、近づいてくるのは避けられないよね?
なんて考えていたら、王女様と思われる足がもう目の前にあった。
「顔をあげて」
と、言われたら、これまた、あげないわけにはいかない。
しかも、このパターン、今日、2度目だけど……。
しぶしぶ顔をあげる。
ちびっこの私を見下ろすように立っている背の高い王女様。
あまりの眼光の鋭さに、ぞくりとした。
なんだか、穴があくほど見られてるよね、私……。
720
お気に入りに追加
1,984
あなたにおすすめの小説
竜人の王である夫に運命の番が見つかったので離婚されました。結局再婚いたしますが。
重田いの
恋愛
竜人族は少子化に焦っていた。彼らは卵で産まれるのだが、その卵はなかなか孵化しないのだ。
少子化を食い止める鍵はたったひとつ! 運命の番様である!
番様と番うと、竜人族であっても卵ではなく子供が産まれる。悲劇を回避できるのだ……。
そして今日、王妃ファニアミリアの夫、王レヴニールに運命の番が見つかった。
離婚された王妃が、結局元サヤ再婚するまでのすったもんだのお話。
翼と角としっぽが生えてるタイプの竜人なので苦手な方はお気をつけて~。
何を間違った?【完結済】
maruko
恋愛
私は長年の婚約者に婚約破棄を言い渡す。
彼女とは1年前から連絡が途絶えてしまっていた。
今真実を聞いて⋯⋯。
愚かな私の後悔の話
※作者の妄想の産物です
他サイトでも投稿しております
【完結】番が見つかった恋人に今日も溺愛されてますっ…何故っ!?
ハリエニシダ・レン
恋愛
大好きな恋人に番が見つかった。
当然のごとく別れて、彼は私の事など綺麗さっぱり忘れて番といちゃいちゃ幸せに暮らし始める……
と思っていたのに…!??
狼獣人×ウサギ獣人。
※安心のR15仕様。
-----
主人公サイドは切なくないのですが、番サイドがちょっと切なくなりました。予定外!
君は僕の番じゃないから
椎名さえら
恋愛
男女に番がいる、番同士は否応なしに惹かれ合う世界。
「君は僕の番じゃないから」
エリーゼは隣人のアーヴィンが子供の頃から好きだったが
エリーゼは彼の番ではなかったため、フラれてしまった。
すると
「君こそ俺の番だ!」と突然接近してくる
イケメンが登場してーーー!?
___________________________
動機。
暗い話を書くと反動で明るい話が書きたくなります
なので明るい話になります←
深く考えて読む話ではありません
※マーク編:3話+エピローグ
※超絶短編です
※さくっと読めるはず
※番の設定はゆるゆるです
※世界観としては割と近代チック
※ルーカス編思ったより明るくなかったごめんなさい
※マーク編は明るいです
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
【完結】え、別れましょう?
須木 水夏
恋愛
「実は他に好きな人が出来て」
「は?え?別れましょう?」
何言ってんだこいつ、とアリエットは目を瞬かせながらも。まあこちらも好きな訳では無いし都合がいいわ、と長年の婚約者(腐れ縁)だったディオルにお別れを申し出た。
ところがその出来事の裏側にはある双子が絡んでいて…?
だる絡みをしてくる美しい双子の兄妹(?)と、のんびりかつ冷静なアリエットのお話。
※毎度ですが空想であり、架空のお話です。史実に全く関係ありません。
ヨーロッパの雰囲気出してますが、別物です。
【完結】私の番には飼い主がいる
堀 和三盆
恋愛
獣人には番と呼ばれる、生まれながらに決められた伴侶がどこかにいる。番が番に持つ愛情は深く、出会ったが最後その相手しか愛せない。
私――猫獣人のフルールも幼馴染で同じ猫獣人であるヴァイスが番であることになんとなく気が付いていた。精神と体の成長と共に、少しずつお互いの番としての自覚が芽生え、信頼関係と愛情を同時に育てていくことが出来る幼馴染の番は理想的だと言われている。お互いがお互いだけを愛しながら、選択を間違えることなく人生の多くを共に過ごせるのだから。
だから、わたしもツイていると、幸せになれると思っていた。しかし――全てにおいて『番』が優先される獣人社会。その中で唯一その序列を崩す例外がある。
『飼い主』の存在だ。
獣の本性か、人間としての理性か。獣人は受けた恩を忘れない。特に命を助けられたりすると、恩を返そうと相手に忠誠を尽くす。まるで、騎士が主に剣を捧げるように。命を助けられた獣人は飼い主に忠誠を尽くすのだ。
この世界においての飼い主は番の存在を脅かすことはない。ただし――。ごく稀に前世の記憶を持って産まれてくる獣人がいる。そして、アチラでは飼い主が庇護下にある獣の『番』を選ぶ権限があるのだそうだ。
例え生まれ変わっても。飼い主に忠誠を誓った獣人は飼い主に許可をされないと番えない。
そう。私の番は前世持ち。
そして。
―――『私の番には飼い主がいる』
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる