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2度目
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第二王子がいるかと思うと、あの広間に戻りたくない。
でも、ずっと廊下にいるわけにもいかない。まあ、王女様のあたりに、王族の方々もいるから、そこらへんに近づかなければ大丈夫だろうけど……。
とりあえず、ルーファスに付き添われ、重い足取りで歩き始めると、ルーファスが真剣な声で私に言った。
「ごめんね、ララ。今日は、ララの近くにいられないんだ。本当はこのままふたりで一緒に帰りたいところだけど、そういうわけにはいかなくて……。ララ、広間に戻ったら、念のため、ご両親か、アイリスとグレンと一緒にいて。ひとりにはならないで。それと、ジャナ国の王女には絶対に近寄らないで」
「お父様にもアイリスにも同じこと言われた」
「さすが、勘のいいふたりだね。あの王女、純血の竜の獣人だから、特種な力をもってるのは間違いない。どんな能力があるのか、正直、僕もまだ把握しきれていないんだ。ララにとって危険かどうかわからないから、用心のためにも、ララには近づいてほしくない」
「うん、わかった。心配してくれてありがとう。気をつける。それと、ルーファス。無理しないでね」
「はあ、ララと話せたら、この一週間の疲れが一瞬で癒された……。でも、この面倒な仕事も今日で終わりだから、ご褒美に、ララとどっか遊びに行きたい。一緒に行ってくれる?」
ルーファスが私の顔をのぞきこんできた。
私に頼みごとをするときの、小さい頃のルーファスを思い出して、思わず、顔がゆるむ。
こんな天使みたいな顔でお願いされたら断れないもんね!
「うん、もちろん! じゃあ、ピクニックは? ルーファスの好きな食べ物をいっぱいつめたお弁当を持って一緒に行こうよ」
と言ったら、ルーファスがとろけそうな笑顔で、うなずいた。
「楽しみにしてる、ララ」
「私も!」
あ、そうだ! ピスタチオのマカロンもいっぱい持っていこう!
ルーファス、好きだもんね。
アイリスとグレンも誘って、湖もいいなあ。なんて考え出すと、わくわくしてきた。
第二王子のせいで重苦しかった気分が、一気に楽になってきた。
廊下を話しながら歩いていたら、あっというまにパーティーが行われている広間の扉が見えてきた。
ルーファスの指示で、私たちは別々に広間に戻ることになった。
まず先に私がひとりで広間に入り、少し間をあけて、ルーファスが別の離れた扉から戻るみたい。
「さすがに用心しすぎじゃない?」と聞いたら、「ララに関係することなら、用心しすぎることなんてないよ。だから、僕がさっき言ったこと、絶対守ってね、ララ」と、真顔で言われた。
いつも以上に、過保護なルーファスになっているから、これ以上心配させないよう、おとなしく言われた通りにする。
ということで、廊下でルーファスと別れ、他の人に紛れるようにして、先に私だけが広間に戻った。
が、広間に入った瞬間、ぎょっとして、思わず足がとまった。
というのも、何故か、王女様と第二王子が扉のすぐ近くに立ち、ふたりで話していたから。
王女様は広間でも奥のほうにいたはず。
王族である第二王子も。
近寄ってはいけないとされている王女様と、絶対に近寄りたくない第二王子。
私にとったら、最悪のふたりが至近距離にいる……。
なんで!?
とりあえず、目立たないように、私はさっと頭をさげて、他の人の後ろに隠れるようにして、さーっと通りすぎていこうとしたら、「そこのあなた、ちょっと待って」と声をかけられた。
すごい威厳のある声。
王女様だ……。
が、さすがに私じゃないよね?
うん、そう思いたい……。
ということで、前の人たちにまぎれるようにして、頭を下げたまま歩き続けようとしたら、「マイリ侯爵令嬢。そなたのことだ」と、名指しで呼ばれた。
しかも、この声って……また、第二王子!?
私になんの恨みがあるの? っていうか、恨みがあるのは、私のほうなんだけど!
本当に最悪の日だわ……。
仮にも王族に名指しされた以上、立ち止まらざるを得ない。
「一体、なにごと?」という感じで、まわりの人たちの視線が一気に私に集中する。
そして、近づいてくるふたりの足音。
なんで、こっちへくるの?
王女様に近づかないよう、みんなに注意されていたけれど、近づいてくるのは避けられないよね?
なんて考えていたら、王女様と思われる足がもう目の前にあった。
「顔をあげて」
と、言われたら、これまた、あげないわけにはいかない。
しかも、このパターン、今日、2度目だけど……。
しぶしぶ顔をあげる。
ちびっこの私を見下ろすように立っている背の高い王女様。
あまりの眼光の鋭さに、ぞくりとした。
なんだか、穴があくほど見られてるよね、私……。
でも、ずっと廊下にいるわけにもいかない。まあ、王女様のあたりに、王族の方々もいるから、そこらへんに近づかなければ大丈夫だろうけど……。
とりあえず、ルーファスに付き添われ、重い足取りで歩き始めると、ルーファスが真剣な声で私に言った。
「ごめんね、ララ。今日は、ララの近くにいられないんだ。本当はこのままふたりで一緒に帰りたいところだけど、そういうわけにはいかなくて……。ララ、広間に戻ったら、念のため、ご両親か、アイリスとグレンと一緒にいて。ひとりにはならないで。それと、ジャナ国の王女には絶対に近寄らないで」
「お父様にもアイリスにも同じこと言われた」
「さすが、勘のいいふたりだね。あの王女、純血の竜の獣人だから、特種な力をもってるのは間違いない。どんな能力があるのか、正直、僕もまだ把握しきれていないんだ。ララにとって危険かどうかわからないから、用心のためにも、ララには近づいてほしくない」
「うん、わかった。心配してくれてありがとう。気をつける。それと、ルーファス。無理しないでね」
「はあ、ララと話せたら、この一週間の疲れが一瞬で癒された……。でも、この面倒な仕事も今日で終わりだから、ご褒美に、ララとどっか遊びに行きたい。一緒に行ってくれる?」
ルーファスが私の顔をのぞきこんできた。
私に頼みごとをするときの、小さい頃のルーファスを思い出して、思わず、顔がゆるむ。
こんな天使みたいな顔でお願いされたら断れないもんね!
「うん、もちろん! じゃあ、ピクニックは? ルーファスの好きな食べ物をいっぱいつめたお弁当を持って一緒に行こうよ」
と言ったら、ルーファスがとろけそうな笑顔で、うなずいた。
「楽しみにしてる、ララ」
「私も!」
あ、そうだ! ピスタチオのマカロンもいっぱい持っていこう!
ルーファス、好きだもんね。
アイリスとグレンも誘って、湖もいいなあ。なんて考え出すと、わくわくしてきた。
第二王子のせいで重苦しかった気分が、一気に楽になってきた。
廊下を話しながら歩いていたら、あっというまにパーティーが行われている広間の扉が見えてきた。
ルーファスの指示で、私たちは別々に広間に戻ることになった。
まず先に私がひとりで広間に入り、少し間をあけて、ルーファスが別の離れた扉から戻るみたい。
「さすがに用心しすぎじゃない?」と聞いたら、「ララに関係することなら、用心しすぎることなんてないよ。だから、僕がさっき言ったこと、絶対守ってね、ララ」と、真顔で言われた。
いつも以上に、過保護なルーファスになっているから、これ以上心配させないよう、おとなしく言われた通りにする。
ということで、廊下でルーファスと別れ、他の人に紛れるようにして、先に私だけが広間に戻った。
が、広間に入った瞬間、ぎょっとして、思わず足がとまった。
というのも、何故か、王女様と第二王子が扉のすぐ近くに立ち、ふたりで話していたから。
王女様は広間でも奥のほうにいたはず。
王族である第二王子も。
近寄ってはいけないとされている王女様と、絶対に近寄りたくない第二王子。
私にとったら、最悪のふたりが至近距離にいる……。
なんで!?
とりあえず、目立たないように、私はさっと頭をさげて、他の人の後ろに隠れるようにして、さーっと通りすぎていこうとしたら、「そこのあなた、ちょっと待って」と声をかけられた。
すごい威厳のある声。
王女様だ……。
が、さすがに私じゃないよね?
うん、そう思いたい……。
ということで、前の人たちにまぎれるようにして、頭を下げたまま歩き続けようとしたら、「マイリ侯爵令嬢。そなたのことだ」と、名指しで呼ばれた。
しかも、この声って……また、第二王子!?
私になんの恨みがあるの? っていうか、恨みがあるのは、私のほうなんだけど!
本当に最悪の日だわ……。
仮にも王族に名指しされた以上、立ち止まらざるを得ない。
「一体、なにごと?」という感じで、まわりの人たちの視線が一気に私に集中する。
そして、近づいてくるふたりの足音。
なんで、こっちへくるの?
王女様に近づかないよう、みんなに注意されていたけれど、近づいてくるのは避けられないよね?
なんて考えていたら、王女様と思われる足がもう目の前にあった。
「顔をあげて」
と、言われたら、これまた、あげないわけにはいかない。
しかも、このパターン、今日、2度目だけど……。
しぶしぶ顔をあげる。
ちびっこの私を見下ろすように立っている背の高い王女様。
あまりの眼光の鋭さに、ぞくりとした。
なんだか、穴があくほど見られてるよね、私……。
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