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第二王子を前に、わきあがる腹立たしさをこらえるようにして、私は無理やり頭をさげた。
「顔をあげよ」
これまた、あげたくはないけれど、あげないわけにはいかない。
ギギギっと音がでそうなほど、力が入った状態で、なんとか頭をあげた私。
逃げるのは嫌なので、せめても、瞳に全力をこめて、にらみつける。
「そなたはミナリアの親戚のマイリ侯爵家の令嬢だったな。ほお……。前に会った時はまだ小さかったが、こうやって成長すると、やはり、ミナリアと似たところがある。懐かしいな……」
じとっとした目で顔をなめまわすように見られて、思わず鳥肌がたった。
「なあ、ミナリアはライナ国に住んでいるんだろう? その……ミナリアは元気なのか?」
は……? 嘘でしょ?
そんなことを聞ける権利が自分にあると思ってるんだろうか?
その無神経さに、ふつふつと怒りがこみあげる。
すぐにでも、靴をぬいで、なげつけたい衝動にかられてきた。
今なら、目の前に立っているし、確実にあてられる。
が、さすがの私でも、この王宮でそんな暴挙にでたら、大惨事になることくらいの理性は残っている。
とりあえず、腹立たしいけれど、ミナリア姉さまの尊厳にかけてでも、ここは笑顔ではっきり断言しておかねば!
「はい。とても元気で、幸せに暮らしております」
第二王子とはまるで違って、それはそれは素敵な旦那様ですからね……と心の中でつけ加えておく。
すると、「そうか……」と言って、何故か傷ついたような顔をした第二王子。
その瞬間、かっと火が付いたように怒りがふきあがった。
なに、その顔!? なんで、そんな顔をするの!?
そんな顔をする資格なんてない! と、叫びそうになるのを、なんとか飲み込んだ私。
考えるのも嫌だけれど、もしかして、今更、ミナリア姉さまのすばらしさに気づいたとか、バカなことを言いださないよね……?
と思った矢先、すがるような気持ちの悪い目を私に向けて、言った。
「マイリ侯爵令嬢。そなたはミナリアと仲がいいんだろう? 頼む! こっそり、ミナリアに連絡をとってほしい」
「はあ!?」
今度こそ、あきれた声がもれだしてしまった。
不敬であろうが、しょうがないよね。だって、ありえないことを耳にしたんだから。
「そんなこと、できません! 失礼します!」
叫ぶようにそう言い放ち、急いで、第二王子から離れようとした瞬間、腕をつかまれた。
「ミナリアと話しがしたいんだ!」
「離してください!」
「ミナリアにとってもいいことなんだ。だから、頼む! ミナリアに連絡をしてくれ!」
ものすごい力でひっぱられて、腕が痛い。
でも、それよりも、これは、さっきから、何、勝手なことを言っているの!?
心の方が怒りでどうにかなりそうなんだけど!
その時だ。
「ガイガー王子!」
ルーファスの鋭い声がした。
ものすごい速さで近づいて来たルーファス。私の腕をつかむ第二王子の手を叩き落し、私の姿を隠すようにして前にたった。
ルーファスの背中にかばわれて、一気に力が抜ける。
怒り、悔しさ、緊張、自分の無力さがごちゃまぜになってこみあげてきて、涙で目の前がにじんだ。
「ララに……マイリ侯爵令嬢に何をするんですか!?」
「ミナリアのことを聞いただけだ」
「それなら私に聞いてくださればいいでしょう!?」
「おまえらに聞いても、ミナリアのことは教えてはくれないだろうが。それに、ルーファス! なんで、おまえに指図されねばならない! 俺は王子で、おまえは、たかだか公爵家の息子だぞ!? それに、マイリ侯爵令嬢は、おまえの婚約者でもなんでもないだろうが! おまえが横から口だすことではない!」
声を荒げる第二王子。
王宮の護衛の方たちが近づいてくるが、王子相手なので手出しができず、ただ様子を伺っているよう。
「大事な幼馴染です」
ルーファスが第二王子に強い口調で言い返した。
そんなルーファスを見て、鼻で笑った第二王子。
「ほお……。まわりの者に優秀だとおだてられて、いい気になってるおまえでも、そんな余裕のない顔をするんだな? たかが話しかけただけで、なんだ、その殺気は……。そんなにこの子が大事か? まさか番か?」
「違います」
ルーファスが淡々とした声で答えた。
が、次の瞬間、いきなり、ルーファスの後ろにいる私をのぞきこんできた第二王子。
最悪なことに、ばっちり目があってしまった。
悔しいから、逃げることなく、きっちり睨み返す。
すると、第二王子は私を見据えて言った。
「もし、ルーファスがおまえのことを番だなんて言おうもんなら、即逃げろ。番は運命とか、そんなきれいなもんじゃない。ただの呪いだ……」
え……?
すぐにルーファスの背にかばわれたけれど、その時の第二王子の目は、不気味なほど暗い光を発していた。
「顔をあげよ」
これまた、あげたくはないけれど、あげないわけにはいかない。
ギギギっと音がでそうなほど、力が入った状態で、なんとか頭をあげた私。
逃げるのは嫌なので、せめても、瞳に全力をこめて、にらみつける。
「そなたはミナリアの親戚のマイリ侯爵家の令嬢だったな。ほお……。前に会った時はまだ小さかったが、こうやって成長すると、やはり、ミナリアと似たところがある。懐かしいな……」
じとっとした目で顔をなめまわすように見られて、思わず鳥肌がたった。
「なあ、ミナリアはライナ国に住んでいるんだろう? その……ミナリアは元気なのか?」
は……? 嘘でしょ?
そんなことを聞ける権利が自分にあると思ってるんだろうか?
その無神経さに、ふつふつと怒りがこみあげる。
すぐにでも、靴をぬいで、なげつけたい衝動にかられてきた。
今なら、目の前に立っているし、確実にあてられる。
が、さすがの私でも、この王宮でそんな暴挙にでたら、大惨事になることくらいの理性は残っている。
とりあえず、腹立たしいけれど、ミナリア姉さまの尊厳にかけてでも、ここは笑顔ではっきり断言しておかねば!
「はい。とても元気で、幸せに暮らしております」
第二王子とはまるで違って、それはそれは素敵な旦那様ですからね……と心の中でつけ加えておく。
すると、「そうか……」と言って、何故か傷ついたような顔をした第二王子。
その瞬間、かっと火が付いたように怒りがふきあがった。
なに、その顔!? なんで、そんな顔をするの!?
そんな顔をする資格なんてない! と、叫びそうになるのを、なんとか飲み込んだ私。
考えるのも嫌だけれど、もしかして、今更、ミナリア姉さまのすばらしさに気づいたとか、バカなことを言いださないよね……?
と思った矢先、すがるような気持ちの悪い目を私に向けて、言った。
「マイリ侯爵令嬢。そなたはミナリアと仲がいいんだろう? 頼む! こっそり、ミナリアに連絡をとってほしい」
「はあ!?」
今度こそ、あきれた声がもれだしてしまった。
不敬であろうが、しょうがないよね。だって、ありえないことを耳にしたんだから。
「そんなこと、できません! 失礼します!」
叫ぶようにそう言い放ち、急いで、第二王子から離れようとした瞬間、腕をつかまれた。
「ミナリアと話しがしたいんだ!」
「離してください!」
「ミナリアにとってもいいことなんだ。だから、頼む! ミナリアに連絡をしてくれ!」
ものすごい力でひっぱられて、腕が痛い。
でも、それよりも、これは、さっきから、何、勝手なことを言っているの!?
心の方が怒りでどうにかなりそうなんだけど!
その時だ。
「ガイガー王子!」
ルーファスの鋭い声がした。
ものすごい速さで近づいて来たルーファス。私の腕をつかむ第二王子の手を叩き落し、私の姿を隠すようにして前にたった。
ルーファスの背中にかばわれて、一気に力が抜ける。
怒り、悔しさ、緊張、自分の無力さがごちゃまぜになってこみあげてきて、涙で目の前がにじんだ。
「ララに……マイリ侯爵令嬢に何をするんですか!?」
「ミナリアのことを聞いただけだ」
「それなら私に聞いてくださればいいでしょう!?」
「おまえらに聞いても、ミナリアのことは教えてはくれないだろうが。それに、ルーファス! なんで、おまえに指図されねばならない! 俺は王子で、おまえは、たかだか公爵家の息子だぞ!? それに、マイリ侯爵令嬢は、おまえの婚約者でもなんでもないだろうが! おまえが横から口だすことではない!」
声を荒げる第二王子。
王宮の護衛の方たちが近づいてくるが、王子相手なので手出しができず、ただ様子を伺っているよう。
「大事な幼馴染です」
ルーファスが第二王子に強い口調で言い返した。
そんなルーファスを見て、鼻で笑った第二王子。
「ほお……。まわりの者に優秀だとおだてられて、いい気になってるおまえでも、そんな余裕のない顔をするんだな? たかが話しかけただけで、なんだ、その殺気は……。そんなにこの子が大事か? まさか番か?」
「違います」
ルーファスが淡々とした声で答えた。
が、次の瞬間、いきなり、ルーファスの後ろにいる私をのぞきこんできた第二王子。
最悪なことに、ばっちり目があってしまった。
悔しいから、逃げることなく、きっちり睨み返す。
すると、第二王子は私を見据えて言った。
「もし、ルーファスがおまえのことを番だなんて言おうもんなら、即逃げろ。番は運命とか、そんなきれいなもんじゃない。ただの呪いだ……」
え……?
すぐにルーファスの背にかばわれたけれど、その時の第二王子の目は、不気味なほど暗い光を発していた。
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