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11年前

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私は、マイリ侯爵家の娘でララベル。

今朝、久しぶりに、あの日の夢を見た。
16歳の私にとったら、もう、11年も前のことなのに、昨日のことのように思い出して、むかむかしている!

私が5歳だった時、私をかわいがってくれていた、親戚のミナリア姉様の結婚式にまねかれた。

相手は第ニ王子(名前は絶対に呼びたくない)だったので、王宮内にある荘厳な教会には、おおぜいの人が招待されていた。
王子の家族である、王家の方々も出席されるということで、警護の人もお手伝いの人も沢山いた。

ウエディングドレスを着たミナリア姉さまは、女神様のように美しくて、式の前にご挨拶に行ったとき、ぼーっとみとれてしまったのを覚えている。

この日のために、リボンのついたピンク色のふわふわした新しいドレスと、おそろいのピンク色の靴を買ってもらい、かざりたててもらっていた私。

教会にはいり、私はお父様とお母様、ジョナスお兄様と一緒に結婚式がはじまるのをわくわくしながら待っていた。

先にミナリア姉様だけが入ってきたのに、相手の第二王子がなかなか入ってこない。

「ジョナスお兄様。どうして、おうじさまは来ないの?」
と、隣にいたジョナスお兄様の手をひっぱった。

「ララ。もうすぐ始まるから、静かにしてようね」

5歳年上のジョナスお兄様は、少し緊張した様子で私に注意した。

王様や王妃様と王太子様が一番前の席に座っているからなのか、みんな緊張している感じが、子どもながらにもつたわってきたっけ。

そして、ついに、豪奢な白い衣装を着た第ニ王子がはいってきた。

でも、ものすごく、おかしい……。
だって、第二王子は、メイド服をきた女の人と手をつないで入ってきたから。

なんで、ミナリア姉様じゃない女の人と手をつないでるの?

もしかして、教会に入る直前に転んで足をけがして歩けなくなったから、そこにいたメイドの人に支えてもらっているとか?

なんて考えていたら、まわりが一気にざわめきだした。

が、王様が立ち上がったことで、一旦、ざわめきがしずまった。

「○○よ(第二バカ王子の名前だけれど、絶対にいいたくない)。その女はだれだ?」

怒りをおさえた王様の声。

すると、第二バカ王子は王様に叫ぶようにして答えた。

「俺はミナリアとは結婚できません! 今さっき、彼女に出会ったんです! 出会った瞬間、わかりました! 彼女は俺の番なんです! 俺は番と結婚します!」

メイド服を着た女の人をだきよせる、第二バカ王子。

そして、ミナリア姉様は倒れた。
悲鳴があがり、大騒ぎになる。

思わず、ミナリア姉様の名前を大声で呼んだけれど、私の声は届かない。
ミナリア姉様は倒れたまま。

「おまえは何を言っている! 結婚式当日だぞ!」
と、王様のどなる声。

「俺は番に出会ったんです! しょうがないでしょう!? 彼女が俺の番なんですから!」
と、開き直ったかのように、叫び返す第二王子。

倒れたミナリア姉様にかけよりもせず、メイド服の女の人をだきしめたままで。

5歳の子どもながら、私の怒りは爆発した。
ミナリア姉様を傷つけた第二バカ王子に、とっさに、報復をしようと試みた。

で、見つけた武器は、自分のはいているピンク色の真新しい靴。

さっとぬいで、狙いをさだめて、投げようとしたその時だった。

「やめろっ、ララ!」

靴を持ち、ふりあげていた腕を、ジョナスお兄様にとりおさえられた。

「はなして、ジョナスお兄様! ミナリアねえさまをいじめたあの王子、私がやっつけてやるわ!」

そう言いながら、ジョナスお兄様におさえられた手をふりほどこうと抵抗したが、5歳も年が上で、剣術の練習をしているジョナスお兄様に力で敵うはずがない。

なにもできなくて、悔しくて、大泣きする私は、結局、お父様にがっちりと捕獲されて、大騒ぎになった教会をあとにした。


あれ以来、あの時の夢をたまに見る。
しかも、いつも、靴を投げる直前に目がさめるから、気分は最悪。

せめて、夢の中だけでも、私の靴が第二バカ王子に命中すれば、まだましなのに……。


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