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ドンパッチの赤い雨

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やはりオレたちが小3のころの事件だ。
当時『ドンパッチ』というお菓子が流行した。名前は覚えて無くてもみんな一度は食べたことがあるだろう。それは一応キャンディーということになっていたが、実際はパサパサ、ポロポロとした粉だった。口に入れるとツバで溶けてパチパチはじける炭酸粉。そのパチパチぶりは激しく、たくさん食べると痛みすら覚える。 はじめはその刺激を楽しんでいたオレたちだったが、そのうち物足りなくなった。刺激を失った遊びは男の牙を失わせる。もっと刺激を。

マサがドンパッチを鼻に入れてみよう。と言い出した。自分の鼻の穴にドンパッチをどんどんつめこむ。右の鼻がいっぱいになったらしく、左の鼻にも入れた。そうとう刺激に飢えていたらしい。とたんにマサの様子がおかしくなった。痛い痛いともがいている。オレたちは笑った。 アホだこいつ。 マサの苦しみようがだんだん激しくなってくる。 水で洗ってくるというマサをオレたちは止めた。水に溶けて、もっとパチパチするからだ。しかたなく指でドンパッチをほじるマサ。が、鼻から抜いた指は血で赤く染まっていた。 ドンパッチの破壊力はすさまじかった。鼻をぶち破ってんじゃないかと思うほどだ。 鼻血で溶けてさらにパチパチするドンパッチ。 マサの痛がりようはもはや尋常ではない。どうしていいかわからないオレたちは、とりあえずマサを保健室につれていった。

『また、あんたたちか今日はどうし・・・』  両方の鼻の穴からパチパチと線香花火のように血を吹き出すマサを見て保健の先生が凍りついた。 『なにしたの!あんたたち!』 いつもは優しい先生が怒っている。 シュンとなるオレたち。 『・・鼻にドンパッチをつめました・・』  オレたちはまぬけな答えを真面目にかえした。マサは鼻うがいをしてる。 『だれがこんなひどいことしたの!』  『・・マサ君です・・』  誰に怒っていいか困る先生。マサがアホすぎたのだ。オレたちは悪くない。どうやら怒られないですみそうだ。

甘かった。オレたちは学校にオヤツを持ってきた悪い子として、放課後、反省文を書かされていた。世の中の不条理を子供心に感じ、むかついた。オレはマサの反省文をのぞいてみた。 『ボクがドンパッチを鼻につめたせいで、みんなに迷惑をかけました。保健の先生にも迷惑をかけました。なんでも鼻につめるのは悪いことだとおもいました・・・』

オレにはマサがなにを反省しているのかわからなかった。余談だが数年前ドンパッチは復活していたのだ。だが、パチパチ度はひかえめになっていて物足りなかった。 そのうち見なくなった。残念。

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