Sports Hitman

糸魚川叉梨有

文字の大きさ
上 下
2 / 9

SportsHitman①

しおりを挟む
「はい、そこゲッツー!」
俺の元にボールが転がってくる。打ったアイツが雑魚で助かる。
俺は冷静に球をすくい上げて二塁に送球する。一塁ランナーは、もう諦めていて二塁に出ようとはしない。しかし、ゴロを打ったあの雑魚だけが懸命に走っていた。
セカンドがボールをキャッチ。すぐ様一塁に投げ、判定はアウト。
俺は内心ガッツポーズをかましていたが表には出さない。いつでもクールに、孤立していて恥を晒さない。パーフェクトヒューマンに。そう思っている。
ふと目にした。アイツが泣いている。あんなヘナチョコボールを打って俺に取られて泣いている。
ヘタレが。ざまあみやがれ。
俺は内心で二度目のガッツポーズをしながらベンチへ戻る。
「ジュラ君。水、いる?」
唐突に薔薇の風が吹く。マネージャーのダスター・ヘザーさんだ。可愛い、と言うより美しい。まるで素人は寄せ付けない薔薇のような子だ。
漏れそうになるニヤけを抑えながら俺は水を受け取り、礼を言った。
俺が座っているとアイツを慰め終えたチームメイトが俺に絡んでくる。
「やっぱここのエースはあんただなハクア!華麗なゲッツーだったぜ!!」
「お前打撃も行けるしこれで大会優秀成績間違いなしだな!」
「俺もお前に追いつきてぇよ……!」
全員が口々に言ってくる。それをヘザーさんは笑顔で見つめている。俺は満を持して答えた。
「ああ、任せとけ。俺が一番だ。」
言い切って空でも見上げてみる。いや、ここは空を仰ぐ、空に仰がれるとでも言おうか。
しかし、リアクションがない。しーんとしている。
ん?
違和感を覚えた。
これは芸人で言う「スベった」のでは無いか?でも、俺は別にウケ狙いで言った訳では無い。真剣に、そしてカッコよく言っただけだ。予定なら今はヘザーさんから「キャー、付き合ってー」みたいな華物語が待ち受けているはずなのに………
俺はバッと前を向く。
チームメイト全員と目が合う。ヘザーさんはもう居なかった。
「お前、褒めてれば何調子乗ってんの?普段クラスではそんなキャラじゃないじゃん。いじめられっ子じゃん。常に誰かに殴られてんじゃん。野球部の中ではヒーローになりたい的な?ここはそんな『ヒーロー疑似体験会』じゃないんだけど?」
言ってきたのはアイツだ。ゴロを打ったアイツ。下手くそなアイツ。俺に負けたアイツ。俺を普段殴ってくるアイツ。喧嘩に強いアイツ。 
そうだ。舞い上がっていたのは俺だ。何してんだ俺。
アイツは俺の首を容赦なく掴む。握りつぶすように手に力を加える。
「お前の、レートは、いくつだ?ああ?」
「………Z94………」
「ハハハ!聞いたか?Zだってよ!ぜっと!べべじゃねぇか!いじめられっ子ってのはな!ずっと潰されてりゃ良いんだよ!強い者が弱い者を支配し、全てをぶっ壊す!死ねばいい!キャメロットのようにな!」
さらに俺の首に力を入れる。体が徐々に衰弱していくのが分かる。口答えなんてしてられない。もう動けもしない。あっ……
プールに一日中浸かった後に入る風呂のような、そんな快感が全身を走る。
誰かから聞いたことがある。死ぬ前は気持ち良くなると………
俺…死んだな………
ほんのりと薔薇の匂いがする。前を華の風が通過していった。
目を覚ますと俺は保健室にいた。
薔薇の香りはまだしている。ゆっくりと隣を見るとヘザーさんが先生用の白衣を毛布替わりにしながら眠っていた。
男は怖いと自分では思う。
鍛えさえすれば体の部位全てが人を傷つける凶器になりうるのだから。
こんな時にすることでは無い。そう分かっている。今の状況において知らなきゃ行けないことはいくらでもある。ただ、もうどうでも良くなった。
睾丸が、張り裂けそうだ。
チャンスはここしかないのだ。
俺はベッドから飛び起きると彼女に襲いかかった。まるで百獣の王のように。
毛布替わりの白衣を勢いよく剥がしそのまま手を離して投げる。
制服のボタンをどんどん外していく。一個、二個、三個……
ちょうど五個目を外した時彼女が目を覚ました。ゆったりとではなく、緊急事態を察したかのような、そんな感じだった。
「ジュ、ジュラ君!?なにやってんの?ねぇ?何やって……………」
その五月蝿い口を俺の口で制した。
意識はその時にはほとんどない。
そのまま脱がす。脱がす。脱がす。
彼女はそれっきり、諦めたように抵抗もしない。
俺だけが攻める時間だ。
俺も脱ぐ。脱ぐ。脱ぐ。

(後、自主規制。by作者)

俺は一息ついた。結局俺らは最後まで終えてしまった。肉塊を擦り合わせた。まるで獣だ。それから………

(後、自主規制。by作者)

彼女は言った。
「ありがと。」





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界行ったら人外と友達になった

小梅カリカリ
ファンタジー
気が付いたら異世界に来ていた瑠璃 優しい骸骨夫婦や頼りになるエルフ 彼女の人柄に惹かれ集まる素敵な仲間達 竜に頭丸呑みされても、誘拐されそうになっても、異世界から帰れなくても 立ち直り前に進む瑠璃 そしてこの世界で暮らしていく事を決意する

【取り下げ予定】愛されない妃ですので。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。 国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。 「僕はきみを愛していない」 はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。 『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。 (ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?) そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。 しかも、別の人間になっている? なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。 *年齢制限を18→15に変更しました。

【完結】君の世界に僕はいない…

春野オカリナ
恋愛
 アウトゥーラは、「永遠の楽園」と呼ばれる修道院で、ある薬を飲んだ。  それを飲むと心の苦しみから解き放たれると言われる秘薬──。  薬の名は……。  『忘却の滴』  一週間後、目覚めたアウトゥーラにはある変化が現れた。  それは、自分を苦しめた人物の存在を全て消し去っていたのだ。  父親、継母、異母妹そして婚約者の存在さえも……。  彼女の目には彼らが映らない。声も聞こえない。存在さえもきれいさっぱりと忘れられていた。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、第一王子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

旦那の真実の愛の相手がやってきた。今まで邪魔をしてしまっていた妻はお祝いにリボンもおつけします

暖夢 由
恋愛
「キュリール様、私カダール様と心から愛し合っておりますの。 いつ子を身ごもってもおかしくはありません。いえ、お腹には既に育っているかもしれません。 子を身ごもってからでは遅いのです。 あんな素晴らしい男性、キュリール様が手放せないのも頷けますが、カダール様のことを想うならどうか潔く身を引いてカダール様の幸せを願ってあげてください」 伯爵家にいきなりやってきた女(ナリッタ)はそういった。 女は小説を読むかのように旦那とのなれそめから今までの話を話した。 妻であるキュリールは彼女の存在を今日まで知らなかった。 だから恥じた。 「こんなにもあの人のことを愛してくださる方がいるのにそれを阻んでいたなんて私はなんて野暮なのかしら。 本当に恥ずかしい… 私は潔く身を引くことにしますわ………」 そう言って女がサインした書類を神殿にもっていくことにする。 「私もあなたたちの真実の愛の前には敵いそうもないもの。 私は急ぎ神殿にこの書類を持っていくわ。 手続きが終わり次第、あの人にあなたの元へ向かうように伝えるわ。 そうだわ、私からお祝いとしていくつか宝石をプレゼントさせて頂きたいの。リボンもお付けしていいかしら。可愛らしいあなたととてもよく合うと思うの」 こうして一つの夫婦の姿が形を変えていく。 --------------------------------------------- ※架空のお話です。 ※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。 ※現実世界とは異なりますのでご理解ください。

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

処理中です...