69 / 78
11.再会
⑤
しおりを挟む
「セラちゃん、エリオット様って……前に言ってた……」
現れたエリオット様を見て固まっていたルークさんが、私の横に来て驚いた様子で尋ねてきた。
「……はい。こちらが以前お話ししたエリオット様です」
「い、いや、この人……どう見ても……サフェリア王国の王子殿下だよね……!?」
ルークさんは驚愕を隠しきれない顔で、私とエリオット様を交互に見ていた。
「ってことは、セラちゃん。まさかセラちゃんって……」
「お前が兵士の言っていた魔術師か」
私に向かって焦った顔で何か尋ねようとしてきたルークさんを、エリオット様が不快そうな顔で遮る。
「あ、はい。ルーク・アーレントと申します。帝国の魔術師団に所属しています。セラちゃんには精霊のことで色々協力してもらっていました」
「そのセラちゃんと言うのはなんだ。馴れ馴れしい。セラは王太子である俺の婚約者だぞ」
「ええええ……。やっぱりセラちゃん、サフェリア王家の関係者なんだ……。しかも王子の婚約者なんだ……」
ルークさんは目をぱちくりして、呆気に取られた顔をしていた。
不機嫌な顔をしていたエリオット様が、こちらに向き直る。
「こんな奴のことはどうでもいいんだ。セラ、早く王国へ帰ろう」
「え、ええっと、エリオット様……」
「どうしたんだ? 何か帰りたくない理由でもあるのか」
帰ろうと言われているのに、なぜだか気乗りしない。
エリオット様はすぐにでも馬車へ乗るよう言っていたけれど、私は「宿に荷物があるからその前に取りに帰りたいんです」なんて、言い訳するように言ってしまった。
実際、宿にはわずかながらに荷物があるので取りに帰りたいのは確かだ。
けれど、本心ではそれは口実で、馬車に乗るまでの時間稼ぎをしたいのだと気づいていた。
エリオット様は不満そうにしつつも、一応は宿に戻ることを許可してくれた。
司教様や子供たちにはろくな挨拶も出来ないまま、呆気に取られた顔をしている彼らにどうにか大まかに事情を説明して別れるしかなかった。
結局、彼らが準備してくれた精霊の儀式には参加出来ないで終わってしまった。
兵士に囲まれながら、エリオット様と馬車で宿まで向かう。
エリオット様はルークさんにも来なくていいと言っていたけれど、宿に入るには魔術師団員である自分の許可が必要だからと押し切ってついて来てくれた。
宿の前まで来ると、エリオット様は入口で待っていると言って私を送り出した。
私は、「セラちゃんが外に出るためには俺が宿で手続きをしなければならないから」と言ってついてきてくれたルークさんと一緒に宿の門をくぐる。
多分、手続きがあるというのは口実だと思う。おそらく心配して一緒に来てくれたのだ。
現れたエリオット様を見て固まっていたルークさんが、私の横に来て驚いた様子で尋ねてきた。
「……はい。こちらが以前お話ししたエリオット様です」
「い、いや、この人……どう見ても……サフェリア王国の王子殿下だよね……!?」
ルークさんは驚愕を隠しきれない顔で、私とエリオット様を交互に見ていた。
「ってことは、セラちゃん。まさかセラちゃんって……」
「お前が兵士の言っていた魔術師か」
私に向かって焦った顔で何か尋ねようとしてきたルークさんを、エリオット様が不快そうな顔で遮る。
「あ、はい。ルーク・アーレントと申します。帝国の魔術師団に所属しています。セラちゃんには精霊のことで色々協力してもらっていました」
「そのセラちゃんと言うのはなんだ。馴れ馴れしい。セラは王太子である俺の婚約者だぞ」
「ええええ……。やっぱりセラちゃん、サフェリア王家の関係者なんだ……。しかも王子の婚約者なんだ……」
ルークさんは目をぱちくりして、呆気に取られた顔をしていた。
不機嫌な顔をしていたエリオット様が、こちらに向き直る。
「こんな奴のことはどうでもいいんだ。セラ、早く王国へ帰ろう」
「え、ええっと、エリオット様……」
「どうしたんだ? 何か帰りたくない理由でもあるのか」
帰ろうと言われているのに、なぜだか気乗りしない。
エリオット様はすぐにでも馬車へ乗るよう言っていたけれど、私は「宿に荷物があるからその前に取りに帰りたいんです」なんて、言い訳するように言ってしまった。
実際、宿にはわずかながらに荷物があるので取りに帰りたいのは確かだ。
けれど、本心ではそれは口実で、馬車に乗るまでの時間稼ぎをしたいのだと気づいていた。
エリオット様は不満そうにしつつも、一応は宿に戻ることを許可してくれた。
司教様や子供たちにはろくな挨拶も出来ないまま、呆気に取られた顔をしている彼らにどうにか大まかに事情を説明して別れるしかなかった。
結局、彼らが準備してくれた精霊の儀式には参加出来ないで終わってしまった。
兵士に囲まれながら、エリオット様と馬車で宿まで向かう。
エリオット様はルークさんにも来なくていいと言っていたけれど、宿に入るには魔術師団員である自分の許可が必要だからと押し切ってついて来てくれた。
宿の前まで来ると、エリオット様は入口で待っていると言って私を送り出した。
私は、「セラちゃんが外に出るためには俺が宿で手続きをしなければならないから」と言ってついてきてくれたルークさんと一緒に宿の門をくぐる。
多分、手続きがあるというのは口実だと思う。おそらく心配して一緒に来てくれたのだ。
1,791
お気に入りに追加
5,325
あなたにおすすめの小説
廃妃の再婚
束原ミヤコ
恋愛
伯爵家の令嬢としてうまれたフィアナは、母を亡くしてからというもの
父にも第二夫人にも、そして腹違いの妹にも邪険に扱われていた。
ある日フィアナは、川で倒れている青年を助ける。
それから四年後、フィアナの元に国王から結婚の申し込みがくる。
身分差を気にしながらも断ることができず、フィアナは王妃となった。
あの時助けた青年は、国王になっていたのである。
「君を永遠に愛する」と約束をした国王カトル・エスタニアは
結婚してすぐに辺境にて部族の反乱が起こり、平定戦に向かう。
帰還したカトルは、族長の娘であり『精霊の愛し子』と呼ばれている美しい女性イルサナを連れていた。
カトルはイルサナを寵愛しはじめる。
王城にて居場所を失ったフィアナは、聖騎士ユリシアスに下賜されることになる。
ユリシアスは先の戦いで怪我を負い、顔の半分を包帯で覆っている寡黙な男だった。
引け目を感じながらフィアナはユリシアスと過ごすことになる。
ユリシアスと過ごすうち、フィアナは彼と惹かれ合っていく。
だがユリシアスは何かを隠しているようだ。
それはカトルの抱える、真実だった──。

婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました
Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。
順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。
特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。
そんなアメリアに対し、オスカーは…
とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。

最初からここに私の居場所はなかった
kana
恋愛
死なないために媚びても駄目だった。
死なないために努力しても認められなかった。
死なないためにどんなに辛くても笑顔でいても無駄だった。
死なないために何をされても怒らなかったのに⋯⋯
だったら⋯⋯もう誰にも媚びる必要も、気を使う必要もないでしょう?
だから虚しい希望は捨てて生きるための準備を始めた。
二度目は、自分らしく生きると決めた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
いつも稚拙な小説を読んでいただきありがとうございます。
私ごとですが、この度レジーナブックス様より『後悔している言われても⋯⋯ねえ?今さらですよ?』が1月31日頃に書籍化されることになりました~
これも読んでくださった皆様のおかげです。m(_ _)m
これからも皆様に楽しんでいただける作品をお届けできるように頑張ってまいりますので、よろしくお願いいたします(>人<;)

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

私は既にフラれましたので。
椎茸
恋愛
子爵令嬢ルフェルニア・シラーは、国一番の美貌を持つ幼馴染の公爵令息ユリウス・ミネルウァへの想いを断ち切るため、告白をする。ルフェルニアは、予想どおりフラれると、元来の深く悩まない性格ゆえか、気持ちを切り替えて、仕事と婚活に邁進しようとする。一方、仕事一筋で自身の感情にも恋愛事情にも疎かったユリウスは、ずっと一緒に居てくれたルフェルニアに距離を置かれたことで、感情の蓋が外れてルフェルニアの言動に一喜一憂するように…?
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。

【完結】愛していないと王子が言った
miniko
恋愛
王子の婚約者であるリリアナは、大好きな彼が「リリアナの事など愛していない」と言っているのを、偶然立ち聞きしてしまう。
「こんな気持ちになるならば、恋など知りたくはなかったのに・・・」
ショックを受けたリリアナは、王子と距離を置こうとするのだが、なかなか上手くいかず・・・。
※合わない場合はそっ閉じお願いします。
※感想欄、ネタバレ有りの振り分けをしていないので、本編未読の方は自己責任で閲覧お願いします。
そんなに妹が好きなら死んであげます。
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』
フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。
それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。
そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。
イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。
異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。
何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる