稀代の悪女として処刑されたはずの私は、なぜか幼女になって公爵様に溺愛されています

水谷繭

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2.意地悪な家庭教師

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 それからもマイラは定期的にやって来て、私に嘘の知識を教え続けた。

 マイラに言われた通りに魔法を使ううちに、私は杖の先からわずかに煙が出るだけのしょぼい魔法を使えるようになった。

「まぁ、ようやくできるようになったのね! 人形には全く届いていないとはいえ、すごいわ!」

 マイラは私の杖から煙が出るのを見て、手を叩いて褒める。

 これは、彼女に「シャーリーちゃんは無になっても魔法を発動できないようだから、少しだけ煙が出るところをイメージしてみましょう」と言われ、その通りにやったのだ。

「すごい、私にも魔法が使えたわ!」

「魔法が使えたというほどではないけれど、シャーリーちゃんにしては快挙ね!」

 私の言葉に、マイラはやっぱり嫌味ったらしい言葉を返す。


 ちなみにマイラが偽っているのは魔法の使い方だけではない。杖自体にも、うまく魔法が発動できないように細工がされている。

 以前、マイラが魔導書に気を取られているとき、こっそり普通に魔法を使ってみたことがある。しかし、普段と違いきちんと水の玉が出るよう念じたにも関わらず、杖先からは小さな雫がこぼれるだけだった。

 明らかにおかしかった。

 ヴィンセントに街で買ってもらった杖を使ったときは、難なく水も炎も出せたのだ。

 どうりで授業が終わると必ず警戒した顔で杖を持ち帰ると思った。一度、試しに「夜も練習したいから杖を貸してくれないかしら?」と頼んでみたら、真顔で「シャーリーちゃんは一人で練習するにはまだ早いわ」と断られた。

 そろそろヴィンセントに全部ぶちまけてみようかと考えていると、マイラはふいに満面の笑みになる。


「ねぇ、シャーリーちゃん。街の神殿で子供たちの魔法大会を行っているのを知ってる?」

「そんなのがあるの?」

「ええ、そうよ。五歳以上十歳以下の子供なら誰でも参加できるの。そこで神官様から出されたお題に挑戦していくのよ」

「へぇー! おもしろそう! 出てみたいわ」

「それなら、私が神官様に伝えておいてあげるわ。今度の大会にシャーリーちゃんも参加したいって」

 マイラは弾んだ声で言う。

 彼女のうきうきした様子を眺めながら、私は若干ひいていた。

 神殿で行われる魔法大会は、対象年齢こそ低いけれど、子供がお遊びで出るようなものじゃない。

 普通の子供よりも数段魔力が高かったり、複数の属性を持っていたりするいわばエリートが実力を試す大会なのだ。

 そんなところにマイラの設定上「属性もなく魔力も少ない」シャーリーが出るなんて、場違いもいいところだ。


「楽しみだわ! うまくできるかしら?」

「ええ、大丈夫よ。周りは同い年の子供ばかりだから、気負うことはないわ。気楽に参加すればいいのよ」

 マイラは自信満々に言う。

 私はドン引きする本心は隠して、笑顔を見せた。
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