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1.悪女は幼女になりました
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マイラはどこへでもグレースの後をついて回り、召使いのように身の回りの世話をし、何かというと大げさに褒めたたえた。
「グレース様って本当に賢くて憧れるわ。それに、ほかのシスターたちと違って自分を持っているというか……芯が強いように思うんです」
マイラの言葉はグレースの自尊心をくすぐった。
これがほかの者たちからしょっちゅうかけられるような、お優しいとか、女神のようだとか言う誉め言葉ならそこまで響かなかったのかもしれない。
けれど、マイラの言葉はグレースの一番言われたい言葉をうまくついていた。
愚かにもグレースはしだいにマイラを信用するようになっていった。そして部屋に入れることを許してしまったのだ。
時間はわずか一時間ほど。
その間に彼女から目を離したのはお茶を取りに行った一度だけ。取りに行くといっても、お茶は部屋の中で淹れられるようになっていたから、わずか数分背中を向けただけだ。
おそらく最初から私の弱みを探る気で来ていたのだろう。
マイラは目ざとく本棚の隙間に挟まっていた犯罪組織とのやり取りの手紙を見つけ出し、内容を記憶したようだ。
マイラに手紙を見られたことも、彼女が私の部屋を出た後で手紙の内容を神官様に告げ口したこともまるで気づかなかった私は、ある日隣国で組織と取引を終えた後、のこのこ神殿に帰ってきた。
そこで待っていたのは、今まで見たこともないような神官様やシスターたちの冷たい視線だった。
違和感に気づいたときにはもう遅く、逃げ道は塞がれ、私は控えていた兵士たちに捕らえられた。
投獄されてからの日々は地獄だった。
罵声を浴び、暴力を振るわれて。食事は一日に一杯の水とカビかけたパン一つしか与えられず、夜になれば牢屋の冷たい床で擦り切れた毛布を被って眠る。
痛みと苦しみで意識が朦朧とする。屈辱でどうにかなりそうだった。
今まで私を聖女だと称えていた者たちは、手のひらを返して私を罵った。
屈辱にまみれたまま私は断頭台の前に連れて行かれ、そのまま首を落とされた。
断頭台に上がらされた時、群衆の中でこちらを見てにやつくマイラの顔が確かに見えた。
「……あの女、ほんっとうにムカつくわ……」
私はベッドの上でぎりぎり歯ぎしりをした。あの時のマイラの笑みを思い出すと、怒りで頭がどうにかなりそうになる。
「待ってなさいよ、マイラ。地獄に落としてやるから」
私は拳を握りしめ、低い声で呟いた。
***
それから三日後、早速マイラがやって来た。
マイラは明るい黄色のミニドレスに身を包み、レースのショールを羽織っている。履いているのは華奢なヒールだし、子守をするには明らかに向かない服装だ。
私はマイラの目的はヴィンセントだという確信を強めた。
「ヴィンセント様、お招きありがとうございます! わぁ、エヴァンズ公爵邸ってこんなに広いんですね」
マイラはお屋敷の中を目をキラキラさせて見まわしながら言う。
一応私の世話をしに来たはずなのに、こちらには目も向けない。しばらくお屋敷を見渡したマイラはようやく思い出したように私のほうを向き、「こんにちは、シャーリーちゃん」と笑った。
「グレース様って本当に賢くて憧れるわ。それに、ほかのシスターたちと違って自分を持っているというか……芯が強いように思うんです」
マイラの言葉はグレースの自尊心をくすぐった。
これがほかの者たちからしょっちゅうかけられるような、お優しいとか、女神のようだとか言う誉め言葉ならそこまで響かなかったのかもしれない。
けれど、マイラの言葉はグレースの一番言われたい言葉をうまくついていた。
愚かにもグレースはしだいにマイラを信用するようになっていった。そして部屋に入れることを許してしまったのだ。
時間はわずか一時間ほど。
その間に彼女から目を離したのはお茶を取りに行った一度だけ。取りに行くといっても、お茶は部屋の中で淹れられるようになっていたから、わずか数分背中を向けただけだ。
おそらく最初から私の弱みを探る気で来ていたのだろう。
マイラは目ざとく本棚の隙間に挟まっていた犯罪組織とのやり取りの手紙を見つけ出し、内容を記憶したようだ。
マイラに手紙を見られたことも、彼女が私の部屋を出た後で手紙の内容を神官様に告げ口したこともまるで気づかなかった私は、ある日隣国で組織と取引を終えた後、のこのこ神殿に帰ってきた。
そこで待っていたのは、今まで見たこともないような神官様やシスターたちの冷たい視線だった。
違和感に気づいたときにはもう遅く、逃げ道は塞がれ、私は控えていた兵士たちに捕らえられた。
投獄されてからの日々は地獄だった。
罵声を浴び、暴力を振るわれて。食事は一日に一杯の水とカビかけたパン一つしか与えられず、夜になれば牢屋の冷たい床で擦り切れた毛布を被って眠る。
痛みと苦しみで意識が朦朧とする。屈辱でどうにかなりそうだった。
今まで私を聖女だと称えていた者たちは、手のひらを返して私を罵った。
屈辱にまみれたまま私は断頭台の前に連れて行かれ、そのまま首を落とされた。
断頭台に上がらされた時、群衆の中でこちらを見てにやつくマイラの顔が確かに見えた。
「……あの女、ほんっとうにムカつくわ……」
私はベッドの上でぎりぎり歯ぎしりをした。あの時のマイラの笑みを思い出すと、怒りで頭がどうにかなりそうになる。
「待ってなさいよ、マイラ。地獄に落としてやるから」
私は拳を握りしめ、低い声で呟いた。
***
それから三日後、早速マイラがやって来た。
マイラは明るい黄色のミニドレスに身を包み、レースのショールを羽織っている。履いているのは華奢なヒールだし、子守をするには明らかに向かない服装だ。
私はマイラの目的はヴィンセントだという確信を強めた。
「ヴィンセント様、お招きありがとうございます! わぁ、エヴァンズ公爵邸ってこんなに広いんですね」
マイラはお屋敷の中を目をキラキラさせて見まわしながら言う。
一応私の世話をしに来たはずなのに、こちらには目も向けない。しばらくお屋敷を見渡したマイラはようやく思い出したように私のほうを向き、「こんにちは、シャーリーちゃん」と笑った。
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