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3.ヒロインが来た
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クリスティーナが転校してきてから一週間が経った。
彼女の人気はすさまじく、常に男子生徒に囲まれているので気を付けるまでもなく関わる機会が全くない。クリスティーナについて回っている筆頭が、宰相の息子のハヴェルと、騎士団に所属しているダーヴィトだ。
以前、フェリシアによく見ておくように言われた二人。こんなところまで的中させるのだから、本当に驚いてしまう。
さらに驚愕したのが、どこで知り合ったのか僕の二人の兄までクリスティーナと仲良くなっていたことだ。学年が違うから、転校生のクリスティーナとの接点なんてほとんどないはずなのに。
僕はフェリシアが見たと言う夢は本当に予知夢だったのではないかと、薄々信じ始めていた。ただ、僕自身に関してはクリスティーナに惹かれる兆候が全くないのだけれど……。
───
「では、今度の王立博物館見学は三人組に分かれて回り、各組でレポートを作成してもらいます」
授業が始まると、教壇で教師はそう告げた。
来週は王立博物館を貸し切って生徒たちで見学に行くことになっている。王立博物とは、さまざまな魔法道具や魔獣の剥製が展示してあるほか、庭では数百種類の魔法植物が育てられている広大な施設だ。貴重な資料の宝庫なので、学園に通う生徒は必ず見学に行かされる。
教師は博物館を回る際のグループは男女関係なく自由に組んでいいと言った。
男女関係なくと言っても三人という微妙な人数だし、大抵の生徒は同性同士で組んでいた。友人のデニスたちが誘ってくれたけれど、僕は断ってフェリシアの方に歩きだした。
「フェリシア!」
「エルランド様?」
フェリシアは少し驚いた顔でこちらを見た。彼女の周りには三人の令嬢が立っている。フェリシアはよくこの子たちと四人で行動しているので、組分けをどうするのか話し合っていたのだろう。
「フェリシア、一緒に博物館を回ろう」
「え、あの、お友達はいいのですか?それにほとんどの人は同性同士で組んでいますけれど……」
「大丈夫だよ。君たちもいいかな?フェリシアを借りちゃって」
フェリシアの友人たちに尋ねると、彼女たちはどこか嬉しそうな顔でうなずいてくれた。
「もちろんですわ!私たち、四人でどうするか話し合っていたところでしたの」
「フェリシア様、よかったですわね」
令嬢たちがフェリシアの側できゃっきゃとはしゃいでいる。フェリシアはというと、眉を下げて少し困った表情で僕をちらちら見ていた。困らせてしまったのだろうか。けれど四六時中一緒にいると宣言したばかりなので、ここは有言実行したい。
「あと一人はどうしようか」
「ええ。ほとんどもうみんな決まってしまっていますわね」
無事にフェリシアを確保して教室を見渡すが、もう大体の組分けは終わっているようだった。人数が揃わなかったらフェリシアと二人で回ることになるのかな。それは、そっちの方がいいかもしれない。
「クリスティーナ!俺たちと回ろう」
「いや、クリスティーナ。こっちにおいでよ。ダーヴィトみたいな筋肉馬鹿と回るより、僕たちといる方が有意義だよ」
「なんだとハヴェル、お前」
「事実じゃないか」
騒ぎ声のする方に顔を向けたら、教室の端でダーヴィトとハヴェルが言い争っていた。真ん中ではクリスティーナが戸惑い顔で二人の顔を見回している。どうやらクリスティーナの取り合いをしているらしい。一体何をしているんだか。
それを見る教室の女子たちの視線はというと、とても冷ややかだった。
元々、クリスティーナは女子生徒たちからあまりよく思われていない。最初の日こそ元気で可愛らしいクリスティーナの周りにはたくさんの令嬢たちが集まって来ていたものの、彼女がダーヴィトやハヴェルを始めとした有名な人物に気にかけられるようになると、彼女たちの態度は一変した。
クリスティーナが上級貴族だったのなら不満をはねのけられたのかもしれないが、彼女は男爵家の令嬢。宰相の息子だの、騎士団の有名人だのが近くにいれば嫉妬を買うのも無理はなかった。
ハヴェルとダーヴィトが言い争うたびに、女子たちの視線は冷たくなっていく。クリスティーナはそれに気づいているのか、俯いて顔を赤くしていた。
彼女の人気はすさまじく、常に男子生徒に囲まれているので気を付けるまでもなく関わる機会が全くない。クリスティーナについて回っている筆頭が、宰相の息子のハヴェルと、騎士団に所属しているダーヴィトだ。
以前、フェリシアによく見ておくように言われた二人。こんなところまで的中させるのだから、本当に驚いてしまう。
さらに驚愕したのが、どこで知り合ったのか僕の二人の兄までクリスティーナと仲良くなっていたことだ。学年が違うから、転校生のクリスティーナとの接点なんてほとんどないはずなのに。
僕はフェリシアが見たと言う夢は本当に予知夢だったのではないかと、薄々信じ始めていた。ただ、僕自身に関してはクリスティーナに惹かれる兆候が全くないのだけれど……。
───
「では、今度の王立博物館見学は三人組に分かれて回り、各組でレポートを作成してもらいます」
授業が始まると、教壇で教師はそう告げた。
来週は王立博物館を貸し切って生徒たちで見学に行くことになっている。王立博物とは、さまざまな魔法道具や魔獣の剥製が展示してあるほか、庭では数百種類の魔法植物が育てられている広大な施設だ。貴重な資料の宝庫なので、学園に通う生徒は必ず見学に行かされる。
教師は博物館を回る際のグループは男女関係なく自由に組んでいいと言った。
男女関係なくと言っても三人という微妙な人数だし、大抵の生徒は同性同士で組んでいた。友人のデニスたちが誘ってくれたけれど、僕は断ってフェリシアの方に歩きだした。
「フェリシア!」
「エルランド様?」
フェリシアは少し驚いた顔でこちらを見た。彼女の周りには三人の令嬢が立っている。フェリシアはよくこの子たちと四人で行動しているので、組分けをどうするのか話し合っていたのだろう。
「フェリシア、一緒に博物館を回ろう」
「え、あの、お友達はいいのですか?それにほとんどの人は同性同士で組んでいますけれど……」
「大丈夫だよ。君たちもいいかな?フェリシアを借りちゃって」
フェリシアの友人たちに尋ねると、彼女たちはどこか嬉しそうな顔でうなずいてくれた。
「もちろんですわ!私たち、四人でどうするか話し合っていたところでしたの」
「フェリシア様、よかったですわね」
令嬢たちがフェリシアの側できゃっきゃとはしゃいでいる。フェリシアはというと、眉を下げて少し困った表情で僕をちらちら見ていた。困らせてしまったのだろうか。けれど四六時中一緒にいると宣言したばかりなので、ここは有言実行したい。
「あと一人はどうしようか」
「ええ。ほとんどもうみんな決まってしまっていますわね」
無事にフェリシアを確保して教室を見渡すが、もう大体の組分けは終わっているようだった。人数が揃わなかったらフェリシアと二人で回ることになるのかな。それは、そっちの方がいいかもしれない。
「クリスティーナ!俺たちと回ろう」
「いや、クリスティーナ。こっちにおいでよ。ダーヴィトみたいな筋肉馬鹿と回るより、僕たちといる方が有意義だよ」
「なんだとハヴェル、お前」
「事実じゃないか」
騒ぎ声のする方に顔を向けたら、教室の端でダーヴィトとハヴェルが言い争っていた。真ん中ではクリスティーナが戸惑い顔で二人の顔を見回している。どうやらクリスティーナの取り合いをしているらしい。一体何をしているんだか。
それを見る教室の女子たちの視線はというと、とても冷ややかだった。
元々、クリスティーナは女子生徒たちからあまりよく思われていない。最初の日こそ元気で可愛らしいクリスティーナの周りにはたくさんの令嬢たちが集まって来ていたものの、彼女がダーヴィトやハヴェルを始めとした有名な人物に気にかけられるようになると、彼女たちの態度は一変した。
クリスティーナが上級貴族だったのなら不満をはねのけられたのかもしれないが、彼女は男爵家の令嬢。宰相の息子だの、騎士団の有名人だのが近くにいれば嫉妬を買うのも無理はなかった。
ハヴェルとダーヴィトが言い争うたびに、女子たちの視線は冷たくなっていく。クリスティーナはそれに気づいているのか、俯いて顔を赤くしていた。
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