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14.王宮へ

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「わ、私はただの令嬢ではありません……! 光魔法が使えます……!」

「ああ。知っているよ。君のことは調べたからね。植物を多少元気にする力があると調査書には書いてあった。いい能力じゃないか。将来何かしらに役立てればいい」

「多少ではありません! 私は植物に愛されていますの! 見ていてくださいませ!」

 そう言ってから、部屋の奥に並んでいた植物に向かって手をかざす。

 以前、コルラード殿下がラウロ様のお屋敷にやって来たときに無意識のうちに使ってしまった魔法。

 今度は意識的に、植物に向かってお願いするようにして魔法をかける。

 すると、鉢植えの木が途端にぐんぐん伸びて、途端に部屋中に広がった。

 国王様と王妃様は口をあんぐり開けてその光景を見ている。


 私の魔法はどうやら手足のように植物を操れるというわけではなく、植物が私の頼みを聞くように自由に動く形で発動するようだ。

 今も伸びた木の枝や蔓は、私の意思を通り越して、踊るように部屋の中を動いている。

 その時、伸びた蔓が国王様の手に巻き付いた。


 私ははっとして動きを止める。

 暴走しないように神経をとがらせていたつもりだったけれど、無意識のうちにあの蔓が国王様に危害を加えたらどうしようかと途端に体温が下がる。

 それこそ要注意人物になってしまう。

 しかし、蔓は国王様に危害を加えることはなく、ゆるゆると彼の手に絡みついて、ぱっと蕾から花を咲かせた。

 それから花を差し出すように、国王様の顔に近づける。

 王妃様の方も、同じように蔓が彼女の手に巻き付いて花を差し出していた。

 なんだかまるで、このどうしようもない魔法の使い手の願いを聞いてあげてくださいと、植物自ら頼んでいるような姿だった。


「……これは君がやったのか?」

 国王様は呆然とした顔で尋ねてくる。その顔に先ほどまでのいらだちはなく、ただ驚きだけが浮かんでいた。

「はい、私が魔法でやりました」

「調査書にはここまでの力が使えると書いていなかった。一体どういうことなんだ……」

「あ、あの……! 私、ほかにも枯れた植物を蘇らせたり、成長を操ったりできますわ! 大したことができない私ですが、フォリア王国が不作に陥ったときはきっと役に立てると思いますの。私、いくらでも国中を回ります! 何だってします。ですから……」

 私はぎゅっとスカートを握りしめる。

「ですから、私を認めてください……! 私はラウロ様のそばにいたいのです!」

 思い切って口にすると、国王様も王妃様も、呆気に取られたように私を見つめた。


「ジュスティーナ嬢……」

 横からラウロ様にかすれた声で呼ばれる。

 とんでもないことを仕出かした自覚はあったので、彼の顔を見られなかった。

 すると、ラウロ様に肩をつかんでそちらを向かされる。


「あ、あの……」

「ジュスティーナ嬢。そこまで俺といたいと思ってくれていたのか……?」

 ラウロ様は震える声でそう尋ねてくる。私は躊躇いながらも答えた。
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