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14.王宮へ

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 私はあのお屋敷は素敵な場所だと思うけれど、国王様は「あんな寂れた屋敷」だと思う場所に息子を住まわせていたのだと思うと、何とも言えない気持ちになった。

 ラウロ様の呪いが解けなかったら、きっとこれからも同じ場所に住まわせ続けたであろうことも。

 ラウロ様も思うところがあるのか、国王様を複雑な顔で見ている。

 やがてラウロ様は、苦々しい表情で国王様に向かって尋ねた。


「陛下。そもそも一度死んだことになっていた第三王子が実は生きていると知られれば、問題にはなりませんか」

 ラウロ様の質問に、国王様はぱっと笑顔になった。

「なんだ、そんなことを気にしていたのか! その点は心配ない。国民には第三王子は病に侵されていたので、静養させるために仕方なく表向きは病死ということにしていたのだと説明しよう。きっと国民だって第三王子が生きているとわかれば喜ぶさ」

 国王様の表情は明るかった。隣の王妃様も頬を緩めてうなずいている。

 その様子を見て、私の胸には嫌な気持ちが増していった。国王様たちの都合でラウロ様の生死を偽ったことに対する罪悪感はないのだろうか。


「そうだ、ラウロ。別邸に心残りがあるというなら、学園を卒業するまではそこで暮らせばいい。どうせ本格的な公務が始まるのは卒業後だからな」

「それがいいわ。使用人も護衛もたくさんお屋敷へ送ってあげましょう」

 国王様と王妃様は、決定事項かのように明るい声で話している。

 ラウロ様の顔をそっと盗み見る。眉間に皺を寄せて難しい顔をしているラウロ様は、とても提案に納得しているようには見えなかった。

 しかし、彼はやがて諦めたようにうなずく。


「……わかりました。呪いが解けた以上はこのままの生活でいるわけにはいきませんね。陛下と王妃様のおっしゃる通り王族に復帰して、学園卒業後は王宮に戻ります」

「おお、わかってくれたか!」

「ラウロ、あなたなら理解してくれると思っていたわ。あなたはとても賢い子だもの」

 国王様と王妃様は、ラウロ様が憂鬱そうな顔をしているのに気づいていないのか、それとも気づいていても王子に戻ることを了承しさえすればどうでもいいのか、嬉しそうにしていた。

 国王様は機嫌の好い顔でラウロ様を見て言う。


「ラウロ。早速だがお前にいい話があるんだ。隣国、ヨラド王国の第四王女のことは知っているな?」

「? はい、確か末の王女様で、ヨラド国王が大変可愛がっておられる方ですよね」

 ラウロ様は不思議そうな顔で国王様に言葉を返す。
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