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14.王宮へ

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「いいえ。謝らないでください。仕方なかったことだと理解しています。それに私は不自由どころか、兄上たちよりもずっと自由に過ごさせてもらいましたから」

 ラウロ様は申し訳なさそうな顔をする二人に対して、淡々と返す。

 国王様と王妃様は、その言葉を聞いてあからさまにほっとした顔をしていた。

 それから、陛下は私の方に視線を向けた。


「ジュスティーナ・ローレ嬢。君には本当に感謝しているよ。おかげでラウロを第三王子に戻すことが出来る。君には何かお礼をしなければならないな。何か願いはあるか?」

 陛下はにこやかに尋ねてくる。エルダさんが言っていた通り、本当に褒美を渡すために呼ばれたらしい。

 私はすぐさま両手を振った。


「大変ありがたいお言葉ですが、お気遣いなさらないでくださいませ。私の魔法が偶然有効だったというだけで、大したことはしていませんから」

「遠慮することはない。欲しいものが思いつかないなら謝礼金を渡そう。いくらがいい……と聞かれても困るか。3万ルシェでどうだ?」

「そ、そんな、いただけません!」

 私は慌てて断る。3万ルシェなんて、お屋敷一つ買えてしまう金額だ。

 私はどう考えてもそこまでの金額をもらえるようなことはしていない。

 私が断った瞬間、国王様の目が一瞬鋭くなった気がした。

 しかし、すぐににこやかな表情に戻り、柔らかい口調で言う。


「それならば、何が欲しいのか考えておいておくれ。君が望むものを何でも用意しよう。金額を気にする必要はない」

「……ありがとうございます」

 引いてくれる様子がないので、私は仕方なくお礼を言った。何か無難なものを考えておかないなと考えて、そういえばラウロ様にも同じことを言われたことを思い出す。

 出来ることなら、このままお礼の話はなかったことにしてもらいたいくらいだ。


 国王様とその横に座る王妃様は、こちらを満足げに見た後で、改めてラウロ様に向き直った。

「ラウロ、今までお前を王子として扱うことが出来ずすまなかった。すぐにでも王族に復帰させよう。もうあのような屋敷で生活する必要はない。王宮に戻って王族として暮らすのだ」

「せっかく呪いも解けたのだし、これからは今まで一緒にいられなかった分も私たちと過ごしましょうね」

 お二人は明るくそう提案する。

 しかし、ラウロ様はあまり嬉しそうではなかった。むしろ、表情には困惑が浮かんでいる気がする。

 ラウロ様はしばらく迷うように目を伏せた後で、口を開いた。


「……どうしても王宮に戻らなければいけませんか」

 ラウロ様の言葉を聞いて、国王様と王妃様は驚いたように目を見開く。国王様は怪訝な顔で言った。

「嫌なのか?」

「嫌というわけではありませんが、私は今の別邸での暮らしが気に入っているので」

「そんなものは慣れだ。王宮に戻れば、すぐにあんな寂れた屋敷での生活よりも、こちらの暮らしの方がいいと思うようになる」

 国王様はあっさりした態度で言う。

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