32 / 111
6.ダンスパーティ
①
しおりを挟む
あっという間に時間は過ぎて、ダンスパーティーの日がやって来た。
パーティーは夜、学園のホールで行われる。私はどきどきしながら準備をした。
「ジュスティーナ様、とっても似合っていますわ!」
着替えとヘアセットを手伝ってくれていたエルダさんが、手を合わせて明るい声で言った。私はなんだか落ち着かなくて、そわそわとスカートを握る。
ラウロ様が選んでくれたライトグリーンのドレスはとても可愛らしい。だけどやっぱり実際に着てみると気後れしてしまう。
今までこういう少女らしい華やかなドレスを着るのはフェリーチェの特権だと思っていたから、どうしても私が着てもいいのだろうかという思いが消えない。
まだ中等部の頃、珍しく明るいレモン色のドレスを着てルドヴィク様の家を訪れたら、「君には似合わないな」と素っ気ない声で言われたことを思い出す。
もともと自分に可愛らしいドレスが似合うなんて全く思っていなかったけれど、その一言は私にもう絶対に華やかなドレスを選ぶのはやめようと決意させるのに十分だった。
「ジュスティーナ嬢、準備は終わったか? 入ってもいいだろうか」
「あ、はい! どうぞお入りください」
扉の外からラウロ様の声が聞こえ、私は慌てて返事をする。
そうだ、今日はせっかくラウロ様が一緒に出てくれるパーティーなのだ。ルドヴィク様のことなんて思い出して暗くなっている場合ではない。
ガチャリと音がして扉が開く。
扉の向こうから顔を出したラウロ様は、ダークグレーのタキシードを着ていた。ネクタイやハンカチなど、小物のところどころにグリーンが使われている。私のドレスに合わせてくれたのだろう。
正装をしたその姿に思わず見惚れてしまった。なんだかまるで、王子様みたい。
すると、じっと真面目な顔でこちらを見ていたラウロ様の顔がふっと緩んだ。
「思った通り、とてもよく似合っているよ。妖精のようで愛らしいな」
「よ、妖精……!?」
ぼぅっと見惚れていたところで突然そんなことを言われ、顔がぶわりと熱くなった。この人はどうして美しいだとか妖精だとか、照れもせずに真面目な顔で言えるのだろう。
褒められ慣れていない私は何と返したらいいのかわからなくなる。
パーティーは夜、学園のホールで行われる。私はどきどきしながら準備をした。
「ジュスティーナ様、とっても似合っていますわ!」
着替えとヘアセットを手伝ってくれていたエルダさんが、手を合わせて明るい声で言った。私はなんだか落ち着かなくて、そわそわとスカートを握る。
ラウロ様が選んでくれたライトグリーンのドレスはとても可愛らしい。だけどやっぱり実際に着てみると気後れしてしまう。
今までこういう少女らしい華やかなドレスを着るのはフェリーチェの特権だと思っていたから、どうしても私が着てもいいのだろうかという思いが消えない。
まだ中等部の頃、珍しく明るいレモン色のドレスを着てルドヴィク様の家を訪れたら、「君には似合わないな」と素っ気ない声で言われたことを思い出す。
もともと自分に可愛らしいドレスが似合うなんて全く思っていなかったけれど、その一言は私にもう絶対に華やかなドレスを選ぶのはやめようと決意させるのに十分だった。
「ジュスティーナ嬢、準備は終わったか? 入ってもいいだろうか」
「あ、はい! どうぞお入りください」
扉の外からラウロ様の声が聞こえ、私は慌てて返事をする。
そうだ、今日はせっかくラウロ様が一緒に出てくれるパーティーなのだ。ルドヴィク様のことなんて思い出して暗くなっている場合ではない。
ガチャリと音がして扉が開く。
扉の向こうから顔を出したラウロ様は、ダークグレーのタキシードを着ていた。ネクタイやハンカチなど、小物のところどころにグリーンが使われている。私のドレスに合わせてくれたのだろう。
正装をしたその姿に思わず見惚れてしまった。なんだかまるで、王子様みたい。
すると、じっと真面目な顔でこちらを見ていたラウロ様の顔がふっと緩んだ。
「思った通り、とてもよく似合っているよ。妖精のようで愛らしいな」
「よ、妖精……!?」
ぼぅっと見惚れていたところで突然そんなことを言われ、顔がぶわりと熱くなった。この人はどうして美しいだとか妖精だとか、照れもせずに真面目な顔で言えるのだろう。
褒められ慣れていない私は何と返したらいいのかわからなくなる。
426
お気に入りに追加
5,642
あなたにおすすめの小説
姉の婚約者であるはずの第一王子に「お前はとても優秀だそうだから、婚約者にしてやってもいい」と言われました。
ふまさ
恋愛
「お前はとても優秀だそうだから、婚約者にしてやってもいい」
ある日の休日。家族に疎まれ、蔑まれながら育ったマイラに、第一王子であり、姉の婚約者であるはずのヘイデンがそう告げた。その隣で、姉のパメラが偉そうにふんぞりかえる。
「ぞんぶんに感謝してよ、マイラ。あたしがヘイデン殿下に口添えしたんだから!」
一方的に条件を押し付けられ、望まぬまま、第一王子の婚約者となったマイラは、それでもつかの間の安らぎを手に入れ、歓喜する。
だって。
──これ以上の幸せがあるなんて、知らなかったから。
必要ないと言われたので、元の日常に戻ります
黒木 楓
恋愛
私エレナは、3年間城で新たな聖女として暮らすも、突如「聖女は必要ない」と言われてしまう。
前の聖女の人は必死にルドロス国に加護を与えていたようで、私は魔力があるから問題なく加護を与えていた。
その違いから、「もう加護がなくても大丈夫だ」と思われたようで、私を追い出したいらしい。
森の中にある家で暮らしていた私は元の日常に戻り、国の異変を確認しながら過ごすことにする。
数日後――私の忠告通り、加護を失ったルドロス国は凶暴なモンスターによる被害を受け始める。
そして「助けてくれ」と城に居た人が何度も頼みに来るけど、私は動く気がなかった。
はずれのわたしで、ごめんなさい。
ふまさ
恋愛
姉のベティは、学園でも有名になるほど綺麗で聡明な当たりのマイヤー伯爵令嬢。妹のアリシアは、ガリで陰気なはずれのマイヤー伯爵令嬢。そう学園のみなが陰であだ名していることは、アリシアも承知していた。傷付きはするが、もう慣れた。いちいち泣いてもいられない。
婚約者のマイクも、アリシアのことを幽霊のようだの暗いだのと陰口をたたいている。マイクは伯爵家の令息だが、家は没落の危機だと聞く。嫁の貰い手がないと家の名に傷がつくという理由で、アリシアの父親は持参金を多めに出すという条件でマイクとの婚約を成立させた。いわば政略結婚だ。
こんなわたしと結婚なんて、気の毒に。と、逆にマイクに同情するアリシア。
そんな諦めにも似たアリシアの日常を壊し、救ってくれたのは──。
今日も旦那は愛人に尽くしている~なら私もいいわよね?~
コトミ
恋愛
結婚した夫には愛人がいた。辺境伯の令嬢であったビオラには男兄弟がおらず、子爵家のカールを婿として屋敷に向かい入れた。半年の間は良かったが、それから事態は急速に悪化していく。伯爵であり、領地も統治している夫に平民の愛人がいて、屋敷の隣にその愛人のための別棟まで作って愛人に尽くす。こんなことを我慢できる夫人は私以外に何人いるのかしら。そんな考えを巡らせながら、ビオラは毎日夫の代わりに領地の仕事をこなしていた。毎晩夫のカールは愛人の元へ通っている。その間ビオラは休む暇なく仕事をこなした。ビオラがカールに反論してもカールは「君も愛人を作ればいいじゃないか」の一点張り。我慢の限界になったビオラはずっと大切にしてきた屋敷を飛び出した。
そしてその飛び出した先で出会った人とは?
(できる限り毎日投稿を頑張ります。誤字脱字、世界観、ストーリー構成、などなどはゆるゆるです)
hotランキング1位入りしました。ありがとうございます
あなたには、この程度のこと、だったのかもしれませんが。
ふまさ
恋愛
楽しみにしていた、パーティー。けれどその場は、信じられないほどに凍り付いていた。
でも。
愉快そうに声を上げて笑う者が、一人、いた。
私と結婚したくないと言った貴方のために頑張りました! ~帝国一の頭脳を誇る姫君でも男心はわからない~
すだもみぢ
恋愛
リャルド王国の王女であるステラは、絶世の美女の姉妹に挟まれた中では残念な容姿の王女様と有名だった。
幼い頃に婚約した公爵家の息子であるスピネルにも「自分と婚約になったのは、その容姿だと貰い手がいないからだ」と初対面で言われてしまう。
「私なんかと結婚したくないのに、しなくちゃいけないなんて、この人は可哀想すぎる……!」
そう自分の婚約者を哀れんで、彼のためになんとかして婚約解消してあげようと決意をする。
苦労の末にその要件を整え、満を持して彼に婚約解消を申し込んだというのに、……なぜか婚約者は不満そうで……?
勘違いとすれ違いの恋模様のお話です。
ざまぁものではありません。
婚約破棄タグ入れてましたが、間違いです!!
申し訳ありません<(_ _)>
公爵様は幼馴染に夢中のようですので別れましょう
カミツドリ
恋愛
伯爵令嬢のレミーラは公爵閣下と婚約をしていた。
しかし、公爵閣下は幼馴染に夢中になっている……。
レミーラが注意をしても、公爵は幼馴染との関係性を見直す気はないようだ。
それならば婚約解消をしましょうと、レミーラは公爵閣下と別れることにする。
しかし、女々しい公爵はレミーラに縋りよって来る。
レミーラは王子殿下との新たな恋に忙しいので、邪魔しないでもらえますか? と元婚約者を冷たく突き放すのだった。覆水盆に返らず、ここに極まれり……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる