46 / 87
7.お嬢様と私 サイラス視点①
③
しおりを挟む
お嬢様は私に素敵な思い出をたくさんくれた。
たとえば、公爵家に来て半年ほど経った日のこと。
その日、私はお嬢様にお庭で遊びたいと言われ、裏庭の奥まで引っ張って行かれた。
アメル公爵邸の庭は広く、一部は小さな森のようになっている。お嬢様はそこが大のお気に入りで、よく花を摘んだり小動物を探して追いかけ回したりして遊んでいた。
その日もお嬢様は小さな手で私の手を掴み、楽しげに引っ張っていった。
「サイラス、昨日すっごく綺麗な花を見つけたのよ。サイラスにも見せてあげるわね」
「ありがとうございます。楽しみです」
そう言うとお嬢様は得意げな顔になる。そして花のある場所まで急いだ。お嬢様は森に入って少し歩くと、大きな木の根元にしゃがみ込んだ。
「ほら、これ! 綺麗でしょ?」
お嬢様は木の根元に生えた花を指さし、目を輝かせて言った。淡い紫色の美しい花だった。
「本当だ。とても綺麗ですね」
「でしょう? 昨日ね、マリエッタと散歩したときに見つけて、絶対サイラスにも見せたいと思ったの!」
お嬢様は嬉しそうに言う。お嬢様は何か綺麗な物や素敵な物を見つけると、いつも私に教えに来てくれる。
何かを見つけたときにお嬢様が自分を思い浮かべてくれていると思うと、とても幸せな気持ちになった。
「綺麗な紫色をしていますね。まるでお嬢様の目の色みたいです」
花を眺めながら何気なく言うと、突然お嬢様が腕に飛びついて来た。
「本当!? 私の目の色みたい!?」
「はい、綺麗な淡い紫色で……」
「この花ますます気にいっちゃった! 持って帰ろうかしら」
お嬢様はそう言って花をじっと見て、その中で気に入ったらしい二輪を摘んだ。無邪気な仕草に自然と笑みがこぼれる。
「お部屋に飾ったらきっと素敵ですね」
「ええ。窓のところに飾るわ。はい、こっちはサイラスの」
お嬢様はにこにこしながら、二輪のうち一つを差し出した。
「くれるんですか?」
「ええ、お揃いにしましょう。サイラスもお部屋に飾ってね」
お嬢様にもらった花を見つめながら、胸に温かいものが広がるのを感じた。
「ありがとうございます、お嬢様。大切にします」
「うん! 私も宝物にする」
お嬢様はそう言って花を胸の前でぎゅっと抱きしめた。
いつもなら一度外に出ると中々屋敷に戻ろうとしないお嬢様だけれど、今日は「お花を飾る花瓶を探しましょう」と言うとすぐさまついて来た。
倉庫に行ってメイドに小さな花瓶を二つ用意してもらう。
お嬢様は部屋に戻るとすぐさま花瓶を窓のそばに置き、ずっとにこにこ眺めていた。
たとえば、公爵家に来て半年ほど経った日のこと。
その日、私はお嬢様にお庭で遊びたいと言われ、裏庭の奥まで引っ張って行かれた。
アメル公爵邸の庭は広く、一部は小さな森のようになっている。お嬢様はそこが大のお気に入りで、よく花を摘んだり小動物を探して追いかけ回したりして遊んでいた。
その日もお嬢様は小さな手で私の手を掴み、楽しげに引っ張っていった。
「サイラス、昨日すっごく綺麗な花を見つけたのよ。サイラスにも見せてあげるわね」
「ありがとうございます。楽しみです」
そう言うとお嬢様は得意げな顔になる。そして花のある場所まで急いだ。お嬢様は森に入って少し歩くと、大きな木の根元にしゃがみ込んだ。
「ほら、これ! 綺麗でしょ?」
お嬢様は木の根元に生えた花を指さし、目を輝かせて言った。淡い紫色の美しい花だった。
「本当だ。とても綺麗ですね」
「でしょう? 昨日ね、マリエッタと散歩したときに見つけて、絶対サイラスにも見せたいと思ったの!」
お嬢様は嬉しそうに言う。お嬢様は何か綺麗な物や素敵な物を見つけると、いつも私に教えに来てくれる。
何かを見つけたときにお嬢様が自分を思い浮かべてくれていると思うと、とても幸せな気持ちになった。
「綺麗な紫色をしていますね。まるでお嬢様の目の色みたいです」
花を眺めながら何気なく言うと、突然お嬢様が腕に飛びついて来た。
「本当!? 私の目の色みたい!?」
「はい、綺麗な淡い紫色で……」
「この花ますます気にいっちゃった! 持って帰ろうかしら」
お嬢様はそう言って花をじっと見て、その中で気に入ったらしい二輪を摘んだ。無邪気な仕草に自然と笑みがこぼれる。
「お部屋に飾ったらきっと素敵ですね」
「ええ。窓のところに飾るわ。はい、こっちはサイラスの」
お嬢様はにこにこしながら、二輪のうち一つを差し出した。
「くれるんですか?」
「ええ、お揃いにしましょう。サイラスもお部屋に飾ってね」
お嬢様にもらった花を見つめながら、胸に温かいものが広がるのを感じた。
「ありがとうございます、お嬢様。大切にします」
「うん! 私も宝物にする」
お嬢様はそう言って花を胸の前でぎゅっと抱きしめた。
いつもなら一度外に出ると中々屋敷に戻ろうとしないお嬢様だけれど、今日は「お花を飾る花瓶を探しましょう」と言うとすぐさまついて来た。
倉庫に行ってメイドに小さな花瓶を二つ用意してもらう。
お嬢様は部屋に戻るとすぐさま花瓶を窓のそばに置き、ずっとにこにこ眺めていた。
応援ありがとうございます!
43
お気に入りに追加
2,233
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる