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6.王宮への招待
①
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ある時、うちに王宮から招待状が届いた。
なんでも、今度行われる王宮でのパーティーに招待してくれるらしい。
ジャレッド王子に婚約破棄されてから王宮でのパーティーはもちろん、城に一歩足を踏み入れることすら禁じられていた私は突然の招待に首を傾げた。
「どういうことかしらね? サイラス」
「不思議ですね。もしかすると何かの罠なのでは……」
「やっぱりそう思う? 行かないほうがいいかしら。けれど、王族からの招待を断るわけにもいかないし……」
招待状を眺めながら頭を悩ませる。せっかく二人の嘘はそのままにして大人しくしているのだから、構わないでもらいたいものだ。
「……仕方ないわ。多少の嫌がらせは覚悟して参加することにしましょう」
「お嬢様、わかっていてわざわざ行くことはありません。今回の参加は見送りましょう」
「でも、断ったところでまた招待されるでしょうし。面倒なことは早めに済ませてくるわ」
私がそう言ったら、サイラスは何とも言えない顔をする。それでも大丈夫よと笑って言ったら、納得のいかなそうな顔をしながらもうなずいていた。
参加を決めたはいいけれど、すぐに困りごとがでてきた。エスコートしてくれる人がいないのだ。
婚約破棄される前までは、一応はジャレッド王子と一緒にパーティーに参加していた。
もっとも最近の王子は申し訳程度に私と一度だけダンスを踊ると、すぐさまカミリアにつきっきりになっていたのだけれど……。
ほかの人に頼もうにも、貴族社会で腫れ物扱いされている私をエスコートしてくれるような奇特な男性は見つかりそうにない。
部屋で頭を悩ませていると、横からサイラスが言った。
「お兄様のクリス様に頼まれてはいかがですか? クリス様ならとやかく言うような者はいないのではないでしょうか」
「お兄様、来てくれるかしら……。いつもお忙しそうだし、時間を押してまで妹のピンチを助けてくれるような人じゃないのよね……」
一番上の兄クリストファーは、私が婚約破棄されたことを知るといかにも不快そうな顔で、「これ以上の醜聞は避けろよ」と忠告してきた。励ましてくれたりとかは一切なかった。そういう人なのだ。
「それでは、ディラン様に来ていただいてはどうでしょう」
「ディランお兄様かぁ……。うーん、ディランお兄様も協力してくれなそう……」
二番目の兄であるディランお兄様はクリスお兄様よりは私を気遣ってくれて、婚約破棄騒動の後も手紙をくれた。けれど、どうにも自由過ぎる。
現在家を出て遠くの街で暮らしているお兄様が、わざわざ私のために遠方から戻ってきてくれるなんて期待はできそうもなかった。
私の身内は何とも頼りにならない。
サイラスは困り顔になってしまった。真面目な顔でアメル公爵家と関りのある家の貴族の名前を呟きながら考え込んでいる。
「いいわ。伯母様についてきてもらって、エスコートなしで行くから。伯母様は割と私に同情的だから頼めば来てくれると思うの」
「しかし……」
サイラスは心配そうな顔でこちらを見る。
わかっている。多分、こういう状況も予想しての招待なのだろう。
ジャレッド王子とカミリアは、おそらく元は王子の婚約者であった私が一人寂しくパーティーに参加するところを見たいのだ。彼らの思う通りにするのは癪だけれど、どうしようもない。
しかし、横で考えこんでいるサイラスに、私は大丈夫だと言いかけて、ふととてもいいことを思いついた。
なんでも、今度行われる王宮でのパーティーに招待してくれるらしい。
ジャレッド王子に婚約破棄されてから王宮でのパーティーはもちろん、城に一歩足を踏み入れることすら禁じられていた私は突然の招待に首を傾げた。
「どういうことかしらね? サイラス」
「不思議ですね。もしかすると何かの罠なのでは……」
「やっぱりそう思う? 行かないほうがいいかしら。けれど、王族からの招待を断るわけにもいかないし……」
招待状を眺めながら頭を悩ませる。せっかく二人の嘘はそのままにして大人しくしているのだから、構わないでもらいたいものだ。
「……仕方ないわ。多少の嫌がらせは覚悟して参加することにしましょう」
「お嬢様、わかっていてわざわざ行くことはありません。今回の参加は見送りましょう」
「でも、断ったところでまた招待されるでしょうし。面倒なことは早めに済ませてくるわ」
私がそう言ったら、サイラスは何とも言えない顔をする。それでも大丈夫よと笑って言ったら、納得のいかなそうな顔をしながらもうなずいていた。
参加を決めたはいいけれど、すぐに困りごとがでてきた。エスコートしてくれる人がいないのだ。
婚約破棄される前までは、一応はジャレッド王子と一緒にパーティーに参加していた。
もっとも最近の王子は申し訳程度に私と一度だけダンスを踊ると、すぐさまカミリアにつきっきりになっていたのだけれど……。
ほかの人に頼もうにも、貴族社会で腫れ物扱いされている私をエスコートしてくれるような奇特な男性は見つかりそうにない。
部屋で頭を悩ませていると、横からサイラスが言った。
「お兄様のクリス様に頼まれてはいかがですか? クリス様ならとやかく言うような者はいないのではないでしょうか」
「お兄様、来てくれるかしら……。いつもお忙しそうだし、時間を押してまで妹のピンチを助けてくれるような人じゃないのよね……」
一番上の兄クリストファーは、私が婚約破棄されたことを知るといかにも不快そうな顔で、「これ以上の醜聞は避けろよ」と忠告してきた。励ましてくれたりとかは一切なかった。そういう人なのだ。
「それでは、ディラン様に来ていただいてはどうでしょう」
「ディランお兄様かぁ……。うーん、ディランお兄様も協力してくれなそう……」
二番目の兄であるディランお兄様はクリスお兄様よりは私を気遣ってくれて、婚約破棄騒動の後も手紙をくれた。けれど、どうにも自由過ぎる。
現在家を出て遠くの街で暮らしているお兄様が、わざわざ私のために遠方から戻ってきてくれるなんて期待はできそうもなかった。
私の身内は何とも頼りにならない。
サイラスは困り顔になってしまった。真面目な顔でアメル公爵家と関りのある家の貴族の名前を呟きながら考え込んでいる。
「いいわ。伯母様についてきてもらって、エスコートなしで行くから。伯母様は割と私に同情的だから頼めば来てくれると思うの」
「しかし……」
サイラスは心配そうな顔でこちらを見る。
わかっている。多分、こういう状況も予想しての招待なのだろう。
ジャレッド王子とカミリアは、おそらく元は王子の婚約者であった私が一人寂しくパーティーに参加するところを見たいのだ。彼らの思う通りにするのは癪だけれど、どうしようもない。
しかし、横で考えこんでいるサイラスに、私は大丈夫だと言いかけて、ふととてもいいことを思いついた。
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