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4.一度目の世界
⑧
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翌週になるとサイラスはまたやって来た。前回の別れ際と違い、その顔はどこか晴れやかに見える。
「……また来たの? 何も毎週来なくてもいいのに」
本当は来るのをやめて欲しくはないのに、つい素っ気なく言ってしまう。散々見捨てられ裏切られてきた私は、すっかり人を信用するのが下手になっていた。
それなのにサイラスは優しい顔でこちらを見る。
「すみません。お嬢様にお話ししたいことがたくさんあるので、週に一度では足りないくらいなんです。今日は特に聞いて欲しい話があって」
「そう? それなら聞いてあげてもいいけど」
サイラスは私の言葉にうなずくと、後ろにいる見張りを横目で見遣る。
それからそっとこちらに顔を近づけた。仕切りがあるので距離があるが、ぎりぎりまで近づくと、彼は小声で言った。
「お嬢様、ルディ・クレスウェルのことですが」
「え?」
突然出て来た名前に驚く。なぜ今ルディ様の名前が出てくるのだろう。
「彼には気をつけてください。あの方がまた接触しようとしてきても、もう決して会ってはいけませんよ。それから──……」
「おい、会話はこちらに聞こえるように話せ」
後ろから見張りの声が飛んでくる。サイラスはそちらを向いて謝ると、再び私のほうを見て言った。
「わかりましたか?」
「え、ええ……」
どうしてサイラスがそれを、そう聞きたいが、見張りに監視されているので躊躇われる。
「お嬢様、前にまた青空が見たいと言いましたね」
「言ったけれど……」
「きっと見れますよ。楽しみにしていてください」
サイラスはそう言うと、柔らかく笑った。
「そんなはずないじゃない。気休めはやめてよ」
「気休めではないのですが……。その日が来るまで待っていてください」
私が抗議すると、サイラスは困ったような顔でそう言った。
私は処刑が決まっているのだ。そんな日が来るはずないではないか。不満げにサイラスを見るが、サイラスはただ笑うだけだった。
「……また来たの? 何も毎週来なくてもいいのに」
本当は来るのをやめて欲しくはないのに、つい素っ気なく言ってしまう。散々見捨てられ裏切られてきた私は、すっかり人を信用するのが下手になっていた。
それなのにサイラスは優しい顔でこちらを見る。
「すみません。お嬢様にお話ししたいことがたくさんあるので、週に一度では足りないくらいなんです。今日は特に聞いて欲しい話があって」
「そう? それなら聞いてあげてもいいけど」
サイラスは私の言葉にうなずくと、後ろにいる見張りを横目で見遣る。
それからそっとこちらに顔を近づけた。仕切りがあるので距離があるが、ぎりぎりまで近づくと、彼は小声で言った。
「お嬢様、ルディ・クレスウェルのことですが」
「え?」
突然出て来た名前に驚く。なぜ今ルディ様の名前が出てくるのだろう。
「彼には気をつけてください。あの方がまた接触しようとしてきても、もう決して会ってはいけませんよ。それから──……」
「おい、会話はこちらに聞こえるように話せ」
後ろから見張りの声が飛んでくる。サイラスはそちらを向いて謝ると、再び私のほうを見て言った。
「わかりましたか?」
「え、ええ……」
どうしてサイラスがそれを、そう聞きたいが、見張りに監視されているので躊躇われる。
「お嬢様、前にまた青空が見たいと言いましたね」
「言ったけれど……」
「きっと見れますよ。楽しみにしていてください」
サイラスはそう言うと、柔らかく笑った。
「そんなはずないじゃない。気休めはやめてよ」
「気休めではないのですが……。その日が来るまで待っていてください」
私が抗議すると、サイラスは困ったような顔でそう言った。
私は処刑が決まっているのだ。そんな日が来るはずないではないか。不満げにサイラスを見るが、サイラスはただ笑うだけだった。
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