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わがまま令嬢は改心して処刑される運命を回避したい
⑧
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「セアラ様!!!」
その時、突然扉が開いた。
セアラが驚いて顔を上げると、そこには息を切らして立つグレアムがいた。
「グレアム様!!」
「セアラ様、大丈夫ですか!?デズモンド、お前どういうつもりだ!!」
グレアムはデズモンドを睨みつけながら近づいてくる。デズモンドはセアラを押さえつけたまま、グレアムにナイフを向けた。
「邪魔をするな、グレアム。セアラ様をそそのかした上、まだ妨害しようというのか」
「何を言っているんだ?早くセアラ様を離せ!」
「セアラ様はここで私と心中するんだ」
デズモンドはそう言うと、セアラを抱きしめるように自分の方へ引き寄せる。
「心中?何を馬鹿なことを。セアラ様は怯えているじゃないか。早く解放するんだ」
「うるさい!!少しセアラ様とお近づきになれたからっていい気になるなよ。セアラ様は一時の気の迷いが生じていただけだ。
本来のセアラ様は、わがままで浅はかで、人を人とも思わない傲慢な女性なのだ!そんな彼女が最近は目下の者にも礼儀正しく接しているそうではないか。どうせお前がくだらない道徳を説いたせいだろう。単純なセアラ様は、お前にうまく言いくるめられて本来の自分を見失ってしまったのだ!」
デズモンドは熱に浮かされたように、半ば悪口のような言葉を語り始める。傲慢だの浅はかだの単純などという言葉を並べられ、セアラは大いに不満だった。
抗議しようと口を開きかけると、グレアムが先に言葉を発した。
「セアラ様は確かにわがままで浅はかな人だ」
かばってくれるのかと思いきや肯定の言葉が出てきて、セアラは抗議の目でグレアムを見た。しかし、彼は続ける。
「けれどそれが本来のセアラ様なわけではない。彼女は本来きっと純粋な人なんだ。しかし、彼女を咎める者が誰もいなかったため、間違った方向にいってしまった。今の周りを考えられるようになったセアラ様こそ本来の姿なんだと、僕は思う。彼女が浅はかなだけの人なら、そもそも反省して悔い改めようなどと考えるはずない」
グレアムは真剣な顔で言う。セアラは胸が熱くなった。
「うるさい。お前に何がわかる。セアラ様は元々根性が腐っていて、それこそが彼女の美点なのだ。セアラ様の魅力がわかるのは私だけでいい」
デズモンドはそう言うと、グレアムに向けていたナイフをセアラに再びゆっくり近づける。
「さぁ。セアラ様。一緒に遠い世界にいきましょう。大丈夫です。私は傲慢な貴女を愛してあげますからね」
デズモンドはさっきまでとは打って変わった甘い声で言う。
グレアムが焦った声で止めろ、と叫ぶのが聞こえた。しかし、ナイフはどんどんセアラに迫って来る。
そして──……。
「いいかげんにしてください!!!」
セアラはそう叫ぶと、左手でナイフを持ったデズモンドの手を掴み、もう片方の手で思いきりデズモンドの頬を殴った。
全く構えていないところに拳を入れられ、デズモンドはよろめいて床に倒れる。
「セ、セアラ様、なぜ……」
「なぜじゃないですわ!!どうして私が貴方と心中しなければならないんですの!!ふざけないでくださる!!?」
仁王立ちで怒鳴り声を上げるセアラを、デズモンドは下から呆然と眺める。
「セアラ様だって私が好きだったはずだ!!やはりグレアムにそそのかされたせいなのですか!?私なら貴女の欠点も含めて全て愛してあげられます!!こんな男の言うことなど聞く必要はありません!!」
「さっきから何なんですの!そそのかされたとか騙されているとか!私は自分で考えてグレアム様に意見を聞いているだけですわ!貴方、私の欠点を愛してくれるなどと言いますけれど、私の変化は全く受け入れてくれていないじゃないですか!!」
セアラは怒りに頬を紅潮させながら叫ぶ。
「今後一切私に近づかないでくださいまし!心中に巻き込もうとする男なんてごめんですわ!!」
セアラは倒れているデズモンドに向かってそう叫ぶと、側で呆然としているグレアムの腕を引っ張って外に出た。
その時、突然扉が開いた。
セアラが驚いて顔を上げると、そこには息を切らして立つグレアムがいた。
「グレアム様!!」
「セアラ様、大丈夫ですか!?デズモンド、お前どういうつもりだ!!」
グレアムはデズモンドを睨みつけながら近づいてくる。デズモンドはセアラを押さえつけたまま、グレアムにナイフを向けた。
「邪魔をするな、グレアム。セアラ様をそそのかした上、まだ妨害しようというのか」
「何を言っているんだ?早くセアラ様を離せ!」
「セアラ様はここで私と心中するんだ」
デズモンドはそう言うと、セアラを抱きしめるように自分の方へ引き寄せる。
「心中?何を馬鹿なことを。セアラ様は怯えているじゃないか。早く解放するんだ」
「うるさい!!少しセアラ様とお近づきになれたからっていい気になるなよ。セアラ様は一時の気の迷いが生じていただけだ。
本来のセアラ様は、わがままで浅はかで、人を人とも思わない傲慢な女性なのだ!そんな彼女が最近は目下の者にも礼儀正しく接しているそうではないか。どうせお前がくだらない道徳を説いたせいだろう。単純なセアラ様は、お前にうまく言いくるめられて本来の自分を見失ってしまったのだ!」
デズモンドは熱に浮かされたように、半ば悪口のような言葉を語り始める。傲慢だの浅はかだの単純などという言葉を並べられ、セアラは大いに不満だった。
抗議しようと口を開きかけると、グレアムが先に言葉を発した。
「セアラ様は確かにわがままで浅はかな人だ」
かばってくれるのかと思いきや肯定の言葉が出てきて、セアラは抗議の目でグレアムを見た。しかし、彼は続ける。
「けれどそれが本来のセアラ様なわけではない。彼女は本来きっと純粋な人なんだ。しかし、彼女を咎める者が誰もいなかったため、間違った方向にいってしまった。今の周りを考えられるようになったセアラ様こそ本来の姿なんだと、僕は思う。彼女が浅はかなだけの人なら、そもそも反省して悔い改めようなどと考えるはずない」
グレアムは真剣な顔で言う。セアラは胸が熱くなった。
「うるさい。お前に何がわかる。セアラ様は元々根性が腐っていて、それこそが彼女の美点なのだ。セアラ様の魅力がわかるのは私だけでいい」
デズモンドはそう言うと、グレアムに向けていたナイフをセアラに再びゆっくり近づける。
「さぁ。セアラ様。一緒に遠い世界にいきましょう。大丈夫です。私は傲慢な貴女を愛してあげますからね」
デズモンドはさっきまでとは打って変わった甘い声で言う。
グレアムが焦った声で止めろ、と叫ぶのが聞こえた。しかし、ナイフはどんどんセアラに迫って来る。
そして──……。
「いいかげんにしてください!!!」
セアラはそう叫ぶと、左手でナイフを持ったデズモンドの手を掴み、もう片方の手で思いきりデズモンドの頬を殴った。
全く構えていないところに拳を入れられ、デズモンドはよろめいて床に倒れる。
「セ、セアラ様、なぜ……」
「なぜじゃないですわ!!どうして私が貴方と心中しなければならないんですの!!ふざけないでくださる!!?」
仁王立ちで怒鳴り声を上げるセアラを、デズモンドは下から呆然と眺める。
「セアラ様だって私が好きだったはずだ!!やはりグレアムにそそのかされたせいなのですか!?私なら貴女の欠点も含めて全て愛してあげられます!!こんな男の言うことなど聞く必要はありません!!」
「さっきから何なんですの!そそのかされたとか騙されているとか!私は自分で考えてグレアム様に意見を聞いているだけですわ!貴方、私の欠点を愛してくれるなどと言いますけれど、私の変化は全く受け入れてくれていないじゃないですか!!」
セアラは怒りに頬を紅潮させながら叫ぶ。
「今後一切私に近づかないでくださいまし!心中に巻き込もうとする男なんてごめんですわ!!」
セアラは倒れているデズモンドに向かってそう叫ぶと、側で呆然としているグレアムの腕を引っ張って外に出た。
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