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私は公爵令嬢アマリリスとして転生した。夢見た魔法と剣の世界。しかも貴族…!
顔立ちも悪くないとはついている。
あまり自由な立場ではないと言え、憧れた世界。さっそく魔法を極めようした。
が、すぐに自分の才能の無さに気がついた。
次は剣だ。もしかしたらすごい運動能力を持っているのかもと努力を惜しまなかったが、分かったのは筋力がつかない身体だということ。
陰の努力でどうにかなるレベルではなかった。落ち込みはしたが、そういうものだと諦めた。
真面目に貴族令嬢をしばらくやっていたのだが、ある時誘拐された。
─1周目─
「…いた…っ」
乱暴に床に落とされた。前に倒れている男は血に染まっていた。
呆然としたが、ふと自分を見つめている男の存在に気がついた。
整った顔を歪めて男は言った。
「─ようこそアマリリス。大したもてなしはできないが…」
「……」
「─怯えているのか?かわいいな」
男は白々しい口調で言った。だが一つはっきりしていたのは、機嫌を損ねれば殺されるということ。
私は黙っていることにした。
「─面白くない…何か話してみろ」
私は無視をした。
男のナイフが視界の端できらめいた。そこで記憶は途切れている。
─2周目─
思い出したが、他人の記憶のようで恐怖は感じない。私の脳はポンコツらしい。
今度の生まれは平民だった。名前は同じアマリリス。
貴族でもない今生では、あの危険な男に狙われることはないだろうと安心した。
空いている時間に、薬草の勉強をする毎日。特に毒の勉強に力を入れた。
役に立つかは分からなかったが、何か武器が欲しかった。魔法と剣以外で。
18になり薬草を売る行商人として生きていくことを決めた。冒険者気分を味わいたかったから。
その考えは甘かった。野宿をしていて、盗賊に襲われたのだ。
私は彼らのアジトに連れていかれ、またあの男と再開する。
(嘘でしょ?)
うんざりしたが、以前の失敗は繰り返すまいと男の質問には答えることにした。
「─災難だったな」
「…そうね」
男は愉しそうに言った。
「─俺の女になるか?」
「は?」
「嫌ならいい。部下たちに喜んで譲ろう」
「…どちらもお断りよ」
「─頭の悪い女は嫌いだ」
そう男が言い、ナイフの残像が見えたときには全て終わっていた。
─3周目─
また貴族の娘として生まれた。
いい加減うんざりしたので引き籠り人生を謳歌することにした。
…ご想像通り殺られた。
─4周目─
裕福な商人の娘に生まれた。
さすがに大いなる存在の意思を感じたので、ループしてしまう意味を考えた。
あの男を更正させることが使命だと思った。
危ない橋を渡り、男の情報を集めていく。
盗賊集団のボスらしいと分かり、会いにいくことを決めた。
「待ってなさい!」
しかし、そう簡単に物事は進まなかった。
「こそこそと嗅ぎ回られるのは嫌いだ」
男の声を背後で聞いたときには─以下略。
─5周目─
私は決意した。男が私をさらいに来るのを待ってから考えよう…。
満月のきれいな晩、男はようやく訪れた。
「待ちくたびれたわよ」
「─俺を待っていたのか?変わった女だ」
にやりと笑われぞくりとしたが、強気な姿勢は崩さなかった。
「あなたを更正させてやる!」
「フハハハハ」
「何がおかしいの?」
男はそれには応えず、思いのほか優しく私の手をとった。
私はようやく長生きできそうだと満足し、
いざとなったら毒を盛ってやろうと考えた。
男と女の戦いは始まったばかりだったが、それはまた別の話。
顔立ちも悪くないとはついている。
あまり自由な立場ではないと言え、憧れた世界。さっそく魔法を極めようした。
が、すぐに自分の才能の無さに気がついた。
次は剣だ。もしかしたらすごい運動能力を持っているのかもと努力を惜しまなかったが、分かったのは筋力がつかない身体だということ。
陰の努力でどうにかなるレベルではなかった。落ち込みはしたが、そういうものだと諦めた。
真面目に貴族令嬢をしばらくやっていたのだが、ある時誘拐された。
─1周目─
「…いた…っ」
乱暴に床に落とされた。前に倒れている男は血に染まっていた。
呆然としたが、ふと自分を見つめている男の存在に気がついた。
整った顔を歪めて男は言った。
「─ようこそアマリリス。大したもてなしはできないが…」
「……」
「─怯えているのか?かわいいな」
男は白々しい口調で言った。だが一つはっきりしていたのは、機嫌を損ねれば殺されるということ。
私は黙っていることにした。
「─面白くない…何か話してみろ」
私は無視をした。
男のナイフが視界の端できらめいた。そこで記憶は途切れている。
─2周目─
思い出したが、他人の記憶のようで恐怖は感じない。私の脳はポンコツらしい。
今度の生まれは平民だった。名前は同じアマリリス。
貴族でもない今生では、あの危険な男に狙われることはないだろうと安心した。
空いている時間に、薬草の勉強をする毎日。特に毒の勉強に力を入れた。
役に立つかは分からなかったが、何か武器が欲しかった。魔法と剣以外で。
18になり薬草を売る行商人として生きていくことを決めた。冒険者気分を味わいたかったから。
その考えは甘かった。野宿をしていて、盗賊に襲われたのだ。
私は彼らのアジトに連れていかれ、またあの男と再開する。
(嘘でしょ?)
うんざりしたが、以前の失敗は繰り返すまいと男の質問には答えることにした。
「─災難だったな」
「…そうね」
男は愉しそうに言った。
「─俺の女になるか?」
「は?」
「嫌ならいい。部下たちに喜んで譲ろう」
「…どちらもお断りよ」
「─頭の悪い女は嫌いだ」
そう男が言い、ナイフの残像が見えたときには全て終わっていた。
─3周目─
また貴族の娘として生まれた。
いい加減うんざりしたので引き籠り人生を謳歌することにした。
…ご想像通り殺られた。
─4周目─
裕福な商人の娘に生まれた。
さすがに大いなる存在の意思を感じたので、ループしてしまう意味を考えた。
あの男を更正させることが使命だと思った。
危ない橋を渡り、男の情報を集めていく。
盗賊集団のボスらしいと分かり、会いにいくことを決めた。
「待ってなさい!」
しかし、そう簡単に物事は進まなかった。
「こそこそと嗅ぎ回られるのは嫌いだ」
男の声を背後で聞いたときには─以下略。
─5周目─
私は決意した。男が私をさらいに来るのを待ってから考えよう…。
満月のきれいな晩、男はようやく訪れた。
「待ちくたびれたわよ」
「─俺を待っていたのか?変わった女だ」
にやりと笑われぞくりとしたが、強気な姿勢は崩さなかった。
「あなたを更正させてやる!」
「フハハハハ」
「何がおかしいの?」
男はそれには応えず、思いのほか優しく私の手をとった。
私はようやく長生きできそうだと満足し、
いざとなったら毒を盛ってやろうと考えた。
男と女の戦いは始まったばかりだったが、それはまた別の話。
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