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怒りと気づき

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(勘違いかもしれないけど、私が男にやられそうになってた時…悪魔はどこか苦しげだった…。)

 それを見て、なんだか胸が苦しくなって…。
ただの自惚れにすぎないのだろうか?
マリーは自問する。

─ただそれはこの恐ろしい状況からの現実逃避の意味もあった。

 悪魔がぞっとするような瞳で見つめてくる。軽口をたたかれた方がどんなに気楽だったか…。

「人間の男の味はどうだった?」

黙っているしかできないマリーに舌打ちを一つ。悪魔は言った。

「狙っている獲物を横から掠め取られそうになることほど、腹立たしいものはないな?
…分かるだろ?」

 言い聞かせるかのような口調だと感じてしまう自分はどこかおかしい。まるで彼は別の感情を認めまいとしているようで…。
 マリーは血迷った。

「どうしたら…許してくれる?」

「許す?俺がお前を?笑わせる。俺はただ好きなように振る舞うだけだ。」

 悪魔に弁解する必要など欠片もないのになぜだか謝りたくなった。今夜は悪魔の好きにさせようと殊勝な気持ちになってしまうほどに。
 もちろん後悔することになるのもいつも通りだ。

*********

「う…ふぁ…あっ…んん」

 少し乱暴な手つきで触られる。
今夜は触手だの媚薬だのアブノーマルなものは無しか…。マリーが冷静に考えていられたのは、それが最後だった。

 悪魔に開発された身体は、呆れるぐらいに少しの刺激にも敏感に反応し、後ろめたさや先程の熱の燻りくすぶり等色々なものが合わさってもう一杯一杯だった。

「足を自分で抱えてろ。」

 悪魔がマリーに命令する。蜜はだらだらと流れている。彼に向かって剥き出しの秘部をあらわにする格好に自らなれと強制されているというのに身体は素直に従う。命令されることに慣れたというよりは深く考えられないようになっていただけだった。

 そのままでいろよとの言葉と共にいきなり2本の指を捩じ込まれる。ぐりぐりと押し広げられる。バラバラな動きに翻弄されて、胸は揺れ腰が勝手に動く。抱えていた足も離してしまう。

「誰が勝手に離していいと言った?」

 そうして裏返される。

「四つん這いになって頭を低くしろ。少しでも動いたら今日は終わりだ…」

 いつの間にか立場が逆転している。

 精一杯我慢して腰を高く突き出したままの状態を維持する。快感を逃せず、喘ぎ声と自身の秘所をグチュグチュとかき回す音だけが聞こえる。

 今夜はまだ一度も達していないという事実が彼女を追い詰めていく。

 そして何の前触れもなくその時が訪れた。

ずりゅっ!

「…ぐ…くっ…は…あああ、ッッーー」

 息が一瞬止まる。硬いものがメリメリと音を立てながら奥へ奥へと入ってくる。

「やだっ…痛っ、や、ぬ、ぬいてッ…!!」

 入り口が裂けるかのような感覚に悲鳴が上がる。先程の恐怖が甦る。あるところで行き詰まったが、逃げようとする腰を引き寄せられその何かは無理やり突き破られた。

 悪魔の熱杭が奥の奥まで突き刺さる。荒い息を吐きながらなんとか落ち着こうとするも悪魔はもちろん待ちはしない。

「まずは一度目。夜は長い…。せいぜい楽しませろよ?」

 一度目。
 ─その意味が分かるのはさんざんいたぶられた後のことだった。痛みが勝っていた身体がある所を擦るときもちがいいということに気付き始める。そこを中心に攻め立てられ、喘ぐしかできないマリーはやわやわと揉まれる胸や秘芽への刺激にも苛まれながら身体の内側にある熱に翻弄され続けた。

 悪魔が自身の一物をずるりと抜き出したときやっと終わったとほっとしたマリーは次の瞬間絶望する。

 悪魔が指をパチンと鳴らした。

 痛みが消えたことに喜んだのも束の間、それが意味する本当のことを理解するに至り顔が青ざめた。

 処女膜の再生に他ならなかった。

「ごめっな、さ…も、やっ…やあ…」 

 終いには泣き出したマリーを見てなぜか悪魔は中断した。

 そしてまたもや痛みを消すと沈痛な面持ちで黙った。

(いくら蹂躙しても楽しめない…。俺はお前に何を望むのか…。)

 悪魔は初めて感じる感情に戸惑っていた。
涙の名残を見せながらマリーが悪魔の頬に触れた。

「なんだか泣いてるみたいね。」

「…馬鹿なことを。」

 そして言った。迷ったのは一瞬。ただマリーは一歩を踏み出してしまった。

「私、あなたのこと…好きかもしれない。」

「頭がおかしくなったのか?それとも酷くされて喜ぶ変態か?」

「なんとでも言って。自分でも馬鹿だって分かってる。でも…でもあなたに惹かれるの。どうしようもないわ。」

 悪魔は黙ってマリーを見つめた。

 恋だの愛だの悪魔は信じはしない。そう生きてきたのだから。ただこの女を痛みで支配するのはつまらない。喘がせ狂わせ請わせたい。この気持ちが恋ならば、目の前の女は馬鹿にもほどがある…。

「付き合ってやるよ。その茶番に。」

 口ではそう言いながらも悪魔はどこか吹っ切れたような笑みを浮かべていた。

「別の趣向も色々と試したいしな。一晩中付き合ってもらうぞ。」

 不敵な笑みを浮かべる悪魔を見てマリーは愚かにも思った。
─逃れられないと。
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