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快楽への誘惑
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「…こんなはずじゃなかったのに。」
マリーは自室のベッドに横たわり、疲れた身体を休めていた。
憧れていた魔法と剣の世界に飛ばされて自由に生きるぞ、と決めたはいいものの…。
生来の臆病な性格が邪魔をして、恋人はおろか親しい友人もつくれずにいた。
曲がりなりにも聖女の力を持つ自分が生きていけなくなることはないだろうけど、孤独は埋められそうにない。
そんな心の隙間に魔が入り込んだ。
ちらりと見るのはベッド脇に置かれた一冊の本。
真っ黒な表紙に謎の紋様。いかにも妖しげだが、巷で話題の代物だという。
─悪魔を呼び出すものとして。
眉唾物だと思ったが、疲れた心に忍び寄ってくる抗いがたい何かに身を任せることにした。
説明通りに血を一滴。流れたものが表紙に染み込んだ途端、黒い煙と共にそれは現れた。
悪魔と呼ぶにはあまりにも可愛らしい。魔物とも呼べる存在。
「何をお望みですか?」
耳と尻尾を生やした魔物は、ぱたぱたと空中を飛びながら私に問いかけた。
思わず胸に抱いてしまうが、魔物は何も言わない。
「望みは何ですか?」
繰り返し同じ意味のことを言われ、寂しくなる。
「身体を癒してほしいの。」
気づけばそう口に出していた。
「それでは服を脱いで、うつ伏せになってください。」
疑問には思ったが、言う通りにする。するすると服を脱ぎ、地面に落とす。
「下着も?」
「どちらでも。」
結局下着はそのままにすることにした。うつ伏せの状態で一息つく。
すると魔法の力なのか、辺りが暗闇に包まれる。完全な闇ではなく蝋燭で灯されたような明るさ。
「ご主人様準備が整いました。」
マリーは魔物の言葉に違和感を覚えた。まるで自分以外の誰かに向けて喋っているような…。
そう気づいたところで、何者かに背中を押さえられていることに気づく。人型の手に。
「きゃ」
危うく叫び出しそうになったところで、低い声が耳に入る。
「落ち着け。身体を楽にしたいんだろ。」
首だけ後ろを振り向くと、外見のつくりは人とそう変わらないものの恐ろしいほど整った顔が自分を見ていた。
頭からは角を生やし、片端を引き上げてにやりと笑う。その姿はまさしく人間が想像する悪魔そのもの。
恐怖で何も言えずにいると
「くくっ。まあまあ落ち着けよ。お前が俺を呼んだんだろ。」
悪魔の言葉に瞬時に後悔した。はなから本を信じなかった自分の愚かさを呪う。
「まあ任せろって。」
私が何かを言う前に悪魔は動き出した。
思いの外優しく首から肩、背中の凝りを解される。
思わずふぅと力を抜いてしまう。先程の恐怖はどこへやら、うとうととし始めたところでいきなりの刺激に身体が跳ねた。
「んやっ…どこさわって」
「どこって。ちょっと尻に掠めただけだろ。力抜いとけ。」
そう言われては何も言えない。大人しくしていると、滑りとしたもので背中を解される。花のような香りがする。
アロマオイルかなと思いつつ、あまりの気持ちよさに目を閉じる。これは流行るのも分かるなと思いつつ。
マリーが余裕を保てたのはここまでだった。
オイルのようなものを背中に塗られながら、ブラジャーの留め具はあまりにも自然に外されていた。
胸の横ぎりぎりまで、丹念に刷り込まれ弛緩した筋肉が気持ちよさを訴える。
このままその状態が続くのかと思いきやあるところから様子が変わってきた。
「…はぁ……ん…ゃあ」
微かな声が止まらない。優しく悪魔の指が掠めるたび声が出てしまう。
「もっと…強く…ても…うぅ…だいじょぶ」
何か変なことを言っただろうか?ソフトタッチではこの恥ずかしい声が止まらない。一刻も早く元の強さに戻してほしい。
顔は見えないが、悪魔の空気が濃くなった気がした。
「お望みのままに。」
少しばかり力強くなった手が腰回り、臀部を解す。力加減は自分が望んだもののはずなのに、身体の中心から疼くような何かが責め立てる。
「…んぅ…じょう…はん…しんを」
何とか口にする。
「我儘なお姫様だ。では仰向けに。」
くるりとひっくり返され、胸が露になる。慌てて隠すと、気にした様子もなく手を元の位置に戻された。
いやいやとまた手を胸に戻しかけると力強い瞳で見つめられる。動くなと。瞳が雄弁に語っていた。何もできず、手を握りしめる。
気持ちがいい。それは間違いない。首から鎖骨まで丁寧に程よい強さで擦られ、解される。胸の中心には決して触れず、柔やわと悪魔の手が触れる。
身体を捻りつつ唇を噛む。それでも抑えられない声が漏れては消えた。
前いた世界でも今の世界でもマリーに身体を繋げた経験はない。それなのに…。このままでは変なことを言ってしまいそうだ。
「いいのか?もっと気持ちよくなれるぞ。」
私の考えを読んだかのように悪魔が誘惑する。
「言えよ。」
決して声は大きくないのに抗えない。口を開きかけたところで
「ちっ…時間切れか。」
その言葉と共に悪魔の姿は消えた。時計は真夜中の12時を指し示している。
─また私はあの本を使ってしまうのだろう。それが恐ろしく、同時に…。
マリーはその先を考えないようにして、眠るべく目を無理やり閉じるのだった。濡れている下着に気づかない振りをして。
マリーは自室のベッドに横たわり、疲れた身体を休めていた。
憧れていた魔法と剣の世界に飛ばされて自由に生きるぞ、と決めたはいいものの…。
生来の臆病な性格が邪魔をして、恋人はおろか親しい友人もつくれずにいた。
曲がりなりにも聖女の力を持つ自分が生きていけなくなることはないだろうけど、孤独は埋められそうにない。
そんな心の隙間に魔が入り込んだ。
ちらりと見るのはベッド脇に置かれた一冊の本。
真っ黒な表紙に謎の紋様。いかにも妖しげだが、巷で話題の代物だという。
─悪魔を呼び出すものとして。
眉唾物だと思ったが、疲れた心に忍び寄ってくる抗いがたい何かに身を任せることにした。
説明通りに血を一滴。流れたものが表紙に染み込んだ途端、黒い煙と共にそれは現れた。
悪魔と呼ぶにはあまりにも可愛らしい。魔物とも呼べる存在。
「何をお望みですか?」
耳と尻尾を生やした魔物は、ぱたぱたと空中を飛びながら私に問いかけた。
思わず胸に抱いてしまうが、魔物は何も言わない。
「望みは何ですか?」
繰り返し同じ意味のことを言われ、寂しくなる。
「身体を癒してほしいの。」
気づけばそう口に出していた。
「それでは服を脱いで、うつ伏せになってください。」
疑問には思ったが、言う通りにする。するすると服を脱ぎ、地面に落とす。
「下着も?」
「どちらでも。」
結局下着はそのままにすることにした。うつ伏せの状態で一息つく。
すると魔法の力なのか、辺りが暗闇に包まれる。完全な闇ではなく蝋燭で灯されたような明るさ。
「ご主人様準備が整いました。」
マリーは魔物の言葉に違和感を覚えた。まるで自分以外の誰かに向けて喋っているような…。
そう気づいたところで、何者かに背中を押さえられていることに気づく。人型の手に。
「きゃ」
危うく叫び出しそうになったところで、低い声が耳に入る。
「落ち着け。身体を楽にしたいんだろ。」
首だけ後ろを振り向くと、外見のつくりは人とそう変わらないものの恐ろしいほど整った顔が自分を見ていた。
頭からは角を生やし、片端を引き上げてにやりと笑う。その姿はまさしく人間が想像する悪魔そのもの。
恐怖で何も言えずにいると
「くくっ。まあまあ落ち着けよ。お前が俺を呼んだんだろ。」
悪魔の言葉に瞬時に後悔した。はなから本を信じなかった自分の愚かさを呪う。
「まあ任せろって。」
私が何かを言う前に悪魔は動き出した。
思いの外優しく首から肩、背中の凝りを解される。
思わずふぅと力を抜いてしまう。先程の恐怖はどこへやら、うとうととし始めたところでいきなりの刺激に身体が跳ねた。
「んやっ…どこさわって」
「どこって。ちょっと尻に掠めただけだろ。力抜いとけ。」
そう言われては何も言えない。大人しくしていると、滑りとしたもので背中を解される。花のような香りがする。
アロマオイルかなと思いつつ、あまりの気持ちよさに目を閉じる。これは流行るのも分かるなと思いつつ。
マリーが余裕を保てたのはここまでだった。
オイルのようなものを背中に塗られながら、ブラジャーの留め具はあまりにも自然に外されていた。
胸の横ぎりぎりまで、丹念に刷り込まれ弛緩した筋肉が気持ちよさを訴える。
このままその状態が続くのかと思いきやあるところから様子が変わってきた。
「…はぁ……ん…ゃあ」
微かな声が止まらない。優しく悪魔の指が掠めるたび声が出てしまう。
「もっと…強く…ても…うぅ…だいじょぶ」
何か変なことを言っただろうか?ソフトタッチではこの恥ずかしい声が止まらない。一刻も早く元の強さに戻してほしい。
顔は見えないが、悪魔の空気が濃くなった気がした。
「お望みのままに。」
少しばかり力強くなった手が腰回り、臀部を解す。力加減は自分が望んだもののはずなのに、身体の中心から疼くような何かが責め立てる。
「…んぅ…じょう…はん…しんを」
何とか口にする。
「我儘なお姫様だ。では仰向けに。」
くるりとひっくり返され、胸が露になる。慌てて隠すと、気にした様子もなく手を元の位置に戻された。
いやいやとまた手を胸に戻しかけると力強い瞳で見つめられる。動くなと。瞳が雄弁に語っていた。何もできず、手を握りしめる。
気持ちがいい。それは間違いない。首から鎖骨まで丁寧に程よい強さで擦られ、解される。胸の中心には決して触れず、柔やわと悪魔の手が触れる。
身体を捻りつつ唇を噛む。それでも抑えられない声が漏れては消えた。
前いた世界でも今の世界でもマリーに身体を繋げた経験はない。それなのに…。このままでは変なことを言ってしまいそうだ。
「いいのか?もっと気持ちよくなれるぞ。」
私の考えを読んだかのように悪魔が誘惑する。
「言えよ。」
決して声は大きくないのに抗えない。口を開きかけたところで
「ちっ…時間切れか。」
その言葉と共に悪魔の姿は消えた。時計は真夜中の12時を指し示している。
─また私はあの本を使ってしまうのだろう。それが恐ろしく、同時に…。
マリーはその先を考えないようにして、眠るべく目を無理やり閉じるのだった。濡れている下着に気づかない振りをして。
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