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日常編

適性

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(─姫さん。騙されまくりっすわ…
こりゃあ…腹の中まで真っ黒黒だ)

決してローズには見せないだろう邪悪な顔を隠しもせずフィリップは、レイに向かって、片頬をつり上げて見せた。

(さ、て─どうしたもんかな)

挑発に乗るのは簡単だ。しかし、ローズがこの天使の皮を被った悪魔を目に入れても痛くないほどに愛していることを思うと、これ以上の関係悪化は損でしかない…。

今後の展開も考えて、ここは自分が大人になるべきだとレイが口を開こうとしたとき─

「だんまり、ね…。そうだ僕も言ってあげようか?ねぇ“お・に・い・ちゃ・ん”」

「!!」

思わぬところからきた衝撃に表情が崩れる。それを見逃すフィリップではなかった。

「なにを…」

「ああ今さら隠さなくてもいいよ。さっき、見たんだよね。ふふ…でもびっくりだな。そんな飄々としてるくせに、まさかの年下好き...笑っちゃ─」

「誤解しないでほしいっすね。俺が好きなのは年下のかわいい女の子─つまり“妹”っす」

そこを勘違いされては困ると、はっきり言ったレイを、フィリップが引いた目で見つめる。

「うわ…」

「何とでもお好きに。その点、姫さんはかわいくて最高っすわ」

フィリップの額に青筋が浮かぶ。

「…姉さんのこと、変な目で見ないでくれる?」

「いやいやいや。俺ほど安全な奴います?
決して邪な目で見ることなく、純粋に慈しむべき存在として見てるんす。護衛としての適性ありません?」

「………」

フィリップが黙ったのを、ここが説得する好機と、レイは畳み掛けるように話し始める。

「そもそもあんなに可愛らしい姫さんに護衛の一人も付いてないのは心配っす。
この家、きな臭いとこあるし危ないっすよ」

(だから、その…気に食わないって顔、
そろそろ止めてくれないっすかね?)

中々手強い相手に、誓ってみせる。

「女として見ないんで…!」

「はあ?そんなの当たり前でしょ」

「…あ、そうっすね」

「じゃあ、命懸けで守ってよ。傷の一つでもつけたら─」

ピリッとした殺気がレイの肌を刺す。

(その年で…こんな。ほんと、こわ!)

許さないから殺すからね」

「…了解」

本音聞こえたわと、レイが乾いた笑いを漏らす。元より全力で守るつもりだったが、これは更に気を引き締めないとダメだろう。

学園にも付いていくつもりだ。まあ、この姿のままではいられないが…。

なんとか切り抜けられそうな気配にレイは、安堵した。 



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