ヤンデレ義弟に殺されるなど真っ平ごめんです

ぴぴみ

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日常編

魔王

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俺は、うろうろと姫さんの部屋を意味もなく歩いていた。

(遅い。あまりにも遅すぎる。そろそろ他の監視にもバレる。合図はまだか?)

考えるのは、同じこと。弱味につけこまれ、渋々フィリップの部屋に送り届けはしたが、子爵にバレればただじゃ済まないだろう。

あくまでも俺は雇われの身。いざとなれば逃げるが、意外にも姫さんの側を居心地よく思い始めてしまっている自分も、どこかにいて…。

この後の任務的にも、今切られたくはない…。

そんな風に考え込んでいると、チリンと俺にだけ聞こえる合図がした。やっと魔道具を使ってくれたかと瞬時に移動する。

しかし、そこで待ち受けていた魔王の姿を見て心の内で嘆くも体は勝手に動いた。

(姫さん…!何、しでかしてくれたんすか!?)

**

「ねぇ…フィル。本当にこんな格好する必要ある?」

「ちょっとしたイタズラだよ。きっと驚いてくれると思うな」

楽しそうなフィリップにそれ以上言えなくなったが、冷静に考えるとやっぱりおかしい気がする。

─何で、押さえ込まれているんだろうか。

頭上にて両手は固定され、びくともしない。ソファに仰向けに倒れ、フィリップを見上げる。

「レイはこんなことじゃ驚かないと思うけど…」

「そうかな?」

そう言ってフィルがくすりと笑う。蒼い瞳が徐々に近づいてきた。

「ちょーっと近いかなって」

「大丈夫だよ。さっき合図したよね?レイがもう─」

言い終わる前に、黒い影がすっと横切った気がした。

ガチッ

「あら、レイ」

「あら…じゃないっすよ!何、襲われてるんすか!?」
 
「ただのおふざけよ」

「はぁ!?」

和やかに会話するも、レイはフィリップに向けたフォークを離さない。

「……僕のこと忘れてない?」

フィリップは、どこからか取り出したナイフを、片手でくるくると弄んでいる。

「フォークとナイフなんて、二人ともどこから持ち出したの?危ないからしまって」

「先に攻撃したのは、あいつだよ?僕は防いだだけ」

「いやいやいや。嘘つかないでくださいっす。本気で狙いに来てましたよね?」

レイを慌てさせるのには成功したが、これじゃあ仲良くなれそうにない。

こういう時、なんて言うんだっけ?
あ、そうだ!

「二人とも、ステイ…!」

いや、違う。これ、犬に言う奴だ。







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