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日常編
思索
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一気に高まった興奮もおさまり、徐々に落ち着きを取り戻す。
心の中の嵐はまだ完全に去ってはいなかった。
そんな私を見てフィリップが言う。
「手、汚れちゃったよね?」
確かに、直にオレンジを掴まされた右手は
少しベトついていた。
しかし、今重要なのはそこじゃない。
私は声を大にして言いたい。
さっき、あなたがしたことちゃんと分かってる?
レディー(ではないけど)の手を自分の口元に持っていくだなんて…!
私の紅潮した頬を見てフィリップは満足そうに笑う。
いや、えっと。
楽しそうな推しを見るのは嬉しいし有難い。ただ、私には手が余るようになってきてはいないか?
精神年齢も余裕で勝っているはずなのに、
何故かいつもフィリップのペースになっている。
このままじゃ、夜の帝王まっしぐら…ってそれもいいけど…!!
私の混乱した頭では何も考えられない。
無言でフリーズする。
─フィリップの問いに答えなかったのがいけなかったのだろうか。それとも元から私の返事を待つ気などなかったのだろうか。
腕ごと引かれ、ペロリと舐めとられそうになって初めて私は叫ぶ。
「不埒な行為!ダメ絶対!!!」
咄嗟に出た言葉がそれって…。
私は自分の情けなさに涙しそうになったが、フィリップは悪戯が成功したような笑顔で言うのだ。
「本当に、そんなことすると思ったの?」
「だ、だって今!」
「姉さんを驚かせたかっただけだよ」
天使のように無垢な笑顔だった。
私は、自分の浅はかさを恥じ、謝った。
「変態扱いして、ごめんなさい」
◇
同時刻。
執務室でローズの父親は、使用人からの報告を受けていた。
「呪いが解けました。原因は不明ですが、間違いありません」
「そうか」
興味があるのか無いのか分からない声音で
そう言うが、子爵はどうするのが最善か絶えず思考を巡らしていた。
(今、伯爵にばれるのは得策ではない。
呪いが解けたと知れば、取り戻そうとするだろう。)
それは、いただけない…。
押し付けておいて、今さら返せ…などと看過できるはずもない。
扱いに困っていたとはいえ、既に状況は変わった。本格的に後継として鍛えるのも一興。
この子爵家を継ぐ者として、正式に王家の承認を得てしまえば伯爵とてどうにもできまい。18になるまで待つ必要はあるが。
どう、隠すか…。
(それにローズとの距離の近さも気になる)
二人をどう引き離すか、子爵は考え始めるのだった。
心の中の嵐はまだ完全に去ってはいなかった。
そんな私を見てフィリップが言う。
「手、汚れちゃったよね?」
確かに、直にオレンジを掴まされた右手は
少しベトついていた。
しかし、今重要なのはそこじゃない。
私は声を大にして言いたい。
さっき、あなたがしたことちゃんと分かってる?
レディー(ではないけど)の手を自分の口元に持っていくだなんて…!
私の紅潮した頬を見てフィリップは満足そうに笑う。
いや、えっと。
楽しそうな推しを見るのは嬉しいし有難い。ただ、私には手が余るようになってきてはいないか?
精神年齢も余裕で勝っているはずなのに、
何故かいつもフィリップのペースになっている。
このままじゃ、夜の帝王まっしぐら…ってそれもいいけど…!!
私の混乱した頭では何も考えられない。
無言でフリーズする。
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「不埒な行為!ダメ絶対!!!」
咄嗟に出た言葉がそれって…。
私は自分の情けなさに涙しそうになったが、フィリップは悪戯が成功したような笑顔で言うのだ。
「本当に、そんなことすると思ったの?」
「だ、だって今!」
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天使のように無垢な笑顔だった。
私は、自分の浅はかさを恥じ、謝った。
「変態扱いして、ごめんなさい」
◇
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「呪いが解けました。原因は不明ですが、間違いありません」
「そうか」
興味があるのか無いのか分からない声音で
そう言うが、子爵はどうするのが最善か絶えず思考を巡らしていた。
(今、伯爵にばれるのは得策ではない。
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それは、いただけない…。
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扱いに困っていたとはいえ、既に状況は変わった。本格的に後継として鍛えるのも一興。
この子爵家を継ぐ者として、正式に王家の承認を得てしまえば伯爵とてどうにもできまい。18になるまで待つ必要はあるが。
どう、隠すか…。
(それにローズとの距離の近さも気になる)
二人をどう引き離すか、子爵は考え始めるのだった。
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