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日常編
尋問
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「─ところで、踊ったんだよね…?」
「ええ…そのはずだけど」
「随分、曖昧だね?姉さんが失敗するとは思わないけど、彼のリードはどうだった?」
「えっと…」
私は思い返してみた。しばし間があく。
「…悪くはなかったんじゃないかしら?」
記憶が曖昧な私は、なんとかそれだけを言った。
「ふふ、姉さんは正直だな…。覚えてないほど、可もなく不可もなくってことでしょう?」
フィリップの瞳が怪しく光る。
(さすが、フィル。私のことなんてお見通しね…)
「フィルには敵わないわね」
私はそれだけを言った。
しかし、話はここからが本番だったらしい。フィルが私の腕をするりと取った。
「─でも他の男に触らせたのは確かだよね?」
「……」
迂闊に返事はできない雰囲気だ。私は黙った。
「─ねえ?聞いている?」
口調は丁寧で優しげなのに、なぜだろう…。背筋が粟立ってくる。
「も、ちろん聞いているわ」
「…それで…僕の言ったこと何か間違っている?」
「間違ってなんてないわ!フィルはいつも正しいわよ」
焦って咄嗟に、推しを全肯定するようなことを口走った。
「僕が正しいっていうなら、これからすることに文句なんて言わないよね?」
何をする気なのか…。私は少し訂正しようとした。
「…えっとね、正しいって難しいから…今言ったのは─」
私が最後まで言い終わらない内に
「っ痛!?」
鋭い痛みが走った。見ると指が赤くなっている。思い切り噛まれたようだった。
「ごめんなさい。でも姉さんがいけないんだよ?僕のことを置いて、あいつと踊ったりなんかするから」
そう言ってフィリップが今度は、私の手の甲に優しく口づける。それはまるで物語の一場面のようで…。
鞭からの飴。普段なら
(フィル…おそろしい子!)
とばかりに、某先生ネタに走る余裕があっただろうに今回は違った。
不覚にもぼうっとしてしまったのだ。
我に返り慌てて腕をひく。推しの健やかな成長のため、時には心を鬼にすることも大切だと私は心に決める。
「…フィル。私だったからよかったものの、人を噛むなんてやってはいけないことよ」
「どうして?」
彼が心底不思議そうに言う。
「誰にでもするってわけじゃないよ…僕は姉さんに少し反省してほしかっただけ」
(それならいい…のか?)
私は流されそうになった。
「…フィルの心を傷つけてしまったことは…申し訳なく思っているわ」
また3日も会えないなんてことになれば、耐えられない…。私は、やはり彼には強く出られないようだった。
「分かってくれて嬉しいよ」
─そう言った彼は酷く満足気だった。
「ええ…そのはずだけど」
「随分、曖昧だね?姉さんが失敗するとは思わないけど、彼のリードはどうだった?」
「えっと…」
私は思い返してみた。しばし間があく。
「…悪くはなかったんじゃないかしら?」
記憶が曖昧な私は、なんとかそれだけを言った。
「ふふ、姉さんは正直だな…。覚えてないほど、可もなく不可もなくってことでしょう?」
フィリップの瞳が怪しく光る。
(さすが、フィル。私のことなんてお見通しね…)
「フィルには敵わないわね」
私はそれだけを言った。
しかし、話はここからが本番だったらしい。フィルが私の腕をするりと取った。
「─でも他の男に触らせたのは確かだよね?」
「……」
迂闊に返事はできない雰囲気だ。私は黙った。
「─ねえ?聞いている?」
口調は丁寧で優しげなのに、なぜだろう…。背筋が粟立ってくる。
「も、ちろん聞いているわ」
「…それで…僕の言ったこと何か間違っている?」
「間違ってなんてないわ!フィルはいつも正しいわよ」
焦って咄嗟に、推しを全肯定するようなことを口走った。
「僕が正しいっていうなら、これからすることに文句なんて言わないよね?」
何をする気なのか…。私は少し訂正しようとした。
「…えっとね、正しいって難しいから…今言ったのは─」
私が最後まで言い終わらない内に
「っ痛!?」
鋭い痛みが走った。見ると指が赤くなっている。思い切り噛まれたようだった。
「ごめんなさい。でも姉さんがいけないんだよ?僕のことを置いて、あいつと踊ったりなんかするから」
そう言ってフィリップが今度は、私の手の甲に優しく口づける。それはまるで物語の一場面のようで…。
鞭からの飴。普段なら
(フィル…おそろしい子!)
とばかりに、某先生ネタに走る余裕があっただろうに今回は違った。
不覚にもぼうっとしてしまったのだ。
我に返り慌てて腕をひく。推しの健やかな成長のため、時には心を鬼にすることも大切だと私は心に決める。
「…フィル。私だったからよかったものの、人を噛むなんてやってはいけないことよ」
「どうして?」
彼が心底不思議そうに言う。
「誰にでもするってわけじゃないよ…僕は姉さんに少し反省してほしかっただけ」
(それならいい…のか?)
私は流されそうになった。
「…フィルの心を傷つけてしまったことは…申し訳なく思っているわ」
また3日も会えないなんてことになれば、耐えられない…。私は、やはり彼には強く出られないようだった。
「分かってくれて嬉しいよ」
─そう言った彼は酷く満足気だった。
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