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日常編
それどころではない
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─きらびやかなパーティーに夢を持っていた頃が私にもありました。
シャンデリアの輝きは美しく、今日という日を彩るようにあちこちに百合の花が飾られている。
演奏家たちが奏でる音楽が耳に心地よく響き、場の雰囲気を和ませる。
美しく着飾ったご婦人たちは優雅に談笑し、その色鮮やかなドレスがまるで華のよう…。
私はうっかり見惚れそうになったが、すぐさま現実を思い出し遠い目をした。
◇
遡ること3日前。アリステアが帰った後のこと…。
私はフィリップに壁際に追い詰められていた。
「僕が…僕が無力だから、姉さんはあんな男と踊ることになったんだよね?」
一応婚約者だし、しょうがないのよという言葉を飲み込む。
「フィル、あなたは無力なんかじゃないわ。いつも私の助けになってくれてる」
「そんなことない!」
落ち着かせようと宥めるも力強い否定が返ってきた。
「姉さんがあいつを嫌ってるのは分かってる。目を見れば分かる…。待ってて、僕が何とかするから」
何とかって…いや何する気?そんな暗い瞳で言われたら信じちゃうでしょ。それに嫌っているというよりかは年下すぎて対象外なだけです。精神年齢30オーバーですし…。
私は今にもアリステアに一服盛ってきそうなフィルを冷静にさせるべく話し出した。
「大丈夫。本当に嫌なら自分でどうにかするから。それにすぐ帰ってくるし大丈夫よ」
「…姉さんのば…いじ悪!」
今、ばかって言いかけたよね?分かってはいたけど、いらっとはこない。むしろ言い直して涙目で意地悪とは…可愛いです。ありがとうございます。
私は推しの尊さを神に感謝した。
─それがいけなかったのだろうか。フィリップは完全に拗ねて部屋に引きこもってしまった。
3日間愛するフィルに会えていません。
私は溜め息をつき、パーティー会場を見渡すのだった。
「─あなたのような女が来るところではなくてよ」
「そうですわ」
「早く帰りなさい」
怖い顔をした女性達に囲まれているあの小柄な美女…そしてこの状況。
すごい覚えがあります…。
─ああフィル。
私は癒しを思い浮かべしばし現実逃避した。
シャンデリアの輝きは美しく、今日という日を彩るようにあちこちに百合の花が飾られている。
演奏家たちが奏でる音楽が耳に心地よく響き、場の雰囲気を和ませる。
美しく着飾ったご婦人たちは優雅に談笑し、その色鮮やかなドレスがまるで華のよう…。
私はうっかり見惚れそうになったが、すぐさま現実を思い出し遠い目をした。
◇
遡ること3日前。アリステアが帰った後のこと…。
私はフィリップに壁際に追い詰められていた。
「僕が…僕が無力だから、姉さんはあんな男と踊ることになったんだよね?」
一応婚約者だし、しょうがないのよという言葉を飲み込む。
「フィル、あなたは無力なんかじゃないわ。いつも私の助けになってくれてる」
「そんなことない!」
落ち着かせようと宥めるも力強い否定が返ってきた。
「姉さんがあいつを嫌ってるのは分かってる。目を見れば分かる…。待ってて、僕が何とかするから」
何とかって…いや何する気?そんな暗い瞳で言われたら信じちゃうでしょ。それに嫌っているというよりかは年下すぎて対象外なだけです。精神年齢30オーバーですし…。
私は今にもアリステアに一服盛ってきそうなフィルを冷静にさせるべく話し出した。
「大丈夫。本当に嫌なら自分でどうにかするから。それにすぐ帰ってくるし大丈夫よ」
「…姉さんのば…いじ悪!」
今、ばかって言いかけたよね?分かってはいたけど、いらっとはこない。むしろ言い直して涙目で意地悪とは…可愛いです。ありがとうございます。
私は推しの尊さを神に感謝した。
─それがいけなかったのだろうか。フィリップは完全に拗ねて部屋に引きこもってしまった。
3日間愛するフィルに会えていません。
私は溜め息をつき、パーティー会場を見渡すのだった。
「─あなたのような女が来るところではなくてよ」
「そうですわ」
「早く帰りなさい」
怖い顔をした女性達に囲まれているあの小柄な美女…そしてこの状況。
すごい覚えがあります…。
─ああフィル。
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