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日常編
対話
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私はぞっとするほど暗い闇の中を漂っていた。
静かで何もない空間。ただ恐怖はない。
ここはどこだろうと疑問に思いながらも深く深く潜っていくと、自分以外に誰かがいることに気がついた。
─少女が泣いている
背を丸めて蹲りながら。顔は見えず、時折嗚咽が漏れている。
私は気になって近づいてみた。
「大丈夫?」
「…」
少女は答えない。ただぽつりと呟いた。
「…お父様もお母様も私に興味などないの。
優しくはしてくれるけどただそれだけ…。」
だから反抗してみたりもしたけど、寂しさが薄れるどころか…ただ使用人を困らせただけ。
怒られるかもと少し期待したけど、何が不満なの?好きなようにしていいのよ?と言われるばかり…。
高価なお菓子も服も宝石もいらないならただ頭を撫でてほしかった…。
少女の悲しみが胸を打った。
初めて彼女が私を見る。しばし見つめ合う。
幼いながらも華やかな美貌。
燃えるような赤い髪に月のような瞳。
私が身体を奪ったローズその人だった。
「あなたはずるいわよね?」
少女が言う。
「だってとっても幸せそうなんだもの。いつも笑って楽しそうに…。
……こんなのただの八つ当たりよね。貴族で恵まれてるくせに、贅沢言ってって思ってるでしょ?」
「…誰かにそう言われたの?」
「そんなことはどうでもいいの…!あなたを通して世界を見て私はより惨めになった!」
「あなたはどうしたいの?」
「…分からない。でもあなたのようにはできない!きっと私はあの子に当たってしまう…傷つけてしまう」
「……じゃあ、こういうのはどう?」
私が提案したことに、少女は目を瞬かせて本当にあなたはそれでいいの?と言った。
元々あなたの身体よ。私はそう言って頷いた。
「姉さん…姉さんっ!」
私を呼ぶ声がする。目覚めなければ…。
きっとフィルが心配している。
目覚めた後の光景を思い浮かべながら私は緩く微笑んだ。
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