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日常編

天使?悪魔?

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(ああ今日もフィルは天使のようにかわいいわ…。)

ローズはうっとりとフィリップの寝顔を見つめる。一緒にお昼寝して以降、少しは気を許してくれたのか怯えられなくなってきたことを嬉しく思う。

使用人はフィリップの顔の痣を恐れて、必要最低限の世話しかせず、またローズの両親もローズ以外には興味がないのかあまり彼とは話さない。跡取りとしての教育さえしてくれていれば満足のようだった。

─自分が両親の分まで愛するわ。

彼女は決意を新たにした。

「うっ…かあさ‥ま。」

夢に魘されている彼の手を取り、握る。どうか彼の苦しみが癒えますようにと願いながら。

*****

(彼女の考えていることが理解できない。もし演技なら大した役者だ。)

実はか弱く振る舞いながらもフィリップは、幼いながらに腹黒く育っていた。過去のあらゆる出来事が彼をそうさせた。

期待しては裏切られ、両親までもが自分を捨てた。そんな状況で心根まで天使のように育つわけがなく…。彼は心底人を信じることに疲れていた。大袈裟なほどに弱々しく見せることで自分を守っていたのだ。

子爵家に引き取られた日、目の前でローズが倒れ内心慌てた。どうせ仲良くなどなれるわけがないのだから出来る限りこちらの落ち度になることは避けたいと考えていた。

フィリップは、そういうわけで彼女の部屋に向かったのだが…。自己紹介の後、自分の部屋にまで来るとは予想だにしていなかった。そしてぐいぐいと距離を詰めてこられ、終いには昼寝をしようと要求したローズを理解できず困惑していた。

(何か企んでるのか…。)

そうも思ったが、自分の瞳がきれいだと笑う彼女に絆されつつもあった。信じて裏切られたくない、だが本当ならどんなにかいいだろうと。

荒みつつあるとは言えども、フィリップは完全には心を閉ざせていなかった。泣きもするし、夢に魘されもするまだ子供に過ぎない。

彼は思う。
─ローズの前では素直でありたいと。

フィリップがどう成長するのか、今はまだ女神さえ知らぬこと。

*****

元の身体の持ち主の魂はどこへ行ってしまったのか?

女神は見ていたが、別にどこにも行ってはいなかった。未だローズの身体に留まったまま、彼女の身体には二つの魂が宿っている。

融合するのか、はたまた元の人格に戻ってしまうのか未来は定まってはいない。そんなことは露程も思いもせず、今日もフィルはかわいいわとふふと微笑む彼女は元気だった。

明日は一緒にお風呂に入りたいなと思いながら。
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