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…感謝してあげても、よくってよ?
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謎の男、ルイと話し、あまりにうるさいので空気のように扱う術を身につけた私は、
リアム様の訪問を今か今かと待ち構えていた。
髪のお手入れも、肌も、なにもかも入念に準備した。
「まさかとは、言いませんけど、私の着替えを覗いているのではないでしょうね?」
「わ、我は紳士だ。そんなことは…」
「本当でしょうね?嘘だったら承知しなくてよ」
「闇の女神に誓って─」
私が、リアム様へと想いを馳せた、そんなとき
「お嬢様。殿下がお見えです」
「分かったわ」
私は、心の中に渦巻く想いを封じ込めて、真面目な顔をして言った。
**
「ソフィア!大丈夫だったかい?」
「ええ。何ともありませんわ。お忙しい中、お時間をとらせてしまって申し訳ございません」
「そんなことっ!」
「私のことはご心配いただかなくても大丈夫ですので、どうかお帰りくださいませ」
「…それは─」
『なるほど…これがダークマターか…』
ちょっと邪魔しないでくださいます?
私の顔が一瞬ともいえる短い間、強ばった。
「僕に帰ってほしいと…いうことかい?」
「それは…」
『おいおいおい。天啓を聞け。
Why?なぜ、そんな強がるんだ?
朝からずっと待ち望んでいただろ?
素直になれ…!』
比較的分かりやすい言葉で言ってくるのもムカつきますわ。
私が、王子に対して口を開こうとすると、
ルイが言った。
『貴様が素直にならないなら、お告げをエンドレスだ』
エンドレスの意味は分からなかったが、不吉な予感に背筋がぶるりと震える。
「ソフィア。やはり具合が悪いんじゃないか?震えているよ」
「だ、大丈夫です。ちょっと夢見が悪いだけです…」
「それで顔色がよくなかったのか!!
早く休んで、元気な顔を見せてくれ」
『我の次にいい男だな』
私は、いつもならば決して言わないだろう弱音をこのあり得ない状況で口走ってしまった。
「…本当は、そんなこと思っていらっしゃらないのでしょう?こんな可愛くない女。
早く…婚約破棄、してしまいたいと思っているのでは?」
私は言っていて、どんどん悲しくなっていく。本当にそうだと思ったから。
「何を言ってるんだ!?
いつの頃からか、感情を見せなくなってしまった君に対して、寂しさを感じていたのは本当だ。
だが、婚約破棄など…そんなこと二度と言わないでくれ」
「…ぐすっ」
「どうした!?」
「う、嬉しくて。そんな風に想っていただいていたなんて…。私は幸せ者です」
ふわりと微笑んだ。
リアム様の顔が、何故か赤くなった気がした。
『フフフこれも我のおかげ。…うん?なぜた?この景色は初めてではない。我は瞬間移動の─』
声は途中で途切れて、それきり聞こえなくなった。
私は、これからは少し素直になれそうだと微笑み、いなくなってしまった男に対して心の中で呟いた。
…感謝してあげても、よくってよ?
リアム様の訪問を今か今かと待ち構えていた。
髪のお手入れも、肌も、なにもかも入念に準備した。
「まさかとは、言いませんけど、私の着替えを覗いているのではないでしょうね?」
「わ、我は紳士だ。そんなことは…」
「本当でしょうね?嘘だったら承知しなくてよ」
「闇の女神に誓って─」
私が、リアム様へと想いを馳せた、そんなとき
「お嬢様。殿下がお見えです」
「分かったわ」
私は、心の中に渦巻く想いを封じ込めて、真面目な顔をして言った。
**
「ソフィア!大丈夫だったかい?」
「ええ。何ともありませんわ。お忙しい中、お時間をとらせてしまって申し訳ございません」
「そんなことっ!」
「私のことはご心配いただかなくても大丈夫ですので、どうかお帰りくださいませ」
「…それは─」
『なるほど…これがダークマターか…』
ちょっと邪魔しないでくださいます?
私の顔が一瞬ともいえる短い間、強ばった。
「僕に帰ってほしいと…いうことかい?」
「それは…」
『おいおいおい。天啓を聞け。
Why?なぜ、そんな強がるんだ?
朝からずっと待ち望んでいただろ?
素直になれ…!』
比較的分かりやすい言葉で言ってくるのもムカつきますわ。
私が、王子に対して口を開こうとすると、
ルイが言った。
『貴様が素直にならないなら、お告げをエンドレスだ』
エンドレスの意味は分からなかったが、不吉な予感に背筋がぶるりと震える。
「ソフィア。やはり具合が悪いんじゃないか?震えているよ」
「だ、大丈夫です。ちょっと夢見が悪いだけです…」
「それで顔色がよくなかったのか!!
早く休んで、元気な顔を見せてくれ」
『我の次にいい男だな』
私は、いつもならば決して言わないだろう弱音をこのあり得ない状況で口走ってしまった。
「…本当は、そんなこと思っていらっしゃらないのでしょう?こんな可愛くない女。
早く…婚約破棄、してしまいたいと思っているのでは?」
私は言っていて、どんどん悲しくなっていく。本当にそうだと思ったから。
「何を言ってるんだ!?
いつの頃からか、感情を見せなくなってしまった君に対して、寂しさを感じていたのは本当だ。
だが、婚約破棄など…そんなこと二度と言わないでくれ」
「…ぐすっ」
「どうした!?」
「う、嬉しくて。そんな風に想っていただいていたなんて…。私は幸せ者です」
ふわりと微笑んだ。
リアム様の顔が、何故か赤くなった気がした。
『フフフこれも我のおかげ。…うん?なぜた?この景色は初めてではない。我は瞬間移動の─』
声は途中で途切れて、それきり聞こえなくなった。
私は、これからは少し素直になれそうだと微笑み、いなくなってしまった男に対して心の中で呟いた。
…感謝してあげても、よくってよ?
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