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第124話:アトフィスの領主とその娘
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何百年も遥か昔、まだアトフィスが廃都ではなく、美しく立派な街だったころ。
「はぁ!はぁ!!シェリー様!シェリー様はいらっしゃるか!!」
慌てた様子で洋館に転がり込む一人の男。鎧を着こんだ、憲兵のような姿の男は、ひどく焦っていた。
「何事だ!」
あわただしい様子に奥から現れたのはアトフィスの領主であるシェリーの父親、ジークス・アインズワース。きりっと髪をオールバックに整え、揃えられた髭、皴一つないスーツ。紳士という言葉がぴったりな男だ。
「ジークス様!私共の憲兵の一人が魔物に襲われて・・・かろうじて魔物は倒したのですが、腕がっ!」
「このままでは失血死してしまいます。何卒!シェリー様のお力添えを頂きたくっ!」
「助けて差し上げましょう、お父様」
いつの間にか、ジークスの背後に立っていたシェリー。騒ぎを聞きつけ、部屋から降りてきたようだ。
「憲兵団の皆様は私たちの町を守るため、命を懸けて尽力してくださっています。私にできることでしたら、是非お力添えを」
まだ幼いシェリーから放たれる、大人さながらの物言い。このころからシェリーは少女とは思えないほどのしっかりとした考え方ができる子であった。
シェリーの言葉に、ジークスもうなずく。
「あぁ、そうだな。シェリーの言うとおりだ。さ、ケガをした憲兵の元へ行ってあげなさい」
「シェリー様・・・ありがとうございますっ!!」
ようやく安堵したのか、男は涙を流し、シェリーの手を握って感謝の意を伝える。
「さ、急ぎましょう。けがをした方の元へ案内していただけますか?」
シェリーは男と共に洋館を後にする。その後ろ姿を、ジークスは不安げな顔で見送っていた。
「誰かのために動こうとするその優しい心。娘は立派すぎるほどに育ってくれた。だが、一つ間違えれば争いの種になりかねない力だ。どうか事が大きくならなければいいのだが・・・」
「はぁー・・・はぁー・・・」
「おい、道を開けろ!シェリー様が来てくださったぞ!!」
シェリーは簡易ベッドに横たわる男の元へ立つ。
顔色は悪く、体力は消耗し、無くなった腕を痛がる気力さえない。危険な状態だ。
「今、楽になりますからね」
シェリーは両の手を男のなくなった腕にかざす。途端に彼女の体が、腕が、手が、優しい暖かい光に包まれ、それは彼女のかざした手から男へ放たれる。
ぐっ
男の肩の筋肉が動く。
ぐぐぐぐぐっ!!
肉が沸騰するように膨れながら、次第に形を作っていく!
光がおさまるころには、男のなかった腕は再生されていた。
「ふぅ」
シェリーは額に滲む汗をぬぐった。
「どうですか?痛みはないですか?」
「・・・はい、ですが不思議な感覚です。さっきまで自分の腕は・・・」
男はなくなったはずの腕を動かしたり、手を握ったりして感覚を確かめていた。まぎれもない自分の腕だ。
シェリーはニコッと優しく微笑む。
「よかったです。しばらく体調がすぐれなかったり気持ち悪くなってしまうことがあるかもしれませんので、安静になさってください。1週間もすれば完全に回復します」
「「うぉおお!シェリー様!シェリー様!」」
風前の灯火だった男の奇跡の生還、見守っていた憲兵たちはシェリーの偉業に歓声を上げ、感謝の言葉を口々に述べるのだった。
「はぁ!はぁ!!シェリー様!シェリー様はいらっしゃるか!!」
慌てた様子で洋館に転がり込む一人の男。鎧を着こんだ、憲兵のような姿の男は、ひどく焦っていた。
「何事だ!」
あわただしい様子に奥から現れたのはアトフィスの領主であるシェリーの父親、ジークス・アインズワース。きりっと髪をオールバックに整え、揃えられた髭、皴一つないスーツ。紳士という言葉がぴったりな男だ。
「ジークス様!私共の憲兵の一人が魔物に襲われて・・・かろうじて魔物は倒したのですが、腕がっ!」
「このままでは失血死してしまいます。何卒!シェリー様のお力添えを頂きたくっ!」
「助けて差し上げましょう、お父様」
いつの間にか、ジークスの背後に立っていたシェリー。騒ぎを聞きつけ、部屋から降りてきたようだ。
「憲兵団の皆様は私たちの町を守るため、命を懸けて尽力してくださっています。私にできることでしたら、是非お力添えを」
まだ幼いシェリーから放たれる、大人さながらの物言い。このころからシェリーは少女とは思えないほどのしっかりとした考え方ができる子であった。
シェリーの言葉に、ジークスもうなずく。
「あぁ、そうだな。シェリーの言うとおりだ。さ、ケガをした憲兵の元へ行ってあげなさい」
「シェリー様・・・ありがとうございますっ!!」
ようやく安堵したのか、男は涙を流し、シェリーの手を握って感謝の意を伝える。
「さ、急ぎましょう。けがをした方の元へ案内していただけますか?」
シェリーは男と共に洋館を後にする。その後ろ姿を、ジークスは不安げな顔で見送っていた。
「誰かのために動こうとするその優しい心。娘は立派すぎるほどに育ってくれた。だが、一つ間違えれば争いの種になりかねない力だ。どうか事が大きくならなければいいのだが・・・」
「はぁー・・・はぁー・・・」
「おい、道を開けろ!シェリー様が来てくださったぞ!!」
シェリーは簡易ベッドに横たわる男の元へ立つ。
顔色は悪く、体力は消耗し、無くなった腕を痛がる気力さえない。危険な状態だ。
「今、楽になりますからね」
シェリーは両の手を男のなくなった腕にかざす。途端に彼女の体が、腕が、手が、優しい暖かい光に包まれ、それは彼女のかざした手から男へ放たれる。
ぐっ
男の肩の筋肉が動く。
ぐぐぐぐぐっ!!
肉が沸騰するように膨れながら、次第に形を作っていく!
光がおさまるころには、男のなかった腕は再生されていた。
「ふぅ」
シェリーは額に滲む汗をぬぐった。
「どうですか?痛みはないですか?」
「・・・はい、ですが不思議な感覚です。さっきまで自分の腕は・・・」
男はなくなったはずの腕を動かしたり、手を握ったりして感覚を確かめていた。まぎれもない自分の腕だ。
シェリーはニコッと優しく微笑む。
「よかったです。しばらく体調がすぐれなかったり気持ち悪くなってしまうことがあるかもしれませんので、安静になさってください。1週間もすれば完全に回復します」
「「うぉおお!シェリー様!シェリー様!」」
風前の灯火だった男の奇跡の生還、見守っていた憲兵たちはシェリーの偉業に歓声を上げ、感謝の言葉を口々に述べるのだった。
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