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第123話:幽霊の少女
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階段を上り、まっすぐ歩いていくと、あの声が言った通り大きな扉が待ち構えていた。
(一応罠を警戒して・・・いざとなったら身体強化を。MM領域を使うにはMPが心もとないしね)
もしものケースを想定し、脱出のシミュレーションを脳内で終えたところで深呼吸をする。
両手で取っ手を持ち、その重々しい扉を僕はゆっくりと開いた。
どうやらここは書斎のようだ。応接室でよく見る、立派なテーブルとソファが中央に鎮座し、奥に見える大きな窓の元にはこの屋敷の主が座るのだろうひと際豪華なテーブルと椅子が設置されている。左右は本棚に本がぎっしりと詰まっており、いかにもといった様子だ。
窓がかすかに開いており、薄いカーテンが風になびいて揺れている。
しかし
(・・・誰もいないじゃないか)
少女の言われた通りに来てみたものの、立派な部屋があるだけで人影がない。
部屋を間違えたのか、そう思い引き返そうとした時だった。
『あ、待ってください。今姿を見せますので!』
慌てるような少女の声と共に、部屋の中を優しい光が照らした。
まるで粒子が飛ぶように、光揺蕩うなか現れたのは、美しい容姿の少女。
長くまっすぐ伸びた白銀の髪、幼さの見えるぱっちりと大きな目とぷっくりした輪郭。その肌は透けるように白い。
というか、実際に透けていた。
「よく来てくださいました。お初にお目にかかります。私はシェリー・アインズワース、アトフィスの領主にございます」
ワンピースの裾を持ち上げ丁寧に会釈をするシェリー。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
名前:シェリー・アインズワース
Lv:56
性別:女
種族:地縛霊
アトフィスの領主である名家アインズワース家最後の娘で通称『アトフィスの聖女』。廃都アトフィスの地下街に住まう地縛霊で、死後魂が定着し離れない「ネクロスソウル」をアトフィス全体に放っている。幽霊なので物理的攻撃力はないが、高位霊体である彼女を攻撃する術はない。一方彼女は術を使用したり憑依し他人を乗っとることで攻撃することはできる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(領主、なるほど。見た目の年齢のわりにひどく落ち着いた様子と丁寧な仕草は立場から身についたものかな)
「初めまして、僕は冒険者のユウ。背中で気絶しているのはメイドのシエラだよ」
僕の後ろで伸びているシエラを目にするや否や、シェリーは口元を手で隠し、まるで恥ずかしがるようなしぐさを見せる。生きているならほほを真っ赤に染めていることだろうが、霊体の彼女の肌の色は残念ながら変化しないみたいだ。
「あぁ!ごめんなさい!半霊たちを通してみておりました・・・。驚かせるつもりはなかったのです。ただお二人をお招きしてお話を聞いていただきたかったっだけだったのですが、申し訳ありません」
「ここに呼ぶだけだったら、今みたいに声を届けるのは駄目だったの?」
「はい・・・。私の声が届くのはこの洋館の中まで。使役する半霊たちから発することはできません。私自身で向かおうにも、私はこの洋館に束縛されいている地縛霊ですので、動けなくて・・・」
酷く申し訳なさそうな顔をするシェリーを見て確信した。この子は本当に僕らに危害を加えるつもりはないみたいだ。
だけど、そうなると気になってくるのが鑑定眼に出てきた「ネクロスソウルを放っている」という一言。彼女がこのゾンビ化の原因であることは間違いないみたいだけど、こんなに優しそうな子がどうして・・・。
「シェリー、話を聞くのは構わないんだけど、一つ教えてほしいんだ。地上の廃都にはびこるアンデッドの群れ、あれは君の仕業なのかい?」
その言葉に、シェリーは顔を曇らせた。
「・・・はい、間違いありません。彼らは私の存在が原因であのような姿に・・・」
「存在?」
シェリーは昔を思い出すようにぽつりぽつりと語り始める。
その顔は悲しみに満ち満ちていた。
(一応罠を警戒して・・・いざとなったら身体強化を。MM領域を使うにはMPが心もとないしね)
もしものケースを想定し、脱出のシミュレーションを脳内で終えたところで深呼吸をする。
両手で取っ手を持ち、その重々しい扉を僕はゆっくりと開いた。
どうやらここは書斎のようだ。応接室でよく見る、立派なテーブルとソファが中央に鎮座し、奥に見える大きな窓の元にはこの屋敷の主が座るのだろうひと際豪華なテーブルと椅子が設置されている。左右は本棚に本がぎっしりと詰まっており、いかにもといった様子だ。
窓がかすかに開いており、薄いカーテンが風になびいて揺れている。
しかし
(・・・誰もいないじゃないか)
少女の言われた通りに来てみたものの、立派な部屋があるだけで人影がない。
部屋を間違えたのか、そう思い引き返そうとした時だった。
『あ、待ってください。今姿を見せますので!』
慌てるような少女の声と共に、部屋の中を優しい光が照らした。
まるで粒子が飛ぶように、光揺蕩うなか現れたのは、美しい容姿の少女。
長くまっすぐ伸びた白銀の髪、幼さの見えるぱっちりと大きな目とぷっくりした輪郭。その肌は透けるように白い。
というか、実際に透けていた。
「よく来てくださいました。お初にお目にかかります。私はシェリー・アインズワース、アトフィスの領主にございます」
ワンピースの裾を持ち上げ丁寧に会釈をするシェリー。
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名前:シェリー・アインズワース
Lv:56
性別:女
種族:地縛霊
アトフィスの領主である名家アインズワース家最後の娘で通称『アトフィスの聖女』。廃都アトフィスの地下街に住まう地縛霊で、死後魂が定着し離れない「ネクロスソウル」をアトフィス全体に放っている。幽霊なので物理的攻撃力はないが、高位霊体である彼女を攻撃する術はない。一方彼女は術を使用したり憑依し他人を乗っとることで攻撃することはできる。
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(領主、なるほど。見た目の年齢のわりにひどく落ち着いた様子と丁寧な仕草は立場から身についたものかな)
「初めまして、僕は冒険者のユウ。背中で気絶しているのはメイドのシエラだよ」
僕の後ろで伸びているシエラを目にするや否や、シェリーは口元を手で隠し、まるで恥ずかしがるようなしぐさを見せる。生きているならほほを真っ赤に染めていることだろうが、霊体の彼女の肌の色は残念ながら変化しないみたいだ。
「あぁ!ごめんなさい!半霊たちを通してみておりました・・・。驚かせるつもりはなかったのです。ただお二人をお招きしてお話を聞いていただきたかったっだけだったのですが、申し訳ありません」
「ここに呼ぶだけだったら、今みたいに声を届けるのは駄目だったの?」
「はい・・・。私の声が届くのはこの洋館の中まで。使役する半霊たちから発することはできません。私自身で向かおうにも、私はこの洋館に束縛されいている地縛霊ですので、動けなくて・・・」
酷く申し訳なさそうな顔をするシェリーを見て確信した。この子は本当に僕らに危害を加えるつもりはないみたいだ。
だけど、そうなると気になってくるのが鑑定眼に出てきた「ネクロスソウルを放っている」という一言。彼女がこのゾンビ化の原因であることは間違いないみたいだけど、こんなに優しそうな子がどうして・・・。
「シェリー、話を聞くのは構わないんだけど、一つ教えてほしいんだ。地上の廃都にはびこるアンデッドの群れ、あれは君の仕業なのかい?」
その言葉に、シェリーは顔を曇らせた。
「・・・はい、間違いありません。彼らは私の存在が原因であのような姿に・・・」
「存在?」
シェリーは昔を思い出すようにぽつりぽつりと語り始める。
その顔は悲しみに満ち満ちていた。
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