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第97話:移動販売ヴェルマートへようこそ!

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はじめは黒い点だったそれは徐々にその姿を大きくしていく。しかもこの砂漠ですごい速度で近づいてくるではないか!



少し角ばったフォルムに四つのタイヤ。ガラス窓がついていて・・・その姿をとらえた僕は驚きに目を見開く。




「え、車!この世界に車があるの!」



そう、それはどう見たって車だった。僕の世界の車に比べると少しごついというか、鉄板をボルトでつなぎ合わせているせいでなんだか装甲車みたいに見える。キャンピングカーのように少し大きめで、まるで中型のトラックのようだ。




「珍しいですね。あれは魔駆動車まくどうしゃです。私も始めてみました」




僕はともかくとして、シエラがこの驚きようなのだ。どうやらこの世界ではかなり珍しい乗り物らしい。




「からくりには詳しくないので私も細かいことはお話しできませんが、魔力をエネルギー源にして車輪を回し走る乗り物なんです。本体ももちろんですが燃料も高価なので、きっと乗っている方はすごい人ですよ!」




「そうなんだ。でもそれが何でこんな砂漠に・・・というかこっちに近づいてきてるみたいだね」




別に手を振ったり合図を送ったわけではないのだが、魔駆動車はまっすぐこちらに向け走ってくる。ついには二人の目の前までくると魔駆動車は停止した。見れば見るほどごつい車だが、近くで見るとその正体にようやく気が付く。どおりで僕らのもとに向かって走ってきたわけだ。





車側面に張り付けられた看板には「ヴェルマート」の文字。







運転席のドアが開き、すたっと人がおりてくる。


少し長くとがった耳に、金髪のツインテール。こんな車に乗っているとは想像もつかないほど背は低く体つきや顔も幼い少女は僕らに満点の笑顔を送ると元気よく挨拶してくれた。




「こんにちわ!移動販売店ヴェルマートへようこそっす!お客様のご希望に添えるものは大体揃ってると思うっすよ!どうです、ぜひ見ていかれては!」






照り付ける太陽にも負けず劣らず元気ハツラツな少女とは対照的、汗だくになり疲労困憊の僕らは商品棚を観る前に声をそろえて尋ねた。





「水は、ありますか?」







「もちろんっす!あ、先に代金を頂くっすよ!」


二カッと笑顔を送る少女が提示した金額は相場より割高ではあったが、こんな場所で販売してくれるのだから安いものだ。僕らは二人分の金額を支払うと、少女は待っていてくださいと再び車内へ戻る。




「助かった・・・まさかこの世界に移動販売があるなんて」


僕はほっと胸をなでおろした。シエラも安心してどっと疲れが出たのか、車の影に座り込んでようやく疲れた、と弱音を口にした。




ほどなくして少女は水を持ってきてくれた。しかもコップに氷まで入れて。



「氷はサービスっすよ!初めてのお客様ですからね、今後ともごひいきしてもらわないと!」




さ、ぐっと飲んじゃってくださいと後押しされ、僕らはキンキンに冷えた水をぐっとのどへ流し込んだ。




「!?うまい!限界までのどが渇いた後の冷え切った水がこれほどおいしく感じるなんて・・・!」




「はい!それにこの水、ただの水じゃないです!すごくやわらかで透き通るようなのど越し、こんなおいしいお水は初めてです!!」





僕らの喜ぶ様子に少女はご満悦の様子だ。



「もちろんっすよ!ただ水を提供するだけじゃ他と変わんないっす。ただの水でさえ品質にはこだわりを、うちの店はこだわりが自慢っす!」





気持ちも体力も回復した僕らに、少女は自己紹介をしてくれた。



「申し遅れたっすね、私はヴェルマートを経営する小人族のグリーシア・マグスタットと言うっす。よければグリ子って呼んでくれると嬉しいっす。お二人のお名前も伺ってもいいですか?」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
名前:グリーシア・マグスタット
Lv:91
性別:女
種族:小人族

移動販売店「ヴェルマート」を経営する。この世界では珍しい魔力で走る魔駆動車を使っていろんな場所へ出向いては珍しいものを収集したり取り寄せ販売している小人族。「~っす」が口癖。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー




互いの自己紹介を終えた後、グリ子は不思議そうな顔で僕らに気になっていたことをぶつけた。





「ところで、どうしてお二人はにいるんですか?」
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