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第95話:この世界で見つけた故郷
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「ロアンさん!」
「おぉ、少年じゃないか!」
僕はロアンさんの姿を見つけ駆け寄る。
「お互い、大変なことになっちまったな。聞いたぜ、ここを出るんだって?メイガスさんとこにはもう行ったのか」
「はい。さっき挨拶を済ませてきました。ロアンさんにはお世話になりました」
頭を下げる僕に、恥ずかしそうに返すロアンさん。
「よせよ、お世話なんてたいそうなことはしてないさ。それに今出ていくのは正解だと思うぜ?これ以上持ち上げられたらたまんねぇよ」
ロアンさんもここの所アイドル状態が続いているせいで気疲れしているようだ。
「ロアンさんはここに残るんですね」
「あぁ、親父やメイガスさんには恩義があるし、俺はここでやっていくって決めてるからな」
幹部という地位もあるだろうし、ロアンさんはそうやすやすといなくなったりはできないみたいだ。
「しかしお師匠様がよく頷いてくれたな。少年にぞっこんだったじゃねぇか」
「あぁ、それは・・・」
僕は懐からあるものを取り出す。そう、それは前にカエラさんからもらった魔道具、その改良バージョンだ。
「なんでも今いる場所からカエラさんの家に一瞬で飛べるうえ、カエラさんの家から元居た場所までも飛べちゃう魔道具らしくて」
前にもらった魔道具はカエラさんの家には一瞬で行けるが、元に場所には戻れない一方通行の魔道具だった。ガルシティを出るのに一方通行ではどうしようもないと、壊れてしまった前の魔道具をさらに改良した会心作だそうだ。一応SOS機能も前回に引き続きついている。
「うわ、とんでもないもんを作ったな。お師匠様がいる場所に飛ぶだけならそんなにだが現在地を記憶させて戻ってこれるなんて、どうやってこのサイズの魔道具に収めたんだ?これが市場に出りゃ人生20回分遊んで暮らせそうだな」
わが師匠ながら呆れる、というロアンさんの言葉に僕らは二人して笑った。
「じゃ、俺からも選別をやらないとな」
ロアンさんは自分の付けていた指輪の一つを外すと僕に差し出した。
「こいつも魔道具だ。魔力切れを起こさない程度にちょっとづつ魔力を蓄える魔石でな。好きな時に引き出せる」
「え、いいんですか!」
「あぁ、俺にはもう必要ない。少年が持っていてくれ」
ロアンさんはにっといつものように笑うと、僕の背中をポンと叩いた。
「ま、がんばれよ!少年ならどこに行ったって上手くやれる。お師匠様のとこへ戻るときにはここにも寄ってけよな!」
ただしお忍びだけどな、という言葉に僕らはまた笑いあった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「シエラ、準備はいいかい?」
「はい、いつでも大丈夫です!」
翌朝、まだ日空が明るくなり始めたころ。涼しげな風が木々を揺らす中僕らはカエラさんの家の扉を開け外に出る。
「ユウ君・・・こうして見送るのは二回目だね」
「えぇ、そうですね。ははっ!カエラさんあの時と同じ顔をしてますよ」
からかうような僕のセリフに顔を赤くしてだって!というカエラさん。
「今度はシエラちゃんも行ってしまうじゃない。寂しさ2倍なの!」
「シエラもカエラ様と離れるのは寂しいです。本当にいろいろありがとうございました。どうかお元気で」
「ううん、こっちこそありがとう。シエラちゃんがいてくれた時間は本当に楽しかった…。シエラちゃんならユウ君を任せていけるわ。どうかよろしくね」
最初会ったときはバチバチだったくせに。今じゃ別れの際に二人とも泣きそうじゃないか。
「体に気を付けてね。いつでも戻ってきてね。何かあったらすぐに言うのよ」
カエラさんはぎゅっとシエラを抱きしめる。
「・・・はい、ありがとうございます、カエラ様・・・」
こうしてみるとまるでシエラが娘のようだ。
「ユウ君も、いろんなことがあると思うけど、頑張って」
今度は僕のことをキュッと抱きしめる。
「大好きよ、私の大事な弟」
「僕も大好きですよ、お姉ちゃん」
僕の言葉についに堪えられなくなったのか。顔は見えないけれど、僕の肩にカエラさんの暖かい涙が落ちるのを感じる。
「もう、ずるいなぁユウ君。このタイミングで言わなくてもいいじゃない」
より強く、より愛を込めて、互いを抱きしめる。
大切な人たち、大切な場所に別れを告げ、僕らは新しい世界へ一歩踏み出した。
「おぉ、少年じゃないか!」
僕はロアンさんの姿を見つけ駆け寄る。
「お互い、大変なことになっちまったな。聞いたぜ、ここを出るんだって?メイガスさんとこにはもう行ったのか」
「はい。さっき挨拶を済ませてきました。ロアンさんにはお世話になりました」
頭を下げる僕に、恥ずかしそうに返すロアンさん。
「よせよ、お世話なんてたいそうなことはしてないさ。それに今出ていくのは正解だと思うぜ?これ以上持ち上げられたらたまんねぇよ」
ロアンさんもここの所アイドル状態が続いているせいで気疲れしているようだ。
「ロアンさんはここに残るんですね」
「あぁ、親父やメイガスさんには恩義があるし、俺はここでやっていくって決めてるからな」
幹部という地位もあるだろうし、ロアンさんはそうやすやすといなくなったりはできないみたいだ。
「しかしお師匠様がよく頷いてくれたな。少年にぞっこんだったじゃねぇか」
「あぁ、それは・・・」
僕は懐からあるものを取り出す。そう、それは前にカエラさんからもらった魔道具、その改良バージョンだ。
「なんでも今いる場所からカエラさんの家に一瞬で飛べるうえ、カエラさんの家から元居た場所までも飛べちゃう魔道具らしくて」
前にもらった魔道具はカエラさんの家には一瞬で行けるが、元に場所には戻れない一方通行の魔道具だった。ガルシティを出るのに一方通行ではどうしようもないと、壊れてしまった前の魔道具をさらに改良した会心作だそうだ。一応SOS機能も前回に引き続きついている。
「うわ、とんでもないもんを作ったな。お師匠様がいる場所に飛ぶだけならそんなにだが現在地を記憶させて戻ってこれるなんて、どうやってこのサイズの魔道具に収めたんだ?これが市場に出りゃ人生20回分遊んで暮らせそうだな」
わが師匠ながら呆れる、というロアンさんの言葉に僕らは二人して笑った。
「じゃ、俺からも選別をやらないとな」
ロアンさんは自分の付けていた指輪の一つを外すと僕に差し出した。
「こいつも魔道具だ。魔力切れを起こさない程度にちょっとづつ魔力を蓄える魔石でな。好きな時に引き出せる」
「え、いいんですか!」
「あぁ、俺にはもう必要ない。少年が持っていてくれ」
ロアンさんはにっといつものように笑うと、僕の背中をポンと叩いた。
「ま、がんばれよ!少年ならどこに行ったって上手くやれる。お師匠様のとこへ戻るときにはここにも寄ってけよな!」
ただしお忍びだけどな、という言葉に僕らはまた笑いあった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「シエラ、準備はいいかい?」
「はい、いつでも大丈夫です!」
翌朝、まだ日空が明るくなり始めたころ。涼しげな風が木々を揺らす中僕らはカエラさんの家の扉を開け外に出る。
「ユウ君・・・こうして見送るのは二回目だね」
「えぇ、そうですね。ははっ!カエラさんあの時と同じ顔をしてますよ」
からかうような僕のセリフに顔を赤くしてだって!というカエラさん。
「今度はシエラちゃんも行ってしまうじゃない。寂しさ2倍なの!」
「シエラもカエラ様と離れるのは寂しいです。本当にいろいろありがとうございました。どうかお元気で」
「ううん、こっちこそありがとう。シエラちゃんがいてくれた時間は本当に楽しかった…。シエラちゃんならユウ君を任せていけるわ。どうかよろしくね」
最初会ったときはバチバチだったくせに。今じゃ別れの際に二人とも泣きそうじゃないか。
「体に気を付けてね。いつでも戻ってきてね。何かあったらすぐに言うのよ」
カエラさんはぎゅっとシエラを抱きしめる。
「・・・はい、ありがとうございます、カエラ様・・・」
こうしてみるとまるでシエラが娘のようだ。
「ユウ君も、いろんなことがあると思うけど、頑張って」
今度は僕のことをキュッと抱きしめる。
「大好きよ、私の大事な弟」
「僕も大好きですよ、お姉ちゃん」
僕の言葉についに堪えられなくなったのか。顔は見えないけれど、僕の肩にカエラさんの暖かい涙が落ちるのを感じる。
「もう、ずるいなぁユウ君。このタイミングで言わなくてもいいじゃない」
より強く、より愛を込めて、互いを抱きしめる。
大切な人たち、大切な場所に別れを告げ、僕らは新しい世界へ一歩踏み出した。
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