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第83話:怒れる森の魔女

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「そんな・・・シエラちゃん?」




呆然と立ち尽くすカエラに、キーラは剣を構え斬りかかる!





「よそ見なんて余裕だな!」





ブンッ!




振り下ろした剣は空を斬る。そこにはもう誰もいなかった。





「あぁ、シエラちゃん!ひどい火傷!」





「!?」




キーラの背後、先ほどいたシエラのすぐそばにカエラはしゃがみ込んでいた。








(魔女は今確かにここにいた・・・。一瞬であの距離を?瞬間移動の魔術か。空間を操る魔術を扱うなどかなり上級の魔女でないと無理なはずだが)




キーラは魔術という存在が嫌いだからこそ、その知識量は豊富だった。知識がなければ魔術に対抗できないからだ。キーラが思考を巡らせている隙にカエラはシエラを安全な所へ移動させる。






「ごめんねシエラちゃん、痛いよね。もうちょっと我慢していて、あの女を始末したらすぐ回復薬を調合してあげるから…」






(私が家を空けていたせいでシエラちゃんが…。他にも何人か伸びていたし、たぶん私を襲いに来た魔女狩り派の人たちと戦ってくれたのね)






「なんてひどい…。こんなに純粋で可愛らしい罪のない子にどうしてここまでできるのかしら」






カエラはシエラを家の中へ運び込むと、ふつふつと湧き上がる憎悪に我を失わないよう堪えながら表へ出る。








「待っていたぞ、森の魔女。人の魂を喰らう悪しき魔術の化身、貴様の命を頂戴する」




キーラの言葉に怒りに拳を握りながらキッとキーラを睨みつけるカエラ。




ですって?関係ないシエラちゃんをあんなひどい目に合わせて、あなたの口からよく悪しきなんてセリフが吐けるものね。その傲慢さ、魔女よりよっぽど醜いわ」







「ちょっと待て、二つ訂正させてもらおう。まず、シエラが魔女と一緒にいる時点で無関係ではない。加えてあいつは魔女をかばって我らと敵対したんだからな。それともう一つ、あのケガはシエラが意図して自爆したのが原因で私のせいでは・・・」






「黙 り な さ い」





ゾゾゾゾゾゾッッッ!!!!





キーラは全身に鳥肌が立つのを感じる。久しく感じていなかった恐怖、畏怖、底なしの圧力を全身に受け、騎士の直感が脳内でけたたましく警鐘を鳴らしている!!!





「その下品な口で戯言を垂れ流すのはやめなさい。そんな言葉を聞きたいんじゃないのよ。貴方がここに来たせいでシエラちゃんは戦った、貴方のせいでケガを負った。それがすべてよ。人を、命を無作為に奪わないことを誓って久しいけれど、これほどの殺意を覚えたのは長い私の人生の中で初めてのことよ」





ドッ ドッ ドッ ドッ



向けられた鋭利な殺意にキーラの全身の血が目まぐるしく循環する。額に流れる冷や汗が頬を伝った。





(これが魔女っ!魔術の化身、人間が到達できない領域に立つ一族の本気というわけか!)









「安心しなさい、殺しはしないわ。でも死にたくなるほど後悔させてあげるから」

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