73 / 153
第71話:姉弟の契約
しおりを挟む
「カエラさん…」
扉の向こうに立つカエラさんは部屋に入ると、僕の座るベットのすぐ脇に腰掛ける。
「ごめんね、ちょっとだけお話ししたいことがあったのよ」
「お話、ですか」
「そう、お話よ。今日のお昼のこと」
(お昼、てことはシエラの試し打ちのことか)
「ユウくん、何か知ってるんでしょう?それとも何かしたのかな?」
悪戯に微笑むカエラさんの顔を見るに、あの大惨事に僕が一枚も二枚も噛んでいることはもう言い逃れできないみたいだ。
「あはは…ばれちゃいましたか」
「それはそうよ。前触れもなしに魔術の練習をさせて、しかも一日で使えるようになっちゃったのよ?しかもとんでもない威力、この世界の人じゃないユウくんが何かしたって思うのが当然よ」
隠していたってしょうがない。僕は正直に全て話した。僕との契約とその恩恵、シエラ本人が知らない間にとんでもなく強くなっていることを話した。
「なるほど、契約かぁ」
すでに僕が異世界転生者であり、特殊スキルでチートと呼べるほど簡単にレベルが上がることを知っているカエラさんはすんなりと僕の言うことを信じてくれた。
「それで本人も知らないうちにあれだけ強力な魔術が使えたのね~。ユウくんの鑑定眼だとシエラちゃんがすぐ覚えられる魔術がわかるのよね?」
「はい。回復とバフ系の魔術がそこそこ、後は炎と風の魔術がいくつかありました。後で書き記しておきますね」
「ばふけい?私の知らない魔術ね」
「あー、ごめんなさい。強化・補助と言ったほうがよかったですね」
(流石にバフって言葉は浸透してないよな、ゲーム用語だし)
「ねぇ、その契約というのは私もできるのかしら?」
「へ?」
唐突な提案に驚く僕の顔をカエラさんは真剣な表情でまっすぐ見つめている。
「できる…と思います。ただ条件みたいなのがあるみたいですが」
条件?と首を傾げるカエラさんに僕は説明する。
「シエラは心身を捧げ従事する、僕は主としての責任を果たすという『主従』の関係をもって契約としているんです。なので僕とカエラさんの間にも何か条件が必要なはずです」
「条件、ねぇ」
正直なところこの『契約』というシステムについては説明がないから、本当に条件さえあれば可能なのかはちょっとわからないけど。
少し悩んでいたカエラさんだったが、数分もしないうちにパッと閃いたように顔を明るくする。
「そうだ!ユウくんにほんとの弟になって貰えばいいのよ!姉弟の関係というのはどうかしら」
「義兄弟の契り的なものでしょうか。なるほど、それなら…っ!?」
僕の言葉は出現したウィンドウにさえぎられる。
ーーーーーーーーーーーーーー
《契約》
カエラ・セラフィナイトがあなたに対し契約を求めています。
条件:カエラ・セラフィナイトは家族としてあなたを支え、裏切り・敵対といった行為のすべてを禁ずる。
要求:家族としてカエラ・セラフィナイトを支え、裏切り・敵対といった行為のすべてを禁ずる。
上記要件に合意し、カエラ・セラフィナイトと契約しますか?
はい(YES) いいえ(NO)
※契約関係にある相手には恩恵が与えられます。
ーーーーーーーーーーーーーー
「あ、でた!カエラさん、どうやらできそうですよ。義理ですが家族という関係を結ぶことで裏切りや敵対行為の一切をしないという契約になるみたいです」
「やった!あとは・・・ユウ君が嫌じゃなかったら、契約してほしい、かな」
何をいまさら。急にしおらしくなるカエラさんに後押しされ、迷わずYESを押す。
「僕は初めからずっとカエラさんのことをお姉さんと思っていましたよ。こんなのは契約じゃなくて事実確認ですって!」
「ゆ、ユウ君・・・っ!あぁ、なんて可愛くてできた弟なんでしょう!」
ぎゅぅうぅぅっと力いっぱい抱きしめられた!豊満な胸で顔面が覆いつくされて息ができない!!
カエラさんの背中をぱすぱすと叩いてギブアップの意思を伝えると、カエラさんはあらやだ、と一言言ってぱっとはなれた。
「あ、もうこんなに遅い時間ね。ごめんねゆう君、寝るのを邪魔しちゃって」
カエラさんは手をフリフリして部屋を出ようとする。
「あれ、てっきりこのまま一緒に寝ようって言いだすのかと思ってましたよ」
「だめよ、それじゃシエラちゃんに悪いじゃない。抜け駆けはよくないわ。それに私シエラちゃんのこと結構好きなの!」
おやすみなさい、といって部屋を後にするカエラさん。しかしそこでまだウィンドウが出っぱなしであることに気づく。
「あ、いっけない」
契約による恩恵が何か話すのを、完全に忘れていた。
扉の向こうに立つカエラさんは部屋に入ると、僕の座るベットのすぐ脇に腰掛ける。
「ごめんね、ちょっとだけお話ししたいことがあったのよ」
「お話、ですか」
「そう、お話よ。今日のお昼のこと」
(お昼、てことはシエラの試し打ちのことか)
「ユウくん、何か知ってるんでしょう?それとも何かしたのかな?」
悪戯に微笑むカエラさんの顔を見るに、あの大惨事に僕が一枚も二枚も噛んでいることはもう言い逃れできないみたいだ。
「あはは…ばれちゃいましたか」
「それはそうよ。前触れもなしに魔術の練習をさせて、しかも一日で使えるようになっちゃったのよ?しかもとんでもない威力、この世界の人じゃないユウくんが何かしたって思うのが当然よ」
隠していたってしょうがない。僕は正直に全て話した。僕との契約とその恩恵、シエラ本人が知らない間にとんでもなく強くなっていることを話した。
「なるほど、契約かぁ」
すでに僕が異世界転生者であり、特殊スキルでチートと呼べるほど簡単にレベルが上がることを知っているカエラさんはすんなりと僕の言うことを信じてくれた。
「それで本人も知らないうちにあれだけ強力な魔術が使えたのね~。ユウくんの鑑定眼だとシエラちゃんがすぐ覚えられる魔術がわかるのよね?」
「はい。回復とバフ系の魔術がそこそこ、後は炎と風の魔術がいくつかありました。後で書き記しておきますね」
「ばふけい?私の知らない魔術ね」
「あー、ごめんなさい。強化・補助と言ったほうがよかったですね」
(流石にバフって言葉は浸透してないよな、ゲーム用語だし)
「ねぇ、その契約というのは私もできるのかしら?」
「へ?」
唐突な提案に驚く僕の顔をカエラさんは真剣な表情でまっすぐ見つめている。
「できる…と思います。ただ条件みたいなのがあるみたいですが」
条件?と首を傾げるカエラさんに僕は説明する。
「シエラは心身を捧げ従事する、僕は主としての責任を果たすという『主従』の関係をもって契約としているんです。なので僕とカエラさんの間にも何か条件が必要なはずです」
「条件、ねぇ」
正直なところこの『契約』というシステムについては説明がないから、本当に条件さえあれば可能なのかはちょっとわからないけど。
少し悩んでいたカエラさんだったが、数分もしないうちにパッと閃いたように顔を明るくする。
「そうだ!ユウくんにほんとの弟になって貰えばいいのよ!姉弟の関係というのはどうかしら」
「義兄弟の契り的なものでしょうか。なるほど、それなら…っ!?」
僕の言葉は出現したウィンドウにさえぎられる。
ーーーーーーーーーーーーーー
《契約》
カエラ・セラフィナイトがあなたに対し契約を求めています。
条件:カエラ・セラフィナイトは家族としてあなたを支え、裏切り・敵対といった行為のすべてを禁ずる。
要求:家族としてカエラ・セラフィナイトを支え、裏切り・敵対といった行為のすべてを禁ずる。
上記要件に合意し、カエラ・セラフィナイトと契約しますか?
はい(YES) いいえ(NO)
※契約関係にある相手には恩恵が与えられます。
ーーーーーーーーーーーーーー
「あ、でた!カエラさん、どうやらできそうですよ。義理ですが家族という関係を結ぶことで裏切りや敵対行為の一切をしないという契約になるみたいです」
「やった!あとは・・・ユウ君が嫌じゃなかったら、契約してほしい、かな」
何をいまさら。急にしおらしくなるカエラさんに後押しされ、迷わずYESを押す。
「僕は初めからずっとカエラさんのことをお姉さんと思っていましたよ。こんなのは契約じゃなくて事実確認ですって!」
「ゆ、ユウ君・・・っ!あぁ、なんて可愛くてできた弟なんでしょう!」
ぎゅぅうぅぅっと力いっぱい抱きしめられた!豊満な胸で顔面が覆いつくされて息ができない!!
カエラさんの背中をぱすぱすと叩いてギブアップの意思を伝えると、カエラさんはあらやだ、と一言言ってぱっとはなれた。
「あ、もうこんなに遅い時間ね。ごめんねゆう君、寝るのを邪魔しちゃって」
カエラさんは手をフリフリして部屋を出ようとする。
「あれ、てっきりこのまま一緒に寝ようって言いだすのかと思ってましたよ」
「だめよ、それじゃシエラちゃんに悪いじゃない。抜け駆けはよくないわ。それに私シエラちゃんのこと結構好きなの!」
おやすみなさい、といって部屋を後にするカエラさん。しかしそこでまだウィンドウが出っぱなしであることに気づく。
「あ、いっけない」
契約による恩恵が何か話すのを、完全に忘れていた。
0
お気に入りに追加
1,943
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる