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第53話:久しぶりに森を訪ねて
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『冒険者試験のさなか、封印から解き放たれた奇石の魔女・ブラックオニキスが襲撃』
ここのところギルドはその話題で持ちきりだ。口を開けば魔女、魔女、魔女。魔女は滅ぼすべきだ、だの戦争はさけるべき、だの。これだけ大きなギルドになるということやることもさまざまだ。それがまた混乱・不安・苛立ちをつのらせ、ギルド内の空気はいいといえるものではなかった。
そして同じようにもうひとつ、ギルド内で話題になっていることがある。当然あの人の耳にもそれが飛び込んできた。
「なぁ、聞いたか?何でも志願者の中に魔女と対等に渡り合ったってやつがいるんだろ?」
「あぁ。まだ少年らしいな。しかもとってもかわいい獣人のメイドを連れているらしいぞ!」
「なんだよ!ったく神様ってのは不平等だよな・・・」
「・・・邪魔だ、そこをどけ」
「げ、キーラ・・・」
いやでも耳に入るうわさの発生源を蹴散らしてキーラはギルド内を闊歩する。
(獣人のメイド、少年の志願者。あいつだ。あの時私に突っかかってきたあいつ!あれが魔女と対等にわたりあっただと!そんなふざけた話があるか!)
がんっ!とギルドの柱をいらいらに任せて殴りつけるキーラ。
(ひ弱なあいつにそんなことできるわけがない。きっと何か裏がある、私がその化けの皮をはがしてやるよ!)
「ふぇっくしゅ!」
ずびっと鼻をすする。丸裸で森の中でいたことで風邪でも引いただろうか。
魔女襲撃事件から数日。僕はいまだ冒険者になれないでいた。
別に合格してなかったわけじゃない。ギルドがとてもあわただしいって言うのと、体を休めて万全な状態になってから正式に登録と説明を執り行おうというガステルさんの厚意あってのことだ。
もっとも、目立った外傷はなく強いて言えば打ち付けた頭のこぶくらいなのだが、僕がオニキスの魔女と戦闘したというロアンさんの誇張表現のせいでかなり心配されたというのが大きいだろう。
そういうわけでしばらく時間ができた僕は、今のうちにやるべきことをするつもりだ。
「シエラ、僕は出かけてくるから留守番をお願いするね」
「はい、わかりました。すぐに準備しますから少々お待ちください」
・・・・あれ?
「準備って、留守番の準備?」
「あはは、やだなぁご主人様。私も行きます」
「・・・・大丈夫だよ、個人的な用事だし・・・シエラはお留守番・・」
「怪しいですねご主人様。もしや女性に会いに行くのではありませんか?」
う、するどい。
「・・・・・・・・・・・・しかたない。じゃあ一緒に行こうか」
だいぶ迷ったけどこうなったシエラはどうにもできない。本当は襲撃事件のほとぼりが冷めてからがよかったんだけど。
シエラの準備を待ってから、僕はカエラさんにもらった魔道具を取り出した。
「ご主人さま?なんですかそれは」
「まぁみてなって」
〔ポイントマーカー〕
行き先:森の魔女の家
魔道具を使用しますか?
たぶん僕に触れていれば一緒に飛べるだろう。僕はシエラの手をつなぐと「はい」を選択する。
足元に突如現れた魔法陣から光があふれ視界が真っ白になった!
「え、え!ご主人様!?これはいったい・・・」
次第に光が落ち着くと、あたりはすでに森の中。僕がよく知る見知った風景が広がっていた。
ここのところギルドはその話題で持ちきりだ。口を開けば魔女、魔女、魔女。魔女は滅ぼすべきだ、だの戦争はさけるべき、だの。これだけ大きなギルドになるということやることもさまざまだ。それがまた混乱・不安・苛立ちをつのらせ、ギルド内の空気はいいといえるものではなかった。
そして同じようにもうひとつ、ギルド内で話題になっていることがある。当然あの人の耳にもそれが飛び込んできた。
「なぁ、聞いたか?何でも志願者の中に魔女と対等に渡り合ったってやつがいるんだろ?」
「あぁ。まだ少年らしいな。しかもとってもかわいい獣人のメイドを連れているらしいぞ!」
「なんだよ!ったく神様ってのは不平等だよな・・・」
「・・・邪魔だ、そこをどけ」
「げ、キーラ・・・」
いやでも耳に入るうわさの発生源を蹴散らしてキーラはギルド内を闊歩する。
(獣人のメイド、少年の志願者。あいつだ。あの時私に突っかかってきたあいつ!あれが魔女と対等にわたりあっただと!そんなふざけた話があるか!)
がんっ!とギルドの柱をいらいらに任せて殴りつけるキーラ。
(ひ弱なあいつにそんなことできるわけがない。きっと何か裏がある、私がその化けの皮をはがしてやるよ!)
「ふぇっくしゅ!」
ずびっと鼻をすする。丸裸で森の中でいたことで風邪でも引いただろうか。
魔女襲撃事件から数日。僕はいまだ冒険者になれないでいた。
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もっとも、目立った外傷はなく強いて言えば打ち付けた頭のこぶくらいなのだが、僕がオニキスの魔女と戦闘したというロアンさんの誇張表現のせいでかなり心配されたというのが大きいだろう。
そういうわけでしばらく時間ができた僕は、今のうちにやるべきことをするつもりだ。
「シエラ、僕は出かけてくるから留守番をお願いするね」
「はい、わかりました。すぐに準備しますから少々お待ちください」
・・・・あれ?
「準備って、留守番の準備?」
「あはは、やだなぁご主人様。私も行きます」
「・・・・大丈夫だよ、個人的な用事だし・・・シエラはお留守番・・」
「怪しいですねご主人様。もしや女性に会いに行くのではありませんか?」
う、するどい。
「・・・・・・・・・・・・しかたない。じゃあ一緒に行こうか」
だいぶ迷ったけどこうなったシエラはどうにもできない。本当は襲撃事件のほとぼりが冷めてからがよかったんだけど。
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たぶん僕に触れていれば一緒に飛べるだろう。僕はシエラの手をつなぐと「はい」を選択する。
足元に突如現れた魔法陣から光があふれ視界が真っ白になった!
「え、え!ご主人様!?これはいったい・・・」
次第に光が落ち着くと、あたりはすでに森の中。僕がよく知る見知った風景が広がっていた。
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