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第29話:何も起きないはずはなく
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「次の方どうぞ~」
(な・・・長かった・・・)
受付の女性に呼ばれて僕は前へと進む。まさかこんなに待つことになるとは思いもよらなかった。1時間以上たっていたのではないだろうか。
「冒険者登録をご希望ですね?こちらの用紙にお名前をお書きください」
「あ、はい。…名前だけでいいんですね」
「えぇ、ここで受け付けているのは登録試験のエントリーですので、本登録の際にはほかに書き込んでもらう用紙があります」
(なるほど、試験があるのか。まいったな、攻撃手段が乏しい僕は大丈夫なのか)
だがここまで並んでおいて引き下がるわけにもいかない。僕はエントリー用紙の欄に名前を書く。
「では、ご説明させていただきますね」
受付の女性は営業スマイルを崩さないまま、いくつかの用紙を僕の前に出して説明をはじめた。
「こちらの用紙に詳細は記載されておりますが、指定の日時にて登録試験を1日かけて行います。試験は一次、二次、三次とあり、どのような理由であっても自己都合による再試験は執り行いません。体調管理など怠らぬようお気をつけください」
説明を聞きながら僕は用紙に目を通していく。
「試験内容の詳細は当日まで伏せられますのでご承知ください。合格発表は三次試験の終了時にて行われます。合格することができたら晴れてその日から冒険者としてギルドに登録されます」
「冒険者になった際の注意事項やそのほか説明については・・・」
受付嬢の話の最中、突然僕の第六感が何かを察知する!本能のまま避けようとしたが、さすがに視界外からの不意打ちにはうまく対応できず、服をむんずとつかまれ後方へ放り投げられた!
(な、何だ!何が起きた!?)
訳もわからないままとにかくバランスを建て直しスタっと着地する。
さっきまで僕がいた場所には、僕の服をつかんで投げ飛ばしたであろう人物が立っていた。
あちこちに傷のある鎧を身にまとった、少し赤みがかった長い髪の女性だ。おそらくこれが冒険者なのだろう。依頼書を片手に、もう片方には戦利品を携え何食わぬ顔で受付嬢に問いかける。
「おい、依頼を達成してきたぞ。報酬を貰おうか」
「キーラさん!いつも言ってるでしょう、冒険者の依頼達成報告は窓口を変えたんです!」
僕を投げ飛ばした相手はキーラという名前らしい。キーラは怒る受付嬢に対しフンと鼻を鳴らした。
「何でこんな有象無象の都合でそんなことをしなきゃならないんだ。下らない憧れなんぞで冒険者になれるんだったらみんななっている」
(何だこの人、この態度…!)
人のことを投げ飛ばしておいてまるでいないかのように扱われていることにだんだん腹が立ってきた。僕はキーラの肩をつかむとぐいっと引き寄せる。
「ちょっと、どいてくれますか?僕が話をしていたんです」
(な・・・長かった・・・)
受付の女性に呼ばれて僕は前へと進む。まさかこんなに待つことになるとは思いもよらなかった。1時間以上たっていたのではないだろうか。
「冒険者登録をご希望ですね?こちらの用紙にお名前をお書きください」
「あ、はい。…名前だけでいいんですね」
「えぇ、ここで受け付けているのは登録試験のエントリーですので、本登録の際にはほかに書き込んでもらう用紙があります」
(なるほど、試験があるのか。まいったな、攻撃手段が乏しい僕は大丈夫なのか)
だがここまで並んでおいて引き下がるわけにもいかない。僕はエントリー用紙の欄に名前を書く。
「では、ご説明させていただきますね」
受付の女性は営業スマイルを崩さないまま、いくつかの用紙を僕の前に出して説明をはじめた。
「こちらの用紙に詳細は記載されておりますが、指定の日時にて登録試験を1日かけて行います。試験は一次、二次、三次とあり、どのような理由であっても自己都合による再試験は執り行いません。体調管理など怠らぬようお気をつけください」
説明を聞きながら僕は用紙に目を通していく。
「試験内容の詳細は当日まで伏せられますのでご承知ください。合格発表は三次試験の終了時にて行われます。合格することができたら晴れてその日から冒険者としてギルドに登録されます」
「冒険者になった際の注意事項やそのほか説明については・・・」
受付嬢の話の最中、突然僕の第六感が何かを察知する!本能のまま避けようとしたが、さすがに視界外からの不意打ちにはうまく対応できず、服をむんずとつかまれ後方へ放り投げられた!
(な、何だ!何が起きた!?)
訳もわからないままとにかくバランスを建て直しスタっと着地する。
さっきまで僕がいた場所には、僕の服をつかんで投げ飛ばしたであろう人物が立っていた。
あちこちに傷のある鎧を身にまとった、少し赤みがかった長い髪の女性だ。おそらくこれが冒険者なのだろう。依頼書を片手に、もう片方には戦利品を携え何食わぬ顔で受付嬢に問いかける。
「おい、依頼を達成してきたぞ。報酬を貰おうか」
「キーラさん!いつも言ってるでしょう、冒険者の依頼達成報告は窓口を変えたんです!」
僕を投げ飛ばした相手はキーラという名前らしい。キーラは怒る受付嬢に対しフンと鼻を鳴らした。
「何でこんな有象無象の都合でそんなことをしなきゃならないんだ。下らない憧れなんぞで冒険者になれるんだったらみんななっている」
(何だこの人、この態度…!)
人のことを投げ飛ばしておいてまるでいないかのように扱われていることにだんだん腹が立ってきた。僕はキーラの肩をつかむとぐいっと引き寄せる。
「ちょっと、どいてくれますか?僕が話をしていたんです」
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