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ー第45話ー
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部屋の中を緊迫した空気が張り詰める。刃物を持った男とウララはにらみ合うようにして対峙していた。
「匿う、とはいったい何のことでしょうか」
「ふっ、とぼけないでもらうか。俺は確かにこの目で見たぜ、黒髪の三つ編み男、カイン・ソルロックがお宅に入っていくのをな。奴が追われている身であることを知って隠しているんだろうが、痛い目を見ないうちに引っ張り出しといたほうがいいぜ」
(!?そういうことか)
ウララは昨日のことを思い出す。信じられないことだが、カインは鍵師の能力でウララの家の扉を自分の家の扉に接続し移動することができる。この男が見たというのは、ウララの家の扉から自分の家へ移動するカインの姿だろう。
つまりウララにはカインをこの場に引っ張り出す術はない。
(まさか鍵師様が追われている身だったなんて、そんなこと一言も・・・っ!そうだ、彼が話をしようとしたのを私が突っぱねたんだ)
今更になって話を聞いておけばよかったと後悔するウララであったが、時すでに遅し。結局こうしてトラブルに見舞われてしまった。
「鍵師様のことは知っていますが、この家にはいません。なので私はあなたの役に立つようなことはできませんのでお引き取りを」
この状況においてもウララはいたって冷静だった。見るからに悪党な相手に対し正直に今の現状を伝えたのだが、向こうからしてみれば尚更かばっているようにしか聞こえなかったらしい。
「何寝ぼけたこと言ってんだ!俺ぁ確かにこの目で見た、あんたの家に奴が入っていくのをな!嘘は通じねぇぞ、これ以上奴をかばうってんなら仕方ねぇ」
そういうと男は、先ほどまで威嚇の目的でちらつかせていた刃物の切っ先をいよいよこちらに向け、手に持つ武器がお飾りなどではないことを主張する。
「あんた、やつの血縁者か?いや、恋人だろう。どれだけ奴を隠そうとしても無駄だ。あんたの悲鳴を聞きゃあ自分の方から出てくる」
「恋人?悪い冗談です。それに私がいくら悲鳴を上げたところで彼は出てきませんよ、この場にいないのですから。先ほどから私は本当のことしか言っていません。そもそも・・・」
ウララは数歩、男との距離を詰める。窓から差す陽の光が、ウララの姿を照らした。
「貴方が私に悲鳴をあげさせることができないと思いますが?」
陽の元に照らされたウララの姿を見た男は驚きに後ずさる。
「おまっ!?ま、魔物だと!?人語を理解する人型の魔物・・・」
男の動揺も無理はない。人語を理解し会話の成り立つ魔物は珍しく、その報告数は少ない。長い時を生きる古き竜たちや人に近い姿を持つヴァンパイア、ゴースト。
中には亜人種にあたる自然と魔術に愛された種族、エルフなどもいる。
これらに共通していえることは、どの種族も非常に強力な力を持っているということだ。普通であればそんな相手と対峙するなど自殺行為にも等しい事。ウララも最初は男がそれを知ってうろたえているのだと思ったのだが
「いいじゃねぇか、お前みたいなのは需要がある。物好きな変態どもに高く売れるぜぇ!!」
「・・・・・はぁ」
うろたえるどころか金の話をしだした男に対し、ウララは深くため息をついた。
「こういうのは逞しいとはいいませんね。底なしの愚か者です」
「匿う、とはいったい何のことでしょうか」
「ふっ、とぼけないでもらうか。俺は確かにこの目で見たぜ、黒髪の三つ編み男、カイン・ソルロックがお宅に入っていくのをな。奴が追われている身であることを知って隠しているんだろうが、痛い目を見ないうちに引っ張り出しといたほうがいいぜ」
(!?そういうことか)
ウララは昨日のことを思い出す。信じられないことだが、カインは鍵師の能力でウララの家の扉を自分の家の扉に接続し移動することができる。この男が見たというのは、ウララの家の扉から自分の家へ移動するカインの姿だろう。
つまりウララにはカインをこの場に引っ張り出す術はない。
(まさか鍵師様が追われている身だったなんて、そんなこと一言も・・・っ!そうだ、彼が話をしようとしたのを私が突っぱねたんだ)
今更になって話を聞いておけばよかったと後悔するウララであったが、時すでに遅し。結局こうしてトラブルに見舞われてしまった。
「鍵師様のことは知っていますが、この家にはいません。なので私はあなたの役に立つようなことはできませんのでお引き取りを」
この状況においてもウララはいたって冷静だった。見るからに悪党な相手に対し正直に今の現状を伝えたのだが、向こうからしてみれば尚更かばっているようにしか聞こえなかったらしい。
「何寝ぼけたこと言ってんだ!俺ぁ確かにこの目で見た、あんたの家に奴が入っていくのをな!嘘は通じねぇぞ、これ以上奴をかばうってんなら仕方ねぇ」
そういうと男は、先ほどまで威嚇の目的でちらつかせていた刃物の切っ先をいよいよこちらに向け、手に持つ武器がお飾りなどではないことを主張する。
「あんた、やつの血縁者か?いや、恋人だろう。どれだけ奴を隠そうとしても無駄だ。あんたの悲鳴を聞きゃあ自分の方から出てくる」
「恋人?悪い冗談です。それに私がいくら悲鳴を上げたところで彼は出てきませんよ、この場にいないのですから。先ほどから私は本当のことしか言っていません。そもそも・・・」
ウララは数歩、男との距離を詰める。窓から差す陽の光が、ウララの姿を照らした。
「貴方が私に悲鳴をあげさせることができないと思いますが?」
陽の元に照らされたウララの姿を見た男は驚きに後ずさる。
「おまっ!?ま、魔物だと!?人語を理解する人型の魔物・・・」
男の動揺も無理はない。人語を理解し会話の成り立つ魔物は珍しく、その報告数は少ない。長い時を生きる古き竜たちや人に近い姿を持つヴァンパイア、ゴースト。
中には亜人種にあたる自然と魔術に愛された種族、エルフなどもいる。
これらに共通していえることは、どの種族も非常に強力な力を持っているということだ。普通であればそんな相手と対峙するなど自殺行為にも等しい事。ウララも最初は男がそれを知ってうろたえているのだと思ったのだが
「いいじゃねぇか、お前みたいなのは需要がある。物好きな変態どもに高く売れるぜぇ!!」
「・・・・・はぁ」
うろたえるどころか金の話をしだした男に対し、ウララは深くため息をついた。
「こういうのは逞しいとはいいませんね。底なしの愚か者です」
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